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ジャニーズ会見で記者が感じた“大きな課題” 広報がメディアを”たらいまわし”した過去…… ジュリー元社長「返事できなかったのは事実」(2/3 ページ)

会見は4時間12分におよびました。

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ジャニーズ会見で記者が感じた”大きな課題”

ジャニーズ事務所 故ジャニー喜多川氏の性加害問題 東山紀之 藤島ジュリー景子 (撮影:上代瑠偉)

 特別チームがジュリーさんの辞任を訴えたのは、「ジャニー氏の性加害の事実を巡る対応についての取締役としての任務の懈怠(けたい)があること」に加え、「ジャニーズ事務所におけるガバナンス不全の最大の原因の一つである同族経営の弊害も防止し得ること」も背景にありました。

 会見では、ジャニーズ事務所が抱えるいびつな「同族経営」の体質が随所に垣間見えました。例えば、ジュリーさんは「私が代表取締役社長になるまでは、2人が株主で2人が意思決定者で、私も含めて取締役は名ばかりで、きちんと機能しておりませんでした」と、2009年以前の状況について振り返っています。

 一方で、東山さんはジャニー氏およびメリーさんについて、「あの2人を本当に父のような、母のような思いで感じていた」と語っています。ジャニーズ事務所の最年長で「長男」とも言われる東山さんは、終始神妙な面持ちで声のトーンを抑えて話すのに対して、井ノ原さんは時折表情を緩めたり、記者から早く質問に答えるように怒号が上がると「じゃあ次は(質問に答えます)」と記者に歩み寄ったり、普段通りの親しみやすい印象を与えました。

 4時間超におよぶ会見を取材していくうちに筆者が強く感じたのは、ジャニーズ事務所のトップはかつては「父(ジャニー氏)」「母(メリーさん)」だったが、それが現在では「長女(ジュリーさん)」「長男(東山さん)」「次男(井ノ原さん)」に代替わりしたに過ぎないのではないか、ということです。

 ジャニー氏とメリーさんと血縁関係があるジュリーさんでは性加害問題への対応が不十分だったように、ジャニーズ事務所の「長男」と言われるばかりか、過去のハラスメント疑惑も報じられている東山さんでは、やはり「同族経営」を断ち切るような自浄作用は期待できないように見受けられます。

特別チームが総括する性加害問題の本質

ジャニーズ事務所 故ジャニー喜多川氏の性加害問題 東山紀之 藤島ジュリー景子 特別チームよる調査報告書(撮影:上代瑠偉)

 また、ジュリーさんが今後も取締役として残留し、100%保有する同社の株を手放さないことはもちろん、現在は性加害者のジャニー氏の名を冠した「ジャニーズ」という会社名を変更する見通しがないことや、事務所の解体を視野に入れていないことについては、あらためて問題点として言及しなければいけません。

 すでに性加害問題をめぐる不十分な対応は、ジャニーズ事務所の事業にも影響を及ぼしています。東京海上日動火災保険は同事務所との広告契約の解除を検討しており、日本航空(JAL)も同事務所の所属タレントの広告への起用を当面見送ると方針だ、と新聞各紙などが報じています。

 特別チームは調査報告書のなかで、再発防止策を見据えてジャニー氏による性加害問題について、以下のように総括しています(関連記事)。少し長くなりますが、極めて重要な指摘だと思われるため、該当箇所を引用して記事を締めくくります。

 「本件は、芸能事務所の経営トップでもある芸能プロデューサーが、その芸能事務所所属の中学生・高校生を中心とする未成年の同性のタレント候補(又はタレント)に対して1970年代前半から2010年代半ばまでの間の長期間にわたって性加害(強制わいせつ罪等に該当し得る犯罪行為)を繰り返し行い、その被害者数は多数に上るであろうという、極めて悪質な事件である。被害者が心身、とりわけ、精神的に受けたダメージは計り知れず、また、調査からは、被害を受けるも今日に至ってもなお羞恥心や傷つきから被害を申し出ることもない被害者の存在なども推察され、癒えることの無い甚大な精神的損害を生ぜしめた事案であるといえる。
 そのような深刻かつ重大な性加害が長期間にわたって可能であった背景として、まず、芸能プロデューサーたるジャニー氏がタレント候補の採用・デビュー等の生殺与奪の権を一手に握り、被害者たるタレント候補(いわゆるジャニーズJr.)に対して絶対的に強い立場にあり、ジャニーズJr.の少年側としては、このようなジャニー氏との一方的な強者・弱者の関係性のもと、ジャニー氏による性加害を拒んでしまっては、自身のプロデュースについて不利益・悪影響が及ぶ可能性があることから、それを避けるために性加害を受け入れざるを得ないという心理状態にあったことが挙げられる。
 本来であれば、そのようにして立場を逆手に取る芸能プロデューサーは、その地位を追われることになるはずである。
 しかしながら、ジャニー氏は、同族企業であるジャニーズ事務所の創業者かつ代表取締役社長というそれ自体強大な権力を有する地位にあった。そのため、ジャニーズ事務所の役職員の誰もが、ジャニー氏に対して意見を言うことができず、また、言おうともしなかったと考えられる。
 また、性加害(性被害)は、羞恥心などのため、被害者には、第三者にそれを打ち明けることを期待し難いものである。そのような性加害自体の性質に加え、本件は、同性による性加害であり、かつ、被害者が男児で、未成年であるとともに、上記の強者・弱者の関係にあったという特徴がある。したがって、被害者としては、その親を含め第三者に相談・告発することが心理的にも非常に困難であったと推察される。そのため、ジャニー氏による性加害が、その自宅や合宿所等という密室で行われていたことも相まって、黙殺されやすい状況にあった。
 このような状況から、ジャニー氏は、その絶対的な地位を安泰なものとしながら、ジャニーズJr.に対する性加害を長期間にわたって繰り返し行うことが可能であった。
 他方で、数々の暴露本においてジャニー氏の性加害が世に明かされるとともに、文藝春秋との訴訟では、裁判所によりジャニー氏の性加害の事実が認定されている。それにもかかわらず、ジャニーズ事務所は、組織として、この問題に対処することはせず、テレビ・新聞等の日本の主だったマスメディアが性加害の事実を報道せず、その批判にさらされないという状況の下、性加害の実態を徹底的に調査してジャニー氏を解職するなど再発防止を図ることや被害者を救済することを怠った。ジャニーズ事務所は、組織体として、ジャニー氏による性加害の事実を握り潰し、『なかったこと』にしたのである。
 そのようなジャニーズ事務所の怠慢と隠蔽体質が、ジャニー氏による性加害の継続と被害者の拡大に大きく寄与した。ジャニー氏による性加害のために肉体的・精神的苦痛を受けるとともに、アイドルへの道を閉ざされることになってしまった被害者の悲痛・苦悩は察するに余りある。日本有数の大手芸能事務所として数多くの人気アイドルタレントを輩出し、マスメディアを通じて大きな社会的影響力を有するジャニーズ事務所が性加害の事実に誠実に向き合わなかったことの責任は、極めて重大である。
 したがって、ジャニーズ事務所は、性加害の事実を正面から受け止め、その責任の重大さを痛感し、被害者に対して十分な救済を行うとともに、後述のジュリー氏の代表取締役社長からの辞任を含む解体的出直しを図らなければ、社会からの信頼を回復することは到底期待することができないことを覚悟しなければならない。とりわけ、ジャニー氏が死去していることから同様の事案は起こらないであろうとの安易な想定のもとで、形式的対処のみをもって、現在の厳しい状況をやり過ごし、会社としての再出発を図るような対応は企業の社会的責任としても到底許されるものではない
(特別チームの調査報告書より引用)
※一部改行および太字表記を加えたが、文章は全て原文ママである

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