声優業界の実状も見え隠れ!? 人気声優・落合祐里香さんの格安オフ会に潜入(2/2 ページ)

» 2006年12月20日 16時39分 公開
[ひろいち,ITmedia]
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疲れているとこスミマセン――落合祐里香さんインタビュー

 オフ会が終わると、スタッフは余韻に浸る間もなく後片付けに入った。当然、落合さんも作業に入るところなのだが、そんな落合さんをつかまえてインタビューをさせていただいた。格安オフ会に至った経緯や、その心境などをぜひ聞いてみたかったのだ。……疲れているところ、本当にスミマセン。

―― 本日はお疲れ様でした。

落合 お疲れ様でした。

―― オフ会は大成功でしたね。

落合 そう言っていただけるとうれしいです。スタッフやファンのみなさんのおかげです。

―― 元々、オフ会を開こうと思い立った経緯はなんだったのでしょうか?

落合 だんだんとブログを読んでくださる方やブログの会員になってくださる方が増えてきて、そういった読者の方たちとふれあうことができたらなと思ったのがきっかけです。

―― 1回目のオフ会を開く際には、金額や開催場所の変更がありました。

落合 そうですね。私のファンの方の中には学生さんも多いので、5000円というのは少し高かったのかなとも思います。最初はそういったオフ会とかの相場がわからなかったので、安易にパーティープランとかで考えてしまった部分もあったのかなと。

―― オフ会の会費を1000円と決めるにいたった経緯は。

落合 いろいろな店や方法も考えてはみたんですけど、もうキリのいいところで1000円ならば文句も出ないだろうと。行き着いたという感じでしょうか(笑)。もちろん、元の金額でもいいと言ってくださるファンの方もいたのですが、できる限りみんなが納得する形にしたいと思いました。ただ、やはり最初は不安もありましたね。金額面ももちろんなのですが、プランの問題もありましたから。お店を利用させていただくと、いろいろと出来ることが定まってくるんですよね。食事の時間も多めにとらなければいけないし、そのあいだにプロジェクターを使って上映会をしたり……。ただ、こういうスタジオを使って1から作るとなると、漠然としすぎていてどうしていいのかと悩みました。みんなが楽しめるものを作れるのだろうかというのが、1番の不安でした。

―― オフ会をやめようという思いはありませんでしたか?

落合 それはありません。ファンの方と親睦を深めたいというのは、恩返しの部分もありましたので。ただ、スタッフのみんなの協力がなければできない会でした。実はスタッフの中には、レストランで働いていた人や、某メーカーのイベント担当の方がいるんです。専門家の人たちがいたので、ある程度のノウハウもありましたし、作業時間の短縮もできました。よりよいものができたのかなと。

―― では、2回目のオフ会を開こうと思った経緯は?

落合 2回開くというのは、最初から決めていたことなんです。というのも、最初の段階で、ファンの方100人で募集をかけたんですね。で、いろいろあって会場が変更になったら、収容人数の関係で40人しか呼ぶことができなかったんです。だから、100人には満たないまでも、もう1回は開こうと。

――では、3回目もあるということでしょうか?

落合 次はもっと違った形でやりたいですね。もちろん格安というのは変えずに、たとえば体育館を借りてなにかできないかなとか、お友だちの声優さんを呼んだりとか……。ファンの方々との交流をやめるつもりはないので、いろいろと考えてみたいと思います。

―― ちなみに、激安オフ会には自身の貧乏経験が役立っているとか……?

落合 どうなんでしょうか(笑)。あまり意識はしていなかったんですけどね。ただ、金額の面で人より驚きは少なかったのかも。サンドイッチなんかも、手間がかからずコストもかからずということで得意な分野でしたし。

―― やはり若手声優さんの生活って苦しかったりするんでしょうか?

落合 もちろん個人差はありますけど、専門学生のころよりも声優になりたてのころのほうが生活は苦しいんです。若手のころはあまり仕事がもらえないので、当然アルバイトをしなくちゃ生活はできないですよね。けどトレーニングもしなくちゃいけないし、オーディションにも行かなくちゃ仕事は増えない。でも、オーディションは平日にあったりしますからアルバイトを休んで行くことになりますし、まだ未熟なわけですからオーディションに落ちちゃって仕事がもらえないなんてのは珍しくないわけです。それでもオーディションを受け続けて、結局はアルバイト休みすぎてクビになっちゃったりして……。もう本当に大変でした。でも、そういう経験があるから、今がんばれているのかなって思います。

―― それでは、今後の展望などをお聞かせください。

落合 声優の仕事ももちろんがんばりますが、来年はライブ活動を中心にやっていきたいと思っております。全国にCDを売りに行ったりもしますので、ファンの方々ともっともっとふれあえる機会が作れたらなと思います。

―― 最後に、ファンの方々にひとこと。

落合 最近私のことを応援してくださる方が増えてきて、大変うれしく思っています。私にとってファンの方々の応援はなによりの力ですし、こうしてみなさんにふれあえる時間というのは大切な時間です。今後もこういう機会を作って、エネルギーをもらいながらも、ファンの方々に少しずつでもお礼を言っていければなと思います。みなさん、これからもどうぞよろしくお願いします。

イベント前、頭に付けるカチューシャを選んでいた落合さんをパチリ。イベント中とはカチューシャの色が違うのだ

 スタッフの話を元に補足説明をさせていただくと、実はこの2回の1000円オフ会は赤字で運営されている。もちろん、その赤字部分は落合さん自身が負担している。さらに言えば、スタッフは全員、落合さんの友人や役者仲間にお願いしており、こちらももちろん無償である。落合さんの言葉の中にもあったが、そういう意味でも彼らの協力がなければ立ち行かなかったイベントだったのだろう。正直、スタッフと落合さんとの結束力のようなものには感心させられた。とても友人の集まりとは思えぬ立ち振る舞いで、迅速かつ的確にイベントを進めていた。

 取材をしてみて何よりも感じたのは、ファンへの愛がなければとてもできないイベントだろうということだった。数日前から打ち合わせをして、数時間前に会場入りをして、赤字を出してでも精一杯のイベントを開く。レストランなどのパーティープランなどを使えばよほど楽に済んだだろう。もはや金額の問題ではないのかもしれないが、1000円×40人=40000円でできる最大限のおもてなしがされていたことは、イベントに出席された方なら感じ取っていただけたはずだ。ファンへの愛情とプロ意識と頼もしい仲間と、あとはおそらくちょっとの意地でこのイベントは作られていたことは間違いない。

 そして何より驚いたのは、ファンとの距離が非常に近いイベントだったということ。(セキュリティの問題を考えれば重要なことではあるが)舞台と客席に隔たりがあったり、決められた席から眺めるだけのイベントを見慣れた自分にとって、それは非常に新鮮に映った。また、実際の距離だけではなく、心の距離も近かったように思える。落合さんをはじめスタッフの面々も積極的にファンの方々に語りかけ、本当のふれあいをしようとしていたし、ファン自らも会を楽しいものにしようと積極的に応えていた。羽目を外してしまうようなファンもなく、実に紳士的に、しかし楽しく会は進行した。そして、こうしたイベントは、やはり素晴らしいファンがあってこそ作られるのだと感じる。素晴らしいファンが素敵なイベントを産み、その気持ちに応えようと声優たちはさらに素敵なものを作り出す。実に素晴らしい関係を目の当たりにさせていただいた。

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