江戸時代のやり方で水晶玉を作る全工程の写真がX(Twitter)に投稿されました。
まずは割って球状に整形
投稿者は、日本の石文化を研究しているという金井拓人(@Takuto_KANAI)さん。
金井さんは、江戸時代の文献を参考にして当時の水晶玉の磨き方を再現。副館長を務めるやまなし伝統工芸館で8月30日まで開催されていたイベント「みんなでみがく水晶玉」において、来館者と一緒に水晶を磨く作業に参加しました。
水晶はまず、原石をタガネと小槌で割って球状に整形します。この作業は欠っ込み(カッコミ)と呼ばれ、200年以上にわたり水晶細工業を営んでいる土屋華章製作所の伝統工芸士、藤森信行さんが行いました。これにより原石時に521グラムあった重さは、約200グラムまで減っています。
砂、植物、砥石でひたすら磨く
磨きの工程はまず、鉄の樋の上で粗い金剛砂を使い水晶球を押し付けるようにして磨きます。金剛砂とはザクロ石という鉱物が砂くらいの大きさになったもので、水晶より少しだけ硬いので研磨が可能です。
多くの日数をかけて磨き続けると重量は157.69グラムに。削れた部分はすりガラス状になり、滑らかな丸みが出てきています。さらに、細かい金剛砂で磨くと156.94グラムになりました。これは大変な作業だ……。
その後、より細かい金剛砂や木賊(とくさ)という植物を使って磨きを加えていくと透明感が微増していき、天然合砥(仕上げ用砥石)で磨くと一気に透明感が出ました。これなら知ってる水晶玉のイメージにほぼ合致します。
最終的な重量は156.22グラム。これについて金井さんは、「粗い金剛砂で43gほど減らしていますが、細かい金剛砂・木賊・砥石では1gも減っていません。成形と艶出しが別工程というのがよくわかりますね」とコメントしています。
水晶の研磨作業を仕事とした「珠摺」
なお、今回参考にした文献の1つ『人倫訓蒙図彙』(京都大学附属図書館蔵)によると、こうした水晶の研磨作業は「珠摺」という職業の人が担っており、眼鏡や数珠玉、舎利塔(仏具)などにそうした水晶が用いられていたそうです。
実際に当時のやり方で磨いてみると、その大変さから水晶製品がとても貴重なものであったことがうかがえますね。
画像提供:金井拓人 | 石文化研究(@Takuto_KANAI)さん
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.