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築50年超えの実家に愛犬と帰省中、能登半島地震が発生し…… 克明な恐怖の記憶とペット同伴被災の実態に「防災の意識が根本から変わりました」(1/3 ページ)

いつ来るか分からない“いつか”のために備えを。

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 2024年1月1日―――新しい年の始まりのその日、16時10分に石川県能登地方を震源地とするマグニチュード7.6の大地震が起こりました。その後も最大震度5弱以上の強い余震が続き、家屋の倒壊や土砂災害、火災、液状化現象なども各地で発生。停電や断水も相次ぎました。3月15日時点で死者数は241人、負傷者数は1299人にのぼり、避難所には9766人が身を寄せるなど、大きな被害となりました(参照:内閣府 防災情報のページ)。

 その中でも、ペットがいる家庭にとって被災後の問題は「ペットとともに避難すること」。石川県内ではペットと「同行避難」(ペットは避難所の外や玄関などで過ごす)できる避難所は全体の94%にのぼるものの、「同伴避難」(避難所でも同じ空間で過ごせること)ができる避難所はその中でも約3%。そのため車中避難や、安全とはいえない被害家屋で在宅避難している家庭が多くみられたそうです。しかし車中避難はエコノミークラス症候群など健康を害する恐れがあり、在宅避難では家屋の倒壊など2次被害の可能性も高く危険を伴うなど、ペット同伴可の避難所が少ないがゆえの問題点が浮き彫りになっています。

 2011年の東日本大震災のときには、震災前より地域防災計画に同行避難について記載し、ペット救済マニュアルの作成、餌やケージなど物資の備蓄を行っていたにもかかわらず、飼い主や市町村等の災害担当部署にペットとの避難が周知されておらず、多くの飼い主が家に置いたまま避難したため、たくさんの尊い動物の命が失われました。震災により死亡した犬の頭数については、青森県で少なくとも31頭、岩手県で602頭、福島県では約2500頭との報告があがっています(猫は犬のような登録制度がないため、いずれの自治体でも、震災以前の飼養状況や震災による被災状況が不明)。

 そのため環境省が2013年に「災害時におけるペットの救護対策ガイドライン」、2018年には「人とペットの災害対策ガイドライン」を制定、あらためてペットとの同行避難を推奨しました。

 しかし実際には避難所の受け入れなどの問題で、ただ同行すればよいというわけではないことが分かります。ペット専用の同伴避難所が石川県珠洲市に開設されたのも地震発生日から約2カ月後と時間がかかり、ペットのいる家庭の避難に関しては、いまだ大きな問題を抱えているといえるでしょう。

 そこでねとらぼ生物部では、ペットともに地震の被害にあった動画クリエイターの「jiji&toto」さんを取材。ペットを連れた状態での被災・避難について話を聞き、避難所や避難時の食事など、ペットとの被災の実態や、飼い主が今できること、知っておくべきことが分かりました。

jiji&toto

シュナウザーのジジとトト、娘との暮らしを各SNSに投稿
ねとらぼ生物部でも過去に動画を紹介

ジジ(2015年1月2日生まれ)9歳/♀
トト(2017年2月17日生まれ)7歳/♀

Instagram:(@jiji&toto)
X(Twitter):(@jijitoto_unit)

富山県氷見市の妻の実家で被災にあった一家

 シュナウザーの「ジジ」ちゃんと「トト」ちゃんと東京都で暮らす飼い主さん一家。妻の実家である富山県氷見市に帰省中に能登半島地震が発生し、被災しました。氷見市は震度5強の揺れを観測。2月5日の時点で家屋の被害は全壊・半壊・一部損壊を合わせて1380件に。1月中に全ての家屋の断水が解消、2月6日には全ての避難所が閉鎖されています。

 築50〜60年の実家での被災、当時の状況と避難の様子、自宅に戻るまでを取材しました。

私が連れてきたばかりに、もしこの子たちに何かあったら

―――能登半島地震の当日は元日でしたが、地震が起きるまではどのように過ごしていましたか

 石川県の金沢市にずっと通っているお寺があるので、ジジとトトには留守番をしてもらい、私たち家族と母と一緒にお参りにいきました(父は別行動で地震があるときまで金沢市に滞在していました)。車で1時間ほどの距離で、実家に戻ってきたのが夕方ごろ。(実家の)車から荷物を家に運び、疲れたね……と居間で一息つこうかな、というときに地震が起こりました。帰宅してわりとすぐでした。

―――大変大きな揺れだったと思うのですが、家族の皆さん、ジジちゃんとトトちゃんはどのような様子でしたか

 私もすごい……あそこまで大きい揺れが初めてで。東日本大震災のときは東京都にいて、そのときもわりと揺れたという記憶はあるのですが、今回は実家が古いのもあって……田舎によくある築50〜60年はたつような建物なのですごく揺れて、きしみました。

 最初は1回ちょっと揺れがあって、テレビをつけたら地震速報が入っていて。「なんか地震だね」って言っているときに、また大きな揺れが来て。まずは夫が娘をこたつの下にもぐらせました。トトはもともと、よく私たちの近くにいるタイプでこたつの近くにいたので、娘と一緒にこたつに避難させました。

 ジジは、スライドドアの前にいました。いつもと違うことがあるとすぐどこかに逃げようとする子なので、どこかに逃げたら危ないなと思ったのと、ジジの前には固定されていない高めの棚があってすごく揺れていたので、「倒れたらつぶされる!」と危険を感じた私が「ジジ!」と声を出して、走って、抱きかかえてこたつのほうに戻りました。でも私が行く前に棚の上にあったクリアボックスが落ちて、ジジに直撃していた気がします。私もパニックになっていて必死だったので、はっきりとは見えてなかったのですが……。

 それからは家族みんなでこたつでかたまっていたのですが、なかなか揺れがおさまらず、外の方にいた母が「外に出て」とすごく叫んでいて。今までの地震の常識的には“外に出ると塀が倒れて危ない”“落ち着くまで家の中(机の下など)で”と聞いたことがあったので戸惑いました。とにかく焦っていて、0.1秒ごとに「どうするどうする」と思考が入れ替わって。ただそのとき強く感じたのは、家が倒壊する可能性があるなと。母に言われて何秒後に反応できたかは分からないのですが、夫が娘を抱っこして、私がジジとトトを両脇に抱えて靴も履かずに家の外に出て、そこでみんなでかたまって、揺れがおさまるのを待ちました。

―――ジジちゃん、トトちゃん、娘さんも怖がっていたのではないでしょうか

 夫が外に避難したあたりから、記録用にカメラを回していたのですが、あとからそれを見たら私が動転して焦って泣きそうになっていて、たぶんそれで娘も「これは一大事だ」と思ったようです。「怖い」とも言わず、泣いてもいなかったのですが、黙って夫にしがみついていました。

 そしてトトがすごく震えていて。抱っこしている私は自分も震えているから分からなかったんですけど、夫がトトを見て「すごい震えてるね」と言っている動画も残っていました。

―――実家は中に入れる状態ではなかったのでしょうか

 壁がボロボロと崩れている部分もありましたが、中に入れないことはなかったです。ただもう怖くて、娘とジジとトトは家にいれませんでした。もし震源地ほどの震度が実家の地域にきていたら、倒壊してたのではないかと思いました。とにかく実家は古くて……2023年の11月ごろに耐震診断を受けたときも、日当たり重視で窓が多いこともあり基準値を大きく下回っていて、おそらくそれでものすごく揺れたのだと思います。外に出て近所の方と話をしたときも、その方の家は比較的新しいからか、そんなにすごい揺れを感じていなかったようでした。

 その古い家に、私が帰省で家族を連れてきていたので、「私が連れてきたばかりに、もしこの子たちに何かあったら」って思うと、もうそれが不安で、これ以上は家にいたくないという感じで、ずっと実家の車の中に母と祖母、娘とジジとトトと一緒に待機していました。

犬の命を軽視していると怒ってしまいました

―――そのあとはどのように過ごしていたのでしょうか

 しばらく車の中で避難してたのですが、私の母校の小学校(現在は廃校になり、大学の施設として利用されている)がたぶん開放されるだろうということで、急いで家の中から食べ物、飲み物、ジジとトト用のグッズをまとめたカバン、リード、お薬、炊飯器に残ってたご飯をおにぎりにしたもの、お正月用に準備していたおせちなどをタッパーにつめて、毛布などを持って車で向かいました。体育館は電気が割れて床に落ちていたそうでグラウンドしか開放されておらず、そこに駐車して車中待機をしていました。私たちが行ったときは、まだグラウンドは5分の1しか埋まってなかったのですが、その後どんどん車が入ってきて満車になっていきました。

 それから体育館以外の校舎で入れるところに、順次人が入れるようになり、お水だったり、ちょっとした軽食だったりの配布が始まりました。祖母や娘は中に入ってもらって、私はジジとトトがいて中に入ることはできないので、合流した父と母と一緒に車中待機でした。幸い、元小学校の方がお水が出たので、トイレなど問題なくはできていたのですけど、実家のほうは全部断水になってしまっていたので、これで実家に戻るっていうのも、あらためて厳しくなりました。

 ただ父は実家での揺れを体験していないから「壊れてないし大丈夫」みたいな感じで、ちょっとのんきで。また揺れたら実家はどうなるか分からないから、怖くて帰りたくないと返したのですが、そんな状態で「犬もいるから小学校の中に入れないし、犬と家に帰れば」、なんて言われて……「犬の命を軽視してる!」とショックで父に怒鳴ってしまいました。

 それで、心配した母が近くに住んでいる親族にあちこち電話をしてくれて……。私たち家族とジジとトトを宿泊させてくれる親族が隣の市にいたので、夜にお邪魔することになりました。先方の準備もあったので、23時ごろに到着しました。

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