「味わい」や「香り」などが重視されてきたイメージが強いコーヒー市場にあって、カフェインの含有量を打ち出したコーヒーが相次いで販売されています。各社の狙いはどこにあるのでしょうか。メーカーに取材しました。
若者中心にヒットした商品も
スーパーやコンビニ、自動販売機で売っているコーヒーとしては、サントリーの「ボス」やコカ・コーラの「ジョージア」、アサヒの「ワンダ」などのブランドが知られます。そうした有名ブランドから、「カフェイン」をコンセプトにした商品が今年、相次いで登場しました。
サントリー食品インターナショナルが4月に発売した缶コーヒー「ボス カフェイン」シリーズは、パッケージに「コーヒーでカフェイン200mg」と大きく記載された、カフェイン量の多さを打ち出した商品です。既存の缶コーヒーは40〜50代がメインユーザーだったものの、「ボス カフェイン」は今まで缶コーヒーをあまり飲んでいなかった20〜30代のユーザーの間で評判に。発売2カ月で販売本数2000万本を売り上げるヒットとなり、9月には新フレーバー「カフェモカ」も登場しています。
アサヒ飲料がAmazon.com限定で10月末に発売したペットボトルコーヒー「ワンダ SLOW TIME COFFEE」は、「微カフェイン」をコンセプトに、同社の主要製品比でカフェイン量を55%カットしているブラックコーヒー。「夕方にコーヒーが飲みたくても、日中に仕事のために飲んだコーヒーのカフェイン量が気になり、諦めざるを得ない」というユーザーの声をきっかけに、「自分のために楽しむようなコーヒーを作れないか」と、カフェイン量を減らしたコーヒーを販売したといいます。
「カフェイン量」を打ち出したコーヒーはコンビニでも。ローソンが11月から販売しているチルド飲料「カフェラテ カフェイン」「カフェラテ カフェインレス」は、それぞれカフェインの有無をコンセプトにしたカフェラテです。前者は同社のチルド飲料「Uchi Cafe カフェオレビター」(1本当たり)と比較してカフェイン量が1.1倍。後者はカフェインを90%以上除去したコーヒーを使用しています。
背景にある消費者意識の高まり
カフェイン量を打ち出したコーヒーの販売が相次ぐ背景にあるのは、消費者の「カフェイン」に対する関心の高まりです。
サントリー食品インターナショナルの広報担当者は「ボス カフェイン」シリーズの販売にあたって、「SNSでカフェインに関する投稿が2年前の1.2倍以上になっていた」ことが背景の1つにあったと説明。アサヒ飲料の広報担当者も「実際に体質などで制限のある方でなければ、細かい数字まで気にされない、という考えもありましたが、エナジードリンクの隆盛などを通して徐々にカフェイン含有量についての認識も高まっていると思っています」と、消費者意識の変化を実感しているといいます。
こうした中でメーカーが着目したのは、カフェインを目的にコーヒーを飲むという消費者の価値観でした。サントリー食品インターナショナルの担当者は「缶コーヒーをカフェイン飲料として捉え、今までの缶コーヒーにはない魅力づくりをすることで、市場の成長を追い風に、新しいマーケットで成長するチャンスがあると考えた」と、「ボス カフェイン」シリーズに込めた狙いを語ります。
意識的なカフェイン摂取に対する考え方が広がりを見せる一方で、「カフェインを取らない」という価値観も広がっています。ネスレの調査によると、家庭内でのカフェインレスコーヒー市場は 2012年から2022年にかけて約3倍に成長。今後も伸長が予想されているとしています。サントリーも「ボス」ブランドから濃縮タイプのコーヒー「割るだけボスカフェ 贅沢カフェインレス」を以前から販売するなど、カフェインレス市場も活発化しています。
ローソンの広報担当者は「気持ちのオン・オフの切り替えのために、コーヒーとカフェインレスコーヒーを飲み分けている方が増えている」とし、「カフェラテ カフェイン」を“オン”、「カフェラテ カフェインレス」を“オフ”に、ターゲットをそれぞれ位置付けたといいます。
そして、「ワンダ SLOW TIME COFFEE」を通じて、「微カフェイン」という概念を打ち出したアサヒ飲料の担当者は「(カフェイン量を)半分にすることで味わいの面でもカフェインレスコーヒーでは実現できない、適度な苦味やおいしさなどいう価値がうまれると考えました。間を狙うことで、お客様にとって新しい飲用シーンがご提供できるのではないかと考えています」と説明。「カフェイン特化」でも「カフェインレス」でもない、独自の立ち位置からの勝機をうかがっています。
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