睡眠は誰にでもできるお金のかからない健康法である!:すずまり流“続く”健康管理
睡眠がもたらす最大の効果は「脳の休息」。今年1年の健康は、まず睡眠を見直すことから始めてみてはどうでしょう。
昨年、当コーナーで「早く寝る→早起きする→やせる」の法則をご紹介しました。そこで眠ることにより肥満を防止できる可能性があることをお伝えしました。また「睡眠と活動量計のいい関係:“あの数値”に注目して、日中を活発に過ごす」では、質のよい眠りには昼間の活動が大切であり、よく眠ることで、自分が持つ本来のパフォーマンスを発揮しやすくなることをご紹介しました。
でも睡眠の効果はまだまだこんなものではありません。誰にでもできてお金がまったくかからない、もっとも簡単かつ効果的な健康法が「睡眠」なんです。
睡眠=脳の休息
ちゃんと寝ると翌日スッキリ気持ちよく過ごせることは体験として分かっていても、それが当たり前だと思うだけで、深く考えたことはないはず。どちらかというと、「寝る間を惜しんで」などといいながら、時間の中では真っ先に削られてしまがちな存在です。しかし、実はその逆。むしろ積極的にとるべき時間が睡眠時間なのです。なぜなら、睡眠がもたらす最大の効果は「脳の休息」だからです。
人生の3分の1を占める睡眠は、人間の脳の特異的な発達と、動物として備わった行動などが複雑に絡んだ生命現象といわれています。
昼間、脳はフル稼働しています。本人がぼんやりしているようでも、あらゆるものごとに反応し、絶え間なく活動しているのです。ヘビーに使い続けると冷却が必要なPCに置き換えると分かりやすいかもしれません。極度に発達した脳も、十分休ませる必要がでてきたわけです。
また、昼間活動する動物は、夜間は活動水準を低下させて、エネルギー消費を抑える必要がありました。夜眠ることで、脳を休ませ、同時にエネルギーを消費から蓄積方向へ切り替え、翌日に備えていたのです。容易に覚醒できる状態を保ちながら、夜間外敵から気配を消す役割もあったと言われています。
寝る間を惜しんだら……体ボロボロ!?
睡眠時間を削ってがんばることはいいことなのでしょうか。脳を休息させないとどうなるかここでまとめてみましょう。
まず倦怠感を感じますね。だるくて精神が不安定になって、ちょっとしたことでイライラしがちに。精神的なストレスもどんどん蓄積していきます。いつになく攻撃的な性格になって、つい暴言を吐いて後悔したりしたことはありませんか。
脳の反応速度が落ちるので、迅速かつ的確な判断ができなくなります。実は、睡眠不足は軽い酩酊状態と同じと言われています。居眠り運転の結果、どんな悲惨なことが起こるかおわかりですね。チェルノブイリをはじめとした世界で起きた重大事故の一部は、睡眠不足によるヒューマンエラーが原因といわれています。
食欲増進はすでにお伝えしたとおり。お腹がすいてきて、どうしても甘い物に手がでてしまいがちに。食べたら眠くなってそのまま寝てしまう。もともとエネルギー消費を制限し、蓄積するために獲得した睡眠ですから、摂取した糖質や脂質はすべて脂肪として蓄積コースへ。
免疫機能も低下するので、感染症やアレルギー、メタボ、高血圧、糖尿病、肥満、動脈硬化、認知症のリスクが高まります。糖を代謝する能力も低下するため血糖値が高くなり、糖尿病の発症率も上昇するとか。
抗酸化力も弱まります。細胞レベルで活性を失い、余分な糖がタンパク質と結びついて劣化変性する「糖化」も起こりやすくなるといいます。つまり、老化が促進されるということです。
やがて自律神経のバランスが崩れてきます。頭痛、肩こり、めまい、吐き気、むかつき、冷え、胃腸の不調、下痢、便秘などいろんな不調が現れてきます。小腸機能を低下させる可能性があるという報告もあるそうです。
メンタルにも影響
集中力、記憶・学習能力、注意維持、判断力、創造性、論理的思考力も低下してきます。これは勉強やビジネスシーンに置き換えると分かりやすいでしょう。覚えたいのに覚えられない。いいアイデアが浮かばない。ぼんやりして予定が整理できなくなってくる。うっかり大事な予定を忘れたりしてしまう……。
最近なんかやる気起きないな、と思い始めます。物事に意欲的に取り組むことができなくなり、ハア〜とため息ばかりでてしまう。やがて自己評価が低下しはじめ、どうせ自分なんかと思い始めます。どんどん周りが羨ましくなってきて、投げやりに。日中に過度の眠気がある人は、うつの発症リスクが2.5倍とも言われています。
また、行動の抑制機能も低下してきます。気がつくと、夜更かししてネットショッピングで買い物していませんか。どうしても欲しい。我慢できずに買ってしまえとボタンをクリック。そうして、使わないものや着ない服がどんどん貯まっていませんか。
自分でも経験
実際、私も最近睡眠不足が続き、これらを経験してしまいました。気がつけば倦怠感、気力の減退、激しいイライラ、自己評価の低下、自律神経の乱れ、食欲増進による体重の増加と不調のオンパレード。ネガティブ思考も止まらず、やたら落ち込んでいました。
部屋には常にお菓子が常備されるようになりました。すぐそこにあるのでつい手が伸びてしまいます。体はむくんで体重は増加傾向に。私の場合、お菓子ボックスが作られてケーキ系、チョコレートクッキー系のお菓子が常備され始めると危険なサインだと分かっているのですが、止められません。
栄養ドリンクやサプリメントの力を借りてもなかなか調子が改善しない……。しかしある瞬間ふと我に返り、もしやこれは寝不足だからかも気づきました。あえて目覚ましの時間を遅らせてみたら、少しずつ気持ちが持ち直してくるのを感じました。
規則正しく、睡眠時間を確保するだけで健康に
寝る時間を惜しんだ結果、いかがでしょうか。被るデメリットのほうが高くつきそうではないでしょうか。裏を返せば、ただ規則正しく寝るだけで、これだけのことが防げる可能性があるのです。
休息できずに機能が低下した脳は、自身の不調に気づかないのだといいます。つまり、これまでご紹介した不調やトラブルの数々も、現在睡眠不足の方は気づかないかもしれない、ということです。
体の不調が起きてから失うものは治療費に限らないはず。機会、信用、人脈など、さまざまなものが失われることもあるでしょう。もし十分な睡眠で防げるなら、そんな安いことはないですよね。
健康は最大の節約。「今年1年健康でありますように」と願った方は、よく寝てみてください。睡眠はもっとも安上がりな健康法であると同時に、自分への最大のご褒美でもあります。甘いものを食べるよりも、もっと体にプラスになるいいご褒美になりそうですよ!
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 猫背を直す特殊な靴「MBT」で“ペタペタ歩き”を矯正する
猫背ぎみの前傾姿勢で、“ペタペタ歩き”をしていませんか? 一見普通のスニーカーに見える「MBT」で、矯正できるかもしれません。 - 健康的なダイエットに“絶対”必要なモノ
ダイエットや健康管理を考え始めるに当たって、「絶対に必要な物」があります。これがあれば単純な体重の増減に一喜一憂することもなくなるかも? - これで3年続いてます――超シンプルな「リバウンドしにくい食事記録」法
30〜40代ともなると、体の無理が利かなくなってきます。徹夜ができなくなった、寝ても寝ても疲れが取れない、以前より気分ややる気にムラが出るようになった――。そんな毎日を改善したいなら、食事管理を始めてみるのがおすすめです。