森永乳業が、3月末をもってビン牛乳などのビン商品の販売を終了すると発表したニュースが反響を呼んでいます。この反響を受けて、生乳業界の今後の方針や現状について取材しました。
森永乳業はビン商品の終売について、「お客さまがビンを返却する手間や、時代とともに変化する市場環境、お客さまのニーズを考慮」したと説明。2021年には小岩井乳業がビン牛乳を終売しており、それに続く動きとなります。農林水産省「牛乳乳製品統計調査」2022年の調査では、ガラスビン入り(500ml未満)の牛乳生産量は4929kl、2012年の15424klと10年で約3分の1に減少しています。
牛乳の流通には大きく分けて紙パックとビン入りでの出荷があり、紙パックはスーパー、コンビニなどの量販店、ビン入りのものは学校給食や宅配で利用されています。宅配事業は減少傾向にありますが、ビン入りの商品はなくなってしまうのでしょうか? 大手各社や業界団体に聞いてみました。
雪印メグミルク
――現在の市場環境はどうですか?
雪印メグミルク 広報部 市場的には厳しい環境下にありながら、各社ともお客様の健康意識の高まりから機能性商品については拡大傾向にあると認識しております。
牛乳宅配事業につきましては全国の牛乳販売店様を通じて、多くのお客様との定期契約により無理なくつづけられる健康的なからだつくりを目指して、牛乳・乳製品をお届けさせていただいております。
「ビン商品」につきましては長年に渡りお客様に親しまれております。弊社は廃止の方針はございません。
また、ビン商品の更なる拡大を目指し、一部の温泉や温浴施設において瓶商品を模したラッピング自販機を展開し大変好評を得ております。
明治
――ビンでの販売の現状は?
明治 広報部 弊社は現在、宅配と自動販売機で販売しています。
また、牛乳宅配市場はやや減少傾向にありますが、新商品の投入などにより当社のシェアは拡大傾向にあります。
――ビン商品はなくなっていくのでしょうか?
明治 広報部 現時点ではビン商品の取り扱いを終える予定はございません。
日本乳業協会の見解
しかし、ほとんどの生乳業者が加盟する一般社団法人日本乳業協会によると、生乳の流通は中小の生産事業者が多く、ビンでの流通は業界でも課題となっているようです。
――ビン牛乳の歴史は深いのですか?
日本乳業協会 ビン牛乳の歴史は100年近くあります。リユースの観点からビンは非常に使い勝手のよいものです。歴史もあり、衛生管理が徹底されないといけない牛乳の提供材として、殺菌や洗浄の技術も確立されています。実際に、牛乳瓶の衛生管理が原因で食中毒が起こったことはありません。紙パックの衛生保持とは遜色ありません。
――では、なぜ廃止の動きがでてきたのでしょうか?
日本乳業協会 やはり、ひとつは流通の労力の問題が大きいと思います。ビンは確かにリユースの観点から非常に優れていますが、「重い」というのが難点です。この点を解消しようとビンメーカーと販売者が協力して軽量のビンの開発も行って参りましたが、積載効率の面から紙に移行しているのは確かです。
――もう今は少なくなりましたが、銭湯で風呂上がりに「グビッと一杯」という文化はなくなるのでしょうか?
日本乳業協会 大手のメーカーさんも当面、ビン製品の生産は継続する方針ですし、その情緒的な文化は残すことができると思います。乳製品は健康のためにも日常的に摂っていただきたいですからその文化は残したいですね。風呂上がりの牛乳って本当においしいですからね(笑)。
――今後考えられる問題は何でしょうか?
日本乳業協会 やはり、流通の問題とされているドライバーが不足する2024年問題を心配しています。ドライバー不足により労力のかかるビン製品が流通の面で敬遠されていくのが心配です。生産から消費、回収までエコなものがなくなっていかないか危惧しています。ビンを含め国内の牛乳の多くの流通は地域の中小の企業が担っています。どういった影響が出るのか注視しています。
あの、風呂上がりのビンの牛乳や甘いイチゴ牛乳、紙のフタを抜き「あーうまい!」という文化はいつまでも残っていってほしいものです。
※初掲載時に「日本生乳協会」としていましたが、正しくは「日本乳業協会」でした。お詫びして訂正いたします。
※3月11日追記:各社コメントに一部誤りがありました。お詫びして訂正いたします
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