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牛乳というものがある。スーパーに行けば必ず並んでいる、誰もが目にしたことあるあの飲み物だ。
イメージしてほしい、スーパーの牛乳はどのように売られているだろうか。きっと冷蔵コーナーで売られているところをイメージしたはずだ。
しかし実は、すべての牛乳が必ずしも冷蔵保存しないといけないわけではない。「常温保存可能品」とパッケージに書かれているものは、常温で3カ月から4カ月ほど保存できる。牛乳を買い溜めしておきたい人、たとえば張り込み中の刑事にもとってもうれしい存在といえる。
張り込み中の刑事といえば「牛乳」
漫画やドラマでよく見る定番のシーンに憧れを抱く人は多いはずだ。それは例えば、氷も溶けるような熱い恋愛のワンシーンだったり、好きだと言えずに高校卒業が近づくアオハルな場面だったり、人それぞれに憧れるシーンを持ち合わせている。
刑事の張り込みも憧れるシーンの一つ。この写真の私は、もう刑事になりきっている。ホシ(被疑者)をずっと張り込んでいる。周りの刑事たちは違う人物を疑っているが、そいつは犯人でないと私は確信している。本当のホシは彼なのだ!
私は彼をもうずっと張り込んでいる。張り込みの定番、牛乳とあんぱんを片手に。
暑い日も寒い日もじっと目を離さず、疑いが確信に変わる瞬間をひたすら待つ。有能な刑事ならば張り込みが早く終わる、ということはない。決定的瞬間はいつ訪れるか分からない。その瞬間が来たらすぐに動き出せるよう、体力をしっかり温存しながら、忍耐強く待つしかないのだ。牛乳を片手に。
張り込みの相棒といえるのが牛乳だ。張り込みは体力勝負でもあるから、手軽で栄養価の高い飲み物はありがたい。その滑らかな白い液体は喉を潤し、私を強くしてくれる気がする。
毎日1本は牛乳を飲みたいので、飲みきりサイズの牛乳パックを買い込んでいる。買い込んで常備していないと落ち着かないのだ。
買い込んで……というところで、急に思った。スーパーの牛乳ってだいたい冷蔵で売っている。だがいま私が持っている牛乳は、張り込み場所で常温保存しているものだ。なぜ腐らないの、とふと心配になった。
子どもの頃から、牛乳はスーパーの冷蔵コーナーで買って、家に戻るとすぐに冷蔵庫に入れていた記憶がある。でも、この牛乳は常温保存。これ大丈夫なの?
私が飲んでいた全ての牛乳は、パッケージに「常温保存可能品」と書いてあった。ひとまず安心したが、改めて考えてみると「そんなことできるの?」と思う。
そして私の刑事としての勘が冴える。それぞれ牛乳メーカーは違うけれど、ある共通点が隠されていた。
見つけてしまった。メーカーが違う牛乳だが、パックの底を見ると「Tetra Pak」という文字が共通して書かれている。私の勘では、この文字にこそ「常温保存可能品」の秘密が隠されているはずだ。捜査しなければならない、刑事として。「Tetra Pak」と「常温保存可能品」の関係性を──。
パックの裏の文字、「Tetra Pak」の正体は?
張り込んでいたホシのことは一旦忘れて、牛乳をなぜ常温保存できるのか知りたくて、日本テトラパック株式会社のオフィスを訪れた。先の牛乳パック裏の「Tetra Pak」は、この「日本テトラパック」のことなのだ。ここで話を聞かせてもらう。
要冷蔵の牛乳と成分は一緒! なのに「常温保存」できる理由
それだけではなく、充填する紙パックも特別に設計されています。こうした常温保存が可能な紙パックは「ロングライフ紙パック」といいます。そして、このロングライフ紙パックに充填された常温保存可能な牛乳を「ロングライフ牛乳」と呼んでいます!
ロングライフ紙パックは、外部の光や酸素を遮断するために設計された6層構造であることが大きな特徴です。紙パックにはいくつか種類があり、それぞれ構成が異なる場合がありますが、このロングライフ紙パックは、紙やポリエチレン、そしてアルミ箔を含む6層で構成されており、これによって内容物の鮮度や品質を長期間保つことができます。
そして滅菌やロングライフ紙パックだけではなく、充填する環境も大切です。私たちが提供している充填機は、食品を無菌環境で充填する特殊な機械になります。滅菌されたものを、滅菌された容器に、無菌の環境下で充填するということで、長期保存が効く牛乳となります!
環境に配慮した取り組みとして、ごみを減らすための「4R」という考え方があります。テトラパックでは「4R」の推進に向け、ロングライフ紙パックの一部の層に植物由来(サトウキビ由来)のポリエチレンを使用し、再生可能資源の割合を高めた商品も販売しています。
1つ目から違いますが、奇跡的に4つ目は正解です! 「リデュース」「リユース」「リサイクル」「リニューアブル」です。「リデュース」=ごみを減らす、「リユース」=くり返し使う、「リサイクル」=資源として再利用する、「リニューアブル」=再生可能な資源を使う、という4つの行動を指します。
実は長年、そして今も身近にある「ロングライフ牛乳」
1968年には、ロングライフ牛乳が南極観測船に積まれていた記録もあるんです。その後、1970年代から本格的に普及し始めました。実は、皆さんがあまり意識していないだけで、ロングライフ牛乳は昔からずっと身近に存在しているんです。
一般家庭向けに流通しているものの多くはそうですね。でも、カフェや飲食店で使用する業務用牛乳ではロングライフ牛乳が使われていることが多いです! 要冷蔵だと賞味期限が短くて管理が大変ですし、冷蔵庫内の場所も多くとってしまいますから。
賞味期限が長い牛乳で、社会的課題を解決する?
日本以外のヨーロッパや東南アジアでは、ロングライフ牛乳の比率が非常に高く、国によっては80%、90%、あるいはほぼ100%を占めるところもあります。たとえば、ベルギー、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、ベトナム、タイ、フィリピン、マレーシア、インドネシア、中国といった国々では、ロングライフ牛乳が主流であり「牛乳=常温保存」という認識が一般的です。一方、日本やアメリカでは、冷蔵牛乳の比率が高い状況です。
はい! 飲食店だけではなく、家庭でのストックとしても役立つと思います。「ローリングストック」として、定期的にまとめ買いで備蓄しつつ消費もしていく、というのもありですね。牛乳ってすごく栄養価が高いので、災害備蓄の観点でも非常に良いアイテムです。
お茶、野菜ジュース、プロテイン……実は「ロングライフ紙パック」だらけ
栄養価が高いものを、できるだけ多くの人に届ける
日本では流通が発達しており、さまざまなものが手に入りやすいため、ピンと来ないかもしれません。ですが海外の険しい山岳地帯のように冷蔵トラックが簡単に入れない地域や、手に入る食品が限られている地域、さらには災害時に物流が途絶えてしまう地域もあります。そうした場所でも、常温で保存できる製品であれば届けやすくなります。栄養価の高い食品を、これまで届けられなかった人々にまで届ける──それこそが、ロングライフという技術が生まれた大きな理由なのです。
それめちゃくちゃわかります! 一番わかります! 一日の仕事終わりに野菜ジュースを飲んでリフレッシュすることがあるんです。「Tetra Pak」と書かれた紙パックだったのでロングライフ紙パックを使った商品だと思うんですが、これって開けやすくて神だなと感動していたんです。一日仕事をした後なのでへとへとなんです、満身創痍。握力もないし、繊細な動きもできない。でも、ジュースは飲みたい。そんな時に、このキャップが本当に開けやすい! 少しの力で開く! もちろん閉めやすい! 閉める時にカチッって音がするので、本当に閉まっているのかな、と心配になることもない。これに前から感動していたんですよ、本当にありがとうございます!
常温保存ってすばらしい
ロングライフ牛乳の場合、パッケージの表面に「常温保存可能品」と書いてあります。また、保存方法の欄に「要冷蔵」と書かれていないことも確認の目安です。代わりに「直射日光や高温多湿を避けて保存してください」といった表記があれば、常温で保存できる商品です。
あまりにも「牛乳=冷蔵」というイメージが浸透しすぎているため、常温保存ができるのに冷蔵コーナーで売られていることもあるんです……なのでよく見てみてください。ロングライフ牛乳なら、未開封であれば購入後に常温保存していただいてもまったく大丈夫です。
日本テトラパックで話を聞いた後、私はまた張り込みに戻った。今回の捜査を通じて、牛乳が常温保存できる理由がわかった。理由がわかってから飲むロングライフ牛乳はさらにおいしく感じた。安心感というか、日本テトラパックの自信が感じられる。
ロングライフ紙パックを使ったロングライフ牛乳などが、いろいろな社会問題を解決する一つの答えになると思う。そのためにも私もホシを上げなければ。ロングライフ牛乳が未来の星であることを私は確信したのだった。