「PR入れないでと指示受けた」 ステマ問題、漫画家側は知らずに関与か、PR漫画家に実情聞いた

「いざステマが問題になると、矢面に立たされるのは漫画家」と、代理店やエージェント会社の対応に不満も。

» 2019年12月16日 12時00分 公開
[ねとらぼ]

 映画「アナと雪の女王2」の“ステマ(ステルスマーケティング)問題”で、関わっていた漫画家への批判が今も続いています。ディズニーは12月11日、公式サイトであらためて謝罪するとともに「クリエイターのみなさまに責任はございません」と強調しましたが(関連記事)、「漫画家側もステマと知っていて加担していたのではないか」という疑念が全て晴れたわけではありません。

 しかし、漫画家側の謝罪文を読むと「依頼主からPR表記は必要ないと説明があった」「広告代理店がPR表記をつけないよう依頼してきた」といった内容も見られ、一部では「漫画家には本当にステマという意識はなかったのでは」といった声もあがっています。一体なぜ、今回のような「ステマ騒動」は起こってしまったのか、漫画家側は本当に「PR表記はなくても大丈夫」と思っていたのか。編集部では、過去に同じような案件に関わったことがあるという漫画家に匿名で話をうかがいました。


ステマ 漫画家取材 ステマが問題となっていた、映画「アナと雪の女王2」(ディズニー公式サイトより)

代理店から「PRは入れないで」という指示があった

 最初に話を聞いたのは、これまでに何度かこうしたPR漫画の仕事を引き受けたことがあるという漫画家のAさん。Aさんによると、過去のほとんどのケースでは「PR」と分かる表記を行っていたそうですが、冷静に振り返ると、いくつかはPR表記を入れずに投稿してしまったものもあったと言います。

―― 「PR」なしで投稿してしまったケースについて、その時は依頼主からそういう指示があったのでしょうか。

Aさん 自分は代理店から「PRは入れないで」という指示を受けました。言い出したのが代理店なのか、クライアントなのかは分かりません。

―― 自身では「PRをつけないとステマになってしまう可能性がある」とは考えなかったのでしょうか。

Aさん 今では深く反省していますが、その時は本当に分かっていませんでした。代理店からは「指定したハッシュタグを付けていれば大丈夫」と言われ、それを信じてしまっていました。

―― 「アナ雪2」の件で関与が指摘されているwwwaap(ワープ)のように、エージェント会社が間に入っているケースもあると思います。こういうエージェント会社側では問題について認識していなかったのでしょうか。

Aさん 自分が聞いた事例では、エージェント会社が断っても、広告代理店に「PR付けなくても大丈夫」「PRを付けるならこの話は他へ持っていく」などと圧をかけられ、それで折れてしまったことがあったそうです。

 wwwaapも自社で「提供表示ルールについて」というガイドラインを設けていますし、知らなかったということはないはずです。ただ、今回の「アナ雪2」の件を見ると、「投稿文面上への表記」も「作品内への表記」も「作品内での言及」もまったく守られていなくて、もしwwwaapが関わっているのだとしたら何のためのガイドラインなのかと思ってしまいます。


ステマ 漫画家取材 wwwaapが設けている「提供表示ルール」。基本的に「投稿文面上への表記」「作品内への表記」「作品内での言及」のどれかは必ず行うとしているが、「アナ雪2」の件ではどれも行われていなかった

―― 今回の「アナ雪2」の件についてはどう見ましたか。

Aさん 自分と同じように、単に指示に従っただけだと思います。代理店あるいはエージェント会社から「ハッシュタグを付けていれば大丈夫」と聞かされ、それを本気で信じていた人も多かったのではないでしょうか。にもかかわらず、いざステマが問題になると、矢面に立たされるのは漫画家で、代理店もエージェント会社も一切表に出てこない。これでは漫画家がかわいそうです。

―― 今後はどうすべきだと思いますか。

Aさん 自分たちももっと普段から気を付けていなければいけなかったと思います。何かあっても、代理店やエージェント会社は漫画家を守ってくれない。今後はもっと勉強して、自分たちの身は自分で守らなければいけないと思います。


漫画家側からは同情的な声も多い

 続いてお話をうかがった「Bさん」も、Aさんと同様、過去“PR表記なし”で広告マンガを書いたことがあったそうです。

―― 過去に「PR表記なし」でPR漫画を書いたことがありますか。その時はどういう経緯で「PR表記なし」になったのでしょうか。

Bさん 確認したところいくつかありました。自分の場合、あまり細かいやりとりというのはしていなくて、基本的にクライアントからハッシュタグの指示があり、その通りに書いていました。

―― 明確に「PRを入れないで」という指示があるというよりは、「指定されたハッシュタグの中に『PR』が入っていなかった」ということですか。

Bさん そうですね。自分の場合「入れないで」といった指示をいただいたことはありません。

―― ハッシュタグの指示があったとのことですが、ツイートの文面なども一緒に指定されるのでしょうか。

Bさん ハッシュタグは必ず指示があります。ツイートの文面もほぼ指示がありますが、ある程度自由なケースもあります。

―― 「PRと書いてなくてもハッシュタグを入れてあれば大丈夫」のような説明を受けたことはありましたか。

Bさん いえ、そういった説明を受けたことはありませんでした。

―― 漫画家側としては「PRなし」で大丈夫だと思ってしまうものなのでしょうか。

Bさん そもそもPR漫画というのがまだ始まったばかりのものなので、自分も含めて、細かいハッシュタグの指定にまで注意を払える作家は少ないのだと思います。

―― 今回明らかになった件以外にも、こういうケースはあると思いますか。

Bさん 作家も気付いていない範囲であると思います。

―― 今回の「アナ雪2」の件を漫画家として見ていてどう感じましたか。

Bさん いろいろと事情はあるのだと思いますが、漫画家がまず矢面に立たされてしまったことは遺憾に思います。周囲の漫画家の反応を見ても、(漫画家側に)同情的な声が多かった印象です。

―― 今後、Bさん自身としてはどうしていくべきだと思いますか。

Bさん クライアントや代理店としっかりとやりとりをして、コンプライアンスを守り、誠実に仕事をしていくことが大切だと思います。




 現在はステマ問題について「クリエイターのみなさまに責任はございません」との立場をとっているディズニーですが、当初は編集部の取材に対し「作家さんにツイートしてもらうという形で対処した」「現時点では公式サイトなどで説明を行う予定はない」などと説明しており、真っ先に謝罪した漫画家が非難の矢面に立たされる形となってしまっていました。


ステマ 漫画家取材 二度目の謝罪文では「クリエイターのみなさまに責任はございません」と『アナと雪の女王2』感想漫画企画」にご参加いただいたクリエイターのみなさま、そしてファンのみなさまへ(ディズニー公式サイトより)

 また現状、ディズニーと漫画家は謝罪しているものの、漫画家に具体的な指示を出したとされる代理店、あるいはエージェント会社側からは何の声明も出ていません。「PR表記を付けない」という判断はどこが行ったのか、当初漫画家側が謝罪していたのはどこの指示だったのかなど、いまだ不明な点は多く残っています。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2409/14/news065.jpg 天皇皇后両陛下の那須静養、愛子さまが天皇陛下のため蚊を手で払う場面も…… “仲むつまじいショット”が約240万再生
  2. /nl/articles/2409/13/news079.jpg 「脳がおかしくなった」 新宿駅を出る→“まさかの光景”に思わず三度見 「意味わからん」「田舎者にはマジでダンジョン」
  3. /nl/articles/2409/14/news035.jpg 「変わりすぎやん!」 たった5年間で…… 梅田の町並みの“激変”に衝撃の声 「ここがこう!?」「再開発ってすごい」
  4. /nl/articles/2409/14/news006.jpg これは憧れる…… “1人暮らし歴5年”のこだわりがつまった“1K7畳”に反響 「なんておしゃれ」の声
  5. /nl/articles/2409/13/news194.jpg 「浮ついた気持ちあった」 “30万人が視聴”有名ストリーマー、セクシー女優との“不倫疑惑”を弁明
  6. /nl/articles/2409/14/news033.jpg 夫の弁当を8年間作る妻、寝起き5分で作り始める弁当をのぞくと…… “お互いストレスが少ない”秘密に「お店で売ってたら絶対買う」
  7. /nl/articles/2409/14/news009.jpg そうはならんやろ “バラの絵”を芸術的に描いたら……“まさかの結果”が200万再生 「予想を超えてきた」【海外】
  8. /nl/articles/2409/12/news004.jpg 雑草だらけの庭が“たった1台の草刈り機”で…… “見事な変化”に7000万再生 「よくやった」「まさにプロ」
  9. /nl/articles/2409/07/news027.jpg “緑の枝付きどんぐり”をうっかり持ち帰ると、ある日…… とんでもない目にあう前に注意「危ないところだった」
  10. /nl/articles/2409/10/news029.jpg 550円の“壊れたガンプラ詰め合わせ”を購入→ジャンク品を“大復活”させる職人技に脱帽 「ロマンを感じる」
先週の総合アクセスTOP10
  1. “緑の枝付きどんぐり”をうっかり持ち帰ると、ある日…… とんでもない目にあう前に注意「危ないところだった」
  2. 食べた桃の種を土に植え、4年育てたら…… 想像を超える成長→果実を大収穫する様子に「感動しました」「素晴らしい記録」
  3. 「天才!」 人気料理研究家による“目玉焼きの作り方”が目からウロコ 今すぐ試したいライフハックに「初めて知りました!」
  4. 義母「お米を送りました」→思わず二度見な“手紙”に11万いいね 「憧れる」「こういう大人になりたい」と感嘆の声
  5. 「しまむら」に行った58歳父→買ってきたTシャツが“まさかのデザイン”で3万いいね! 「同じ年だから気持ちわかる」「欲しい!」
  6. 猛毒ガエルをしゃぶった30分後、口がとんでもないことに…… 直視できない異常症状に「死なないで」「この人が苦しむってよっぽど」
  7. 33歳の「西郷どん」二神光さん、バイク転倒事故での急逝に衝撃 1年前の共演者は“願い”明かし「叶わないなんて」
  8. 「コレ入れると草が生えない」 外構工事のプロがやっている“究極の雑草対策”に注目
  9. 「へー知らんかった」 わずか7年で“消えた駅” 東京メトロが明かす“知れば納得の歴史” 「だからあんなに……」
  10. 秋葉原のトレカ店が“買い占め被害” 近隣店とその常連客が共謀し“全口購入の人員確保” 「大変遺憾で残念な限り」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 釣れたキジハタを1年飼ったら……飼い主も驚きの姿に「もはや魚じゃない」「もう家族やね」 半年後の現在について飼い主に聞いた
  2. 「もうこんな状態」 パリ五輪スケボーのメダリストが「現在のメダル」公開→たった1週間での“劣化”に衝撃
  3. 「コミケで出会った“金髪で毛先が水色”の子は誰?」→ネット民の集合知でスピード解決! 「優しい世界w」「オタクネットワークつよい」
  4. 庭で見つけた“変なイモムシ”を8カ月育てたら…… とんでもない生物の誕生に「神秘的」「思った以上に可愛い」
  5. 「米国人には想定できない」 テスラが認識できない日本の“あるもの”が盲点だった 「そのうちアップデートでしれっと認識しそう」
  6. ヒマワリの絵に隠れている「ねこ」はどこだ? 見つかると気持ちいい“隠し絵クイズ”に挑戦しよう
  7. 「昔はたくさんの女性の誘いを断った」と話す父、半信半疑の娘だったが…… 当時の姿に驚きの770万いいね「タイムマシンで彼に会いに行く」【海外】
  8. 鯉の池で大量発生した水草を除去していたら…… 出くわした“神々しい生物”の姿に「関東圏では高額」「なんて大変な…」
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「なんでこんなに似てるの」 2つのJR駅を比較→“想像以上の激似”に「駅名だけ入れ替えても気づかなそう」