こんにちは、ライターのみくのしんと申します。
無料で漫画や小説が楽しむことが出来る電子書籍のレンタルサイト「Renta!」にて「こどものグルメ」というグルメ漫画が連載開始することはご存知ですか!?

「こどものグルメ」とは
「孤独のグルメ」「花のズボラ飯」等、数々の人気グルメ漫画の原作を務める久住昌之先生と、「NieA_7」「リューシカ・リューシカ」等、かわいらしいイラストで名作を世に生んだ安倍吉俊先生がタッグを組んだ話題のB級グルメ漫画!

小学4年生の主人公、蓬野 杏(よもぎの あん)ちゃんが作る、食べたことは無いけど、どこか懐かしい(?)数々の料理は、背伸びをして料理をしていた子どもの頃を思い出させるような物ばかり。「孤独のグルメ」とはまた違った視点で描かれており、グルメ漫画ファンのみならずさまざまな方に響く作品となっています。
そこでねとらぼ編集部では、そんな「こどものグルメ」の連載を記念して、作中に登場する料理を「料理が得意なライター」が作り、完全再現に挑戦したいと思います!
さらに今回、その料理の試食をなんと……!

「こどものグルメ」の作画担当である安倍吉俊先生に食べていただきます!

というわけであらためまして「料理が得意なライター」のみくのしんと申します。食器を洗いながらすみません。
「はてはて? あなたは一体誰?」
……そう思う方の気持ちはとてもわかるのですが、不安な気持ちは僕が一番強く感じているので、久住先生、安倍先生のファンの方々、どうか怒(いか)らないでいただけると幸いです。

そんな不安が写真にでたのか大丈夫なのか……? 不安と緊張が相まって、この世から僕の存在が消えようとしていますね……。
俺はバック・トゥ・ザ・フューチャーPart1のマーティか!?

「……あの、さっきからブツブツ言ってますが……大丈夫ですか?」


「うわお! いつの間に! ご挨拶が遅れましたみくのしんと申します! 今回はよろしくおねがいします!」

「こちらこそよろしくおねがいします!」

「これから安倍先生には、こどものグルメの作中に出てくる料理を実際に僕が作って食べていただくのですが……『知らないおじさんが作った食べ物とかはちょっと……』みたいなのってありますか?」

「いえいえ! 全然大丈夫ですよ! むしろ今日はおいしい料理が食べられると聞いてお腹を空かしてきたところです」

「それはよかったです!(……味オンチであってくれ!)」

「なにか言いました?」

「いえ、何でもありません! それでは早速作って行きましょう! 最初は「ポテサラ丼」です!」
【ポテサラ丼】

【材料】
- ポテトサラダ
- ごはん
- ソース
【作り方】
- ご飯の上にポテトサラダを乗せ、ソースをかけた後、レンジで2分ほど温める
- 完成
【作中のポイント】
ポテトサラダの中に入っているりんごは先に食べる

「こどものグルメというだけあって、すごく簡単そうですね」

漫画に忠実に再現するために、まずは予め作っておいたりんご入りのポテトサラダを冷蔵庫から取り出して、

調理する前にりんごを食べました。


「それなら最初っからりんご入れずに作ればよかったのでは?」

「完全再現ですからね。もしかしたらりんごのダシが出るかもしれないですし!」

その後はごはんの上にポテトサラダを塗ってソースをかけて電子レンジで2分温めたら完成!


「あっという間ですね」

「本当に誰でも出来るレシピという感じがしました。僕が作らなくても大丈夫では?」

「そんなことないですよ! それではいただきます!」


「もぐもぐ……」


「どうですか……?」


「熱ちー(笑)」

「熱ちーんだ」

「いやいや! なんか駄菓子のような感じがして、おいしいです! 子どもは好きなんだろうなっという感じです」

「よかった……。ちなみにこのポテサラ丼もそうなんですが、安倍さんはこどものグルメに出てくる料理は実際に作ったり食べたりはするんですか?」

「そうですね。普段料理はしないんですが、やっぱり一度作らないとわからないことや発見もあるので毎回作って食べていますね。作って食べないとどうしても嘘になっちゃうので」


「それは原作の久住さんから実際にレシピをいただいて作ってるんですか?」

「はい、一度ネームをいただいた後で再現してます」

「なるほど……となると、いよいよ僕が作る意味が無くなってきた?」

「そんな事ないですよ。だって熱くておいしいですもん」

「熱いのはどうしても大事なんですね」

実際に作中にも登場する「ポテサラトースト」も食べていただきました。


「こっちも熱いな」

「味はどうですか? おいしいザウルスですか?」



「そうですね。おいしいザウルスです」

「ありがとうございます。ちなみにおいしいザウルスも久住先生のネームにあったセリフなんですか?」

「これは久住先生が考えたお言葉ですね! 僕自身が原作者の方と一緒にお仕事をするのが初めてでして、まずはアドリブを加えず、ほぼほぼいただいた原稿を生かして制作しています」


「ただ、アドリブでは無いのですが……例えばこのコマ。ネームでは実際に文字しか書いていなかったので、そういう時は僕なりに子どもの仕草的などを参考にして描いたりしますね」

「お子さんがいるんですね!」

「二人いるんですけど、こどものグルメの料理を作る時はいつも一緒に作るので、リアルな子どものリアクションを『お! いい動きするなぁ! イタダキ!』と思いながら漫画にしています!」

「いいなぁ…。ありがとうございます! ではそろそろ次の料理をお出ししますね!」
【卵焼きフライパンで作る四角いホットケーキ】

【材料】
- ホットケーキミックス(たまご、牛乳を含む)
- メイプルシロップ
- バター
- 銅製のフライパン
- 濡れ雑巾
【作り方】
- ホットケーキミックスの作り方に従って材料を混ぜ、銅製のフライパンで焼く
- 完成
【作中のポイント】
フライパンは銅製の物を使用する


「お店のパンケーキの様に厚みを持たせるためにフライパンを使う回ですね」

「普通のホットケーキに見せかけて『良いフライパン』を使っているので、少し難しそう」

まずは分量通りにホットケーキミックスを作っていきます。

その後は作中同様、「ネツデンドー」に優れている銅製のフライパンを使って焼いていきます。
弱火でじっくり温めた後、一旦濡れ雑巾で冷やすのが大事なんですよね。

通常のホットケーキと違って、厚さもあれば熱の通り方もわからないのでひっくり返すタイミングが中々どうして難しいです。

「……よし、少しふつふつ泡が出てきたから……今かな!」


「安倍先生! 見ててくださいね!」

「頑張って!」

しっかり反対側のフライパンも温めて雑巾で冷やして……

はいっ!



「おおお〜〜〜〜!!」

「2回目にしてうまくいきましたね!」

「1回目はなかったことにしてたのに……」

ちなみにこちらがびっくりするほど失敗した第一号目。
超余談ですけど、ホットケーキを失敗した時って意外にみんな責めずに「うんうん! 全然! イケるイケる!」って言って食べてくれませんか?

「余談だなぁ」

というわけで焼き上がったものを2枚重ねてバターメイプルシロップをたっぷりかけて完成!

「ふぅ……失敗せずに作れてよかったー!」

「本当においしそうです! いただきます!」


「あ、その前に……この、ホットケーキの回の出来上がりの絵が本当においしそうなんですよね……それ一回出したいな」

「……」


「ちょっとまっててくださいね! あれ……? どこだっけ? あのシーン見たいんだけど……」

「ズズッ……」


「あれ〜〜〜?」

「あーーん……」

ぱくっ。

「うんめぇな」

「食べちゃった」

「なんの話でしたっけ?」

「まじか」


「これだこれこれ! この絵がおいしそうで僕好きなんですよ!」

「ありがとうございます。実はこの絵僕も好きなんですよね」

「何かこだわってる点とかってあるんですか?」


「そうですね。このホットケーキだけじゃないんですけど、料理の漫画ということで、料理だけは、輪郭線で区切られないような描き方をしましたね!」


「確かに先程のポテサラ丼も食材の色味だけで縁取りはしてないんですね」

「出来るだけおいしそうに描きたかったので、今回は実験的にこういう描き方をしてみました」

「実験……? 漫画を作る過程でそういうことはよくするんですか?」


「そうですね。昔書いていたNieA_7(ニア アンダーセブン)という漫画では、一話ごとに画材を全部変えて作っていたり……」

「すごっ」

「本当に昔はイラストの描き方で漫画を描いた事があったんですけど、160ページ書くのに3年半かかったことがあって挫折したこともありましたね(笑)」

「もう一回、すごっ。ちなみに今回のホットケーキも実際にお子さんと作ったんですか?」

「もちろん一緒に作りました」


「特にホットケーキミックスをくるくる回して混ぜるシーンなんかはまさに子どもがやっていた物をまんま描かせていただきました!」

「これはかわいいし、なんか僕も子どもの頃やってた気もする」

「それと、僕も銅製のフライパンで作ったのですが、実はこれが久住先生からのいただき物で、実際にかっぱ橋まで行って買ってきてくださったものなんですよ」

「へー! いいなぁ! 今もまだ使ってるんですか?」

「フライパンに詳しくなかったので、結構良い物と知ってからは大事に使ってます!」

「安倍先生もかなりちゃんと再現してるんですね……! それではラストの伸びて冷めたうどんを食べていただきます……!」
【伸びて冷めたうどん】

【材料】
- 出来たてのうどん
- うどんを冷ます時間
【作り方】
- 出来たてのうどんを冷ます
- 完成
【作中のポイント】
出来たては食べない


「かなりの問題作というか……これって人に食べさせていい料理なの?」

「ちなみに僕が実際に作った時は“伸びて冷めたうどん”って味がしました」

「めっちゃ心配だぞ」

冷えて伸びきったうどんということで、その場で作るわけにいかず、取材の当日朝にうどんを作っておきました。

こちらは「まだ」あったかいうどん。タッパーに入れて持ち運んできました。

「…という訳で、あらかじめ作って来たので器に盛り付けますね」

「よろしくおねがいします」


「汁が全然無いですね。僕が作った時よりも伸びている! それではいただきまーー」

「わ! あべっち! ちょっとまって!」

「あべっち!?」


「どうしたんですか?」

「こちらのうどん。まだ完成してないのがわかりませんか!?」


「こどものグルメ第5話にて、杏ちゃんがうどんを冷ましてる最中に我慢できずに具材をほとんど食べてしまう、というシーンがありますよね。なので具材を食べて初めて完成なのです!」


「え〜〜〜!?(笑)」

「めちゃめちゃノリがいい! すげーいい人かい!」


「と、いうわけで。とり肉やしいたけなどの具材は僕がいただきますね!」
※この記事の執筆中に気づいたのですが、なんで僕が食べるんでしょうね?

※安倍先生もシュンとしちゃってんじゃん。なに無視して取皿に分けてんだよ。気づけ。


「それじゃあとり肉いただきま〜す!」
※恥ずかしいな。これみんな気づいてて俺だけ気づいてなかったら最悪だぞ。


「おいしい〜安倍先生ごめんなさい!」

「ずぞぞぞっ」
※おいおい…。先生は先食ってるし、てめぇは一人でとり肉食ってるし、もう本当にすみませんでした!

「どうでしょうか? お味の方は……?」


「あれ? ……おいしいかも」

「え!? おいしいんですか? 伸びてるのに? ちょっと僕もいただいていいですか……?」

ずるるんっ。


「久住先生には失礼かもしれないけど……なんでだろう! 全然おいしい!」

「汁も完全に無くてどうかと思ったんですが、ドルドゥルドルドゥルンでおいしいすね!」


「こんな絡まり方する!? ってくらいうどんが太くなりすぎてますが…」


「うまい!」

「めちゃめちゃちゃんとした漫画家先生が伸びて冷めたうどんをうまいうまい言って食べてるのすごいな」

「実はこの伸びたうどん、作るのも時間がかかって苦労したんですが、実は漫画でも苦労したんですよね」

「何があったんですか?」


「さっき、こどものグルメでは食べ物の絵にこだわっていると言ったんですが、このうどんに関してはより書き込んだんですよね」

「というと…?」

「少し専門的な話になってしまうんですけど……」


「今までだったら、ツユの色のグラデーションみたいなのを機械的に載せてたんですけど、この伸びたうどんはそうじゃなくて……。あえて手描き感を出すために、“うどん”と“うどんの上に浮いているうどんの色”と“汁の中に沈んでいる色”と“それが影になっている場合”と“そうじゃない場合”の5種類を作って、それぞれの具材に色を分けて、そこからまたツユの上に浮いているうどんのハイライトなどを付けて……など、色をかなりこだわって分けて描きました」


「???……うっす」

「まぁ……簡単にいうと特に描きこんだって事です! ただ、読んでいただければわかるんですが、まさかこんなに何ページもうどんが出るとは思わなくて描いてる最中に『またうどんかよ……』とかなり大変でしたね(笑)」

「おつかれさまです」

「ちなみに苦労でいうと、こどものグルメでは話を前編後編に分けてる話があるんですが、このうどんの回ではどこまでを前編にしよう……って悩みましたね」

「前編後編は安倍先生が分けているんですね!」


「基本的に久住先生からは8ページ分のネームをいただくんですが、表情や料理を大きめにしたいので、コマを大きくして実際もらったページよりあえてページ数を増やして描いてたりしてますね」

「いろいろ聞いてるとやっぱりこだわりにこだわっているんですね……! 恐れ入りました」

「僕はこの漫画を仮に自分の子どもが読んだときに、こんなの作ってみたい! って思ってほしいし、大人が読んだら童心に帰って欲しいし、親子だったら僕みたいに家族で作ってみたいと思ってほしい。そんないろいろな思いを乗せて描いてたりするので……結構考えてますね!」

「かっけぇ……そんなところまで考えているのですね……本日はいろいろ教えていただきありがとうございました!」
最後に

取材を始める前は失礼の無いようにと心がけていたのですが、蓋を開けてみれば気さくに接してくださって、僕も楽しく(失礼があったらすみません!)料理を作ることが出来ました。
今回は、連載記念ということだったのですが、いつの間にか安倍先生の「こどものグルメ」に対する熱い想いや、漫画を描くことへの情熱などを知ることが出来て、とても良い時間を過ごせた気がします。
そして! そんな安倍先生が作画を担当する「こどものグルメ」がこの度「Renta!」にて連載開始します!
僕は、伸びたうどんに変わる「なにそれ!?」みたいなレシピが出るのが楽しみでしょうがありません! 原作の久住先生による「孤独のグルメ」のドラマ新シリーズも放送中のこの機会にぜひ、気になった方は「Renta!」に登録して読んでみてください!