大きな地震が起きたとき、皆さんが最初に心配することはなんですか?

 地震の規模、建物や道路の被害情報、身近な人の安否、避難場所……など気になることはたくさん。だからこそ揺れが収まった際、多くの人が最初に手に取るものは「スマホ」です。情報を得るのも、家族や友人に連絡をするのも、災害時にやりたいことの多くは「スマホがつながっている」ことが前提ですよね。

家族や友人に連絡したい、情報を集めたいのに……「スマホが繋がらない」?

 でも、そのスマホが圏外になってしまったらどうでしょうか? 

 実際、日本でも地震の影響で大規模な通信障害が起こった例があります。そのため、東京都はこうした「通信が途絶えるかもしれない」という事態への備えを進めているんです。

 普段、私たちのスマホがつながっているのは、街のあちこちに設置された「携帯電話基地局」のおかげです。基地局に届いた電波は地下や電柱を通るケーブルを経由して、ようやくインターネットや通話相手に届きます。つまり、基地局が止まればスマホが無事でも通信はできなくなるということ……!

 災害時に被害を受けるのは、基地局も例外ではありません。設備そのものに被害があったりケーブルが断線したりすれば止まってしまうのはもちろん、停電が長引き、非常用のバッテリーなどが尽きた場合にも停波してしまいます。

 こうした事態に備えて東京都が力を入れているのが、通信手段の「多重化」です。ひとつの手段が止まっても、別の手段でつながるようにしておく、という考え方です。

災害時にも通信を止めないために……東京都が進めている通信手段の「多重化」

①携帯電話基地局を止めない
 まずは基地局そのものを守る対策。非常用電源の長時間化を図り、停電が長引いても基地局が電池切れにならないようにします。さらに、基地局から先のケーブルが切れても通信が続くよう、衛星回線など、別の通信手段も確保しています。こうした通信事業者の取り組みを、東京都が支援しています。

②避難所や都有施設のWi-Fi整備
 避難所に加えて、人が多く集まる都の施設にも、面倒な登録なしで自動的につながる「OpenRoaming対応Wi-Fi」の整備を進めています。携帯電話の回線が混み合ったり止まったりしても、Wi-Fiがあれば通信が確保できます。

③基地局がなくてもつながる「衛星通信」
 そして、そもそも基地局を経由しないルートも。東京都は島しょ部や多摩山間部に衛星通信機器の配備を進めています。島しょ部では、海底ケーブルの通信障害が発生しても、空を経由すれば通信はできる……! 多摩の山間部など、基地局の整備が難しい地域でも活用されています。避難所のWi-Fiとつなげば、住民の通信手段としても生きてきます。

 さらに、電気自動車などのZEVを“走る電源”として活用して停電時の電源を確保するとともに、行政データのクラウド化を進めるなど、電力やデータの面からも災害に備えています。

 「充電できて、つながって、情報が失われない」。災害時の不安の大部分を占めるこの3点に、それぞれ何重もの対策がされているというわけです。まさに備えあれば憂いなし……!

 さらに注目したいのが、東京都の「被害想定」そのものの変化です。東京都は「首都直下地震が起きたらどれくらいの被害が出るか」という被害想定を定期的に見直しています。その2012年版と2022年版を比べると、想定される被害規模がはっきり改善しています。

首都直下地震が起きた際の東京の被害想定。「2012年→2022年」の10年でこんなに変わった

 建物の全壊棟数は約12万棟から約8万棟に、焼失棟数は約20万棟から約12万棟へと大きく減少。停電や固定電話の不通回線率も大きく減っていることがわかります。つまり、10年で地道に進められてきた対策が数字にも表れているということ!

 なぜ10年の間に被害想定が改善したのでしょう? その背景には「地道な対策の積み重ね」がありました。

・建物が倒れにくくなった
 東京の住宅の耐震化率は全国を上回る水準で、現在は93.4%まで上昇。建物が倒れなければ、その下敷きになる人も減るため人的被害の想定も減らすことができます。

・街が燃え広がりにくくなった
 都は延焼による焼失率がほぼゼロになる70%の不燃領域率を目指して、木造住宅密集地域で老朽建築物の除却や建て替えを支援し、市街地の不燃化を推進。現在は67%まで向上しています。

・火事の“最初の一歩”を止める
 揺れを感知して自動的にブレーカーを落とすグラぴたスイッチ(感震ブレーカー)の設置率も上昇しました。地震火災の大きな原因である「通電火災」を防ぐ対策です。

・道路の無電柱化
 災害によって電柱が倒れれば道路がふさがれ、消防車や救急車が通れなくなるというリスクがあります。電柱を地中に埋めることは、そのまま迅速な救助活動に繋がります。

・ライフラインを守る
 地震に強い水道管や太陽光発電の導入など、水や電力といったライフラインを守る取り組みを進めています。「スマホの通信」も現代では重要なライフラインのひとつです。

耐震化以外にも、地震時の被害を減らすためにさまざまな取り組みが行われています

 上記はあくまでほんの一部。建物の耐震化の他にも、こうしたひとつひとつの対策が積み重なって大きな効果につながっています。取り組みのいくつかはニュースなどで見かけたことがあるけど、こんなに重要な対策だったなんて知らなかった……!

 起こりうる「もしも」は地震だけではありません。気候変動によって降雨量が増加し、昨今では風水害の被害も増加しています。2026年に入ってからも全国各地で大きな地震や記録的な豪雨が相次いでいます。

 こうした環境の中でも都民の命を守り、これから100年後も持続可能な都市であるために、東京都が令和4(2022)年に策定したのが「TOKYO強靭化プロジェクト」です。

 大正12(1923)年9月1日に発生した関東大震災から100年という節目を前に、これまで築き上げてきた安全・安心な都市をよりレベルアップさせて次の世代に引き継いでいくための取り組みとしてスタートしました。

5つの危機に備える「TOKYO強靭化プロジェクト」

 「TOKYO強靭化プロジェクト」では「風水害」「地震」「火山噴火」「電力・通信等の途絶」そして「感染症」を東京都に迫る5つの危機として定め、それぞれの危機について対策強化を進めています。

  策定から1年が経過した令和5(2023)年には内容のアップグレード(TOKYO強靭化プロジェクト upgrade Ⅰ)も行われ、近年の気候変動や社会情勢の変化を踏まえながら長期プロジェクトとしての取り組みが進んでいます。

 ひとつ覚えておきたいのは「防災対策は、うまくいくほど気付かれにくい」ということ。

 スマホがつながった、停電しなかった、火が広がらなかった――。災害時も普段通りの生活が送れていたとしたら、それは「何も起きなかった」のではなく「積み重ねられてきた対策に効果があった」ということ。以前なら被害が生じていた・被害が予想されていた場所で被害が発生しなくなるということは、防災対策の積み重ねの成果なのです。

 100年先の安心・安全を目指す「TOKYO強靭化プロジェクト」では、まず「2040年代に目指す強靭化された東京の姿」を目標として定めています。

2040年代までに、東京はもっと災害に強くなる!

 「2040年代に目指す強靭化された東京」とはいったいどんな姿なのでしょう?

 たとえば地震分野では、「倒れない・燃えない・助かる」まちをつくり、建物の倒壊等による死者を8割減にすることを目標に掲げています。地震のあとも救出救助機関がすぐに駆けつけられるよう、応急対策活動を支える交通網も確保していきます。通信の分野では、避難所のWi-Fiや衛星通信によって「つながる東京」を広げていきます。

 普段暮らしているだけでは、なかなか気付かない都市の災害対策。でも実は足元で、頭上で、そしてスマホの電波の向こう側で──「100年先も安心できる東京」を目指した災害対策がこれまでも、これからも着実に進んでいます。

 さらに詳しい取り組みが知りたい方は、ぜひ「TOKYO強靭化プロジェクト」の公式サイトをチェックしてみてください!

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