「Formula」とは“挑戦の結晶” 新人歌い手グループ「SODA KIT」、1stミニALで追求した歌とは(1/2 ページ)
「SODA KITは物語を重視している」
Yupsilonさん、Rasetsuさん、Figaroさん、Mugeiさんの男女4人からなる、VTuberで歌い手グループの「SODA KIT」。2022年10月に「顔を隠し正体不明」のまま、“60日後に始動する歌い手グループ”として登場し、“歌ってみた”を矢継ぎ早に発表したところ、その確かな歌唱力と歌声の個性がすぐさま注目を浴びることになります。
たちまちのうちに60日が過ぎ、2022年12月に正式始動しても勢いは止まらず、2023年1月にはメジャーデビューが決定。2月に「DRAMA」、続く3月には「コンテンダー」といったオリジナル曲をリリースし、わずか半年ほどでYouTubeチャンネル登録者数4万人超、総再生数が370万回超を記録(2023年5月時点)するに至りました。
すでにアーティスト集団として大きな存在感を発揮しているにもかかわらず、どこかミステリアスな雰囲気も残しているSODA KIT。1stミニアルバム「Formula」を5月24日にリリースした4人が、どのような姿勢で歌や音楽に臨んでいるか直撃しました。
始動半年のSODA KITが大事にしていること
―― SODA KITの配信がいつも面白くて、中学や高校の部活みたいだなと感じているのですが(笑)。
SODA KIT (笑)。
―― そんなSODA KITが結成されたいきさつについてまずうかがえますか? グループの公式TikTokを見た限りでは、ユプシロンさんが最初に声かけしたそうですね。
Yupsilon 僕個人では、歌い手、VSinger、ボカロPと活動していて、「やっていないのってあと何だろう?」って考えたときにグループ活動だけなかったんです。
メンバーが集まったらやろう、集まらなかったらやらないでおこうみたいな感じで声をかけたら思い描いていたメンバーが集まったので、じゃあちゃんとやりたいなと思って始めたのがSODA KITになります。
―― TikTokではらせつさんやフィガロさんに声をかけてすぐ快諾された一方、ムゲイさんだけ断られたとありました。
Yupsilon あのショート動画は、実はほとんど実話です。大まかにはホントあの通りになっていて。
Mugei 一度断ったのは本当かな。
―― ユプシロンさんは単独活動の方が好きという話を配信でも何度かされていただけに、声をかけてみようと思い切ったことに驚きました。らせつさんにはすぐ相談したんですか?
Yupsilon 活動1年目だったら多分やっていなかったと思います。1人でできることをある程度全部やった後、グループ活動を通じて何かまた新しい発見ができたり、自分の曲作りの幅も広がったりするかなと感じました。
同じぐらいの熱量で活動していたり、声がいいなと思ったりした人を誘いたかったので、らせつさんとフィーちゃんにはすぐ声をかけて。そしたら、2人とも「やるやる!」って言ってくれましたね。
あとは、らせつさんがリツイートしたムゲイくんの歌を聞いたら、「この声だ!」ってピンときて。最初に声かけたときは断られたんですが、らせつさんに「クループの構想やコンセプトをちゃんと話してみれば?」って言われたんです。アドバイス通りにした結果、「やる!」って。
―― ユプシロンさんからグループ結成の話を持ちかけられたとき、どう感じましたか?
Rasetsu まず第一に楽しそうだなと思いました。僕も活動2周年を迎えていたので、「新しいことをやりたいな」と感じていたんですよ。ずっとソロでやっていたユプくんがグループを組みたいっていうのが僕の中で新鮮で。
「面白そうなことを始めたいんだな」「これは絶対楽しいことが起きるな」って直感して、「いいよ」って答えましたね。
Figaro ユプちゃんとは元々、ワンマンライブで曲を書いてもらったり、ポップアップストアで一緒したりしててつながりがありました。
当初はこんな大規模な活動になるとは思っていなくて、ただただ同じ気持ちで活動してる人と一緒にグループを組めるというのが新鮮味があっていいなと。本当に即答レベルで「何でもできる!」「私でよければぜひ!」って返事しました。
―― 唯一、最初はお断りしたムゲイさんはどうだったのでしょうか?
Mugei 俺もVTuberを結構見る方だったんで、ユプシロンを一方的に知ってはいたんですけど、2人のようにやり取りしたことはなかったんです。
グループ結成を相談されるまでしゃべったことも、文字のやり取りをしたこともなかったし、人となりが分からない相手と一緒にグループを組むのもひっかかるものがあったのでそのときは断りました。
その後にあらためて、どんなグループを目指しているのか、なぜ俺を誘ったのかを話してもらって「ならやるか」と。だから第1印象は謎。「どうして突然俺に?」って思っていました。
Figaro 怪しんでいたよね(笑)。
―― (笑)。説明を受けてからはどんなイメージを抱きましたか?
Mugei ユプシロンに関しては、歌ってたり作曲していたり、1から何かを生み出すことが好きなんだろうな、という印象を以前から持っていました。
SODA KITのように、“60日後に始動するグループ”“VTuberかつ歌い手グループ”って打ち出し方、今までなかったわけじゃないですか。ゼロから何かを始めるのが好きなんだな、クリエイターなんだなって感じました。今までにないことをやろうとしてる人なんだなって。
―― SODA KITの4人として活動していく中で、大事にしている「決めごと」のようなものってありますか?
Yupsilon ……あるかなぁ?
Rasetsu 明確には言葉にしたことないよね。ただ、モチベーションの違いは、今後の活動でかなり響いてくるので、活動初期の段階でその話はしました。
同じモチベーションでやっていかないとグループ活動ってうまくいかないし、不和が絶対生まれると思うので。その辺は各々ちゃんと守っているというか、感じているところじゃないかと思います。
Yupsilon SODA KITの特徴というか大事にしていることとして、全てのクリエイティブをメンバー内でディレクションしていくというものがあって。イラストや動画、ミックスなど、グループの世界観を構築するところはメンバーが直接クリエイターさんとやり取りしています。レコーディングスタジオのエンジニアさんなんかも、どんな音で録音したいか、僕が直接やりとりさせてもらっています。
Mugei オリジナル曲の作詞作曲をメンバーがしている歌い手グループって珍しいんじゃないかな。
メンバー各人の「歌」について4人に聞いてみた
―― クリエイティブの部分に関しては、後ほど詳しく聞いていきたいと思います。メンバーそれぞれの歌についてどんなイメージを抱いているのか、1人ずつうかがってもいいですか?
Yupsilon どんな声が聞けるのか期待大ですね。
Mugei なかなかない機会だ。
―― グループ結成時に皆さんが行った配信で、軽く触れていたのが印象的だったんです。それでは、ユプシロンさんについてまずお願いします!
■Yupsilon
Rasetsu まずはハイトーンですね。でも、僕が最大の武器だなって思うのは、歌詞一つ一つへの感情の乗せ方が本当に上手いところ。
同じ歌を歌っているのに、やっぱり曲の表情が違うんですよ。それはユプくんの最大の売りだなって。SODA KITとしてもそうですけど、「ソロのユプシロン」としてもかなりカッコいいと思っています。それがみんなにウケるところなんじゃないかな。
Figaro 歌詞の効果もあると思うんですけど、ちょっとした不安定さというか、守ってあげたくなる庇護欲がかき立てられるような、感情が出る歌い方をしてて刺さります。
切なさがちゃんと出ているし、言葉として本当に突き刺さるメッセージ性のある歌い方がとってもいいなと。独特な世界観がある声も特徴かなって思っています。
Mugei 感情を乗せるのが得意ですよね。その中でも特に悲しみと怒りの表現がかなり得意なんだろうなって思っていて。
Yupsilon ははは(笑)。
Mugei そこにプラスして、ユプシロンはエッヂボイスを曲の入りでかなり使うんです。それがちゃんと耳に引っかかるようにしているので、耳ざわりがいいなっていうのと、高音域が自分好みなのかもしれないですけど、耳になんかビシッて刺さるところがあって。「ロウワー」(※1)など特にそうなんですけど、張るタイプの高音がめっちゃ力強さがあって好き。
※1 ロウワー……ボカロPのぬゆりが2021年に発表した、スマホゲーム「プロジェクトセカイカラフルステージ feat. 初音ミク」のユニット「25時、ナイトコードで。」への書き下ろし楽曲。
■Figaro
Yupsilon 声がめちゃくちゃ澄んでて綺麗で、一緒に歌ったときにいい意味で浮くんですよ。帯域が違うというか、他の人と絶対音が当たらなくて1人だけ透き通って聞こえるので、そこが魅力的だと思います。
Rasetsu 包み込むような印象がありますね。ユプくんが言っていた帯域が違うからなんでしょうね。声質が暖かくて、綺麗なんですけど、結構強めな声のムゲイくんはじめ誰と合わせてもきれいに合うんですよ。
楽曲の中でコーラスもいっぱいやってくれているんですけど、とにかく信頼感のある、でも何にでも変化できる声だなっていうイメージです。
Mugei フィガロは自分のプロフィールに「流水のように歌う」って載せているんですけど、本当によく表現できてるなと。一切よどみもノイズもないきれいな高音を出すんですよね。その一方で、SODA KITで「エゴロック」(※2)だったり「ロキ」(※3)だったり、あんまり自分では選ばないだろうなっていうタイプの曲を歌う場合でも、曲に合わせるようにしてちゃんと力強く歌ってみせる。
※2 エゴロック……ボカロPのすりぃが2021年に発表した楽曲。本人が歌唱したバージョンも存在する。
※3 ロキ……ボカロPのみきとPが2018年に発表した楽曲。2023年5月時点でのYouTube再生回数が6970万回を超えている他、まふまふ、そらる、灯油、莉犬、月ノ美兎ら数多くの歌い手やVTuberによる“歌ってみた”が登場するなどアンセムとなっている。
流水のように歌う面と、どんな曲でもちゃんとその雰囲気に寄せて歌う面を持ち合わせているところ、自分の持ち味生かしてるなって感じでめっちゃ良いです。
■Rasetsu
Yupsilon 音域のレンジがめちゃくちゃ広い。下はすごく低いところも出るし、上は女性域ぐらい高いところも出るので、曲を歌ってもらいやすいっていうか、「上で歌う? 下で歌う?」みたいな会話ができるんですよね。
あと、感情の込め方も上手いイメージがあります。力強く歌うときだけでなく、優しく歌うときの声も本当にいいので、グループの活動一発目にYouTubeへ上げた「フォニイ」(※4)の頭はらせつさんに歌ってもらいました。
※4 フォニイ……みきまりあとのユニット「NOMELON NOLEMON」でも活躍するボカロPのツミキが2021年に発表した楽曲。2023年5月時点でのYouTube再生回数が4000万回を超えるヒットとなっている。
Figaro 大人の優しさもありつつ、セクシーな歌声がとてもいい。なんかちょっと言葉尻とか歌い方で遊んでみたりとか、ちょっと小技をきかせてグッとくる歌い方をしたりするのが上手だなと思っています。
Mugei 自分よりもきれいで高い声だなと。一方で、低い音になればなるほど自分にない深みと温かみのある声を出すんです。広がっている声だな、とてもいいなって。
■Mugei
Yupsilon グループに誘ったときも伝えたんですけど、「SODA KITの顔」になるような特徴的な声だということと、ガナリボイスがやっぱりカッコいい。曲のサビの頭とか、ムゲイくんにほぼ歌ってもらっています。
Figaro 「俺の歌聞いてくれ!」みたいな自信たっぷりな歌い方なんですけど。めちゃめちゃ自信があるようにみえてちゃんと歌い方を勉強している、歌を聞き込んで自分のものにしてるんだな、って感じるんですよ。
歌のどの箇所で迫力を出したら一番カッコよく伝わるかをちゃんと分かって歌ってるなっていうところがあって。「自分のカッコいい見え方が分かってるぜ!」といった部分が声としてかなり出ているなとみています。私は逆に全く特徴がない歌い方だと自分で思っているから、ムゲイくんのそういうところには結構憧れがありますね。
Rasetsu ムゲイくんは完全に飛び道具、必殺技のようなものだと思っていて。僕らチームの中で、リスナー全員に対してつかみとなる存在ですし、本当に歌の技術がすごい。
歌を習ったことがある人、やっている人だったら分かると思うんですけど、歌の節々にテクニックが入っているからとにかく映えて。ガナリの技術もそう簡単に手に入るものでも普通ないので、SODA KITに入ってくれたのは本当にデカいです。
曲のキメの部分でバチッとキメてくれるのは本当カッコいい。うちの最終兵器です! こんな話は普段しないんですけど。
Yupsilon (指でハートマークを作っているムゲイに向かって)ハートマークやってる人いるんですけど……(笑)。
Figaro 何やってるの、照れてるの?(笑)
―― (笑)。……皆さん、それぞれすてきな感想でした。
Mugei 初めて聞かれて初めて話しました。照れるな。
SODA KIT (笑)。
Mugei 3人とも自分の世界観をかなり強めに出してる歌い方な上、4人で歌ってもいいっていうね。
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