2つの「片刃ニッパー」を試して、成形色仕上げのプラモデルを楽しめる(もちろんそれ以外も)ツールを検討したいと思います。
プラモデル界隈において「成形色仕上げ」が定着してずいぶん経ちます。昭和のプラモ少年だった自分にとっては何となく違和感のある組み合わせの言葉でしたが(「成形色」なのに「仕上がる」のっておかしくない?)、最近ようやくその手軽さゆえの楽しさが分かってきました。

今回はそんな成形色仕上げのアイテムとしてしばしば挙げられる「片刃ニッパー」について考えてみます。成形色仕上げにおいてゲート跡の「白化」は一番の大敵です。白化とはパーツを切り離したときにプラスチックが押しつぶされて白く変色する現象のこと。
塗装しない成形色仕上げでは白化したパーツがあるとどうしても目立ち「オモチャ感」が出てしまいます。そこで白化を避けるためのゲート処理をするのですが、その際に「片刃ニッパー」が有用である、というのが定説になっています。
そこで今回は2つの片刃ニッパーを試して、成形色仕上げを楽しめる(もちろんそれ以外も)ようにツールを検討したいと思います。
片刃ニッパーの特徴
今回試すのは以下の2つの製品です。
クレオス「Mr.片刃ニッパー MT106」
クレオス「Mr.片刃ニッパー MT106」は、プラモデル用片刃ニッパーとしては中価格帯の製品。ゲートカットに特化した薄刃仕上げが特徴で、開きすぎ防止・刃折れ防止ストッパーも装備しています。

ゴッドハンド(GodHand)アルティメットニッパー GH-SPN-120
片刃ニッパーといえばこれ、とも言える定番商品がゴッドハンド(GodHand)の「アルティメットニッパー GH-SPN-120」。“究極の切れ味”をうたうだけあって価格も高め。こちらも薄刃に仕上げられており、各種ストッパーも備えています。

片刃ニッパーの特徴を簡単に説明します。
従来のプラモデル用ニッパーは2つの刃でパーツを挟み、切り取るというものでした。両方が刃になっているため、破損を防ぐため頂点が完全にはぶつからないように少しだけずらされています。そのため刃が最後まで入らずに、最終的には「ちぎる」ような力で切断します。
一方、片刃ニッパーは片方が刃、もう片方がまな板のような受け手になっています。これにより刃をパーツの端から端まで入れられ、しっかりと「切り離す」ことができる構造です。また両刃ニッパーと異なり刃同士が接触することがないので刃を薄く鋭くすることが可能になっています。
ただデメリットもあります。刃を薄くできる半面、破損のリスクは大きくなっています。特にねじ切るような動きをすると刃が欠けてしまう危険があるため注意が必要です。また、製品によっては切断できる太さや材質に制限が設けられており、そのため「上級者向け」と言われることもあります。
多くのモデラーにはすでに定番アイテムとなっている片刃ニッパーですが、上記のような破損リスクもあるため自分は「別にいいかな(大して変わらないだろう)」と積極的には使おうとしていませんでした。今回、レビューにあたり初めて経験するところとなり、自分としても楽しみです。
実際に使ってみた:両刃とはたしかに違う切れ味のMr.片刃ニッパー
まずは「Mr.片刃ニッパー」から検証します。実際にパーツを切り離してみると刃がゲートにスッと入っていきます。比較のために私がいつも使っているタミヤの「薄刃ニッパー」もあらためて試してみましたがより少ない力でゲートを切断できることが分かります。
刃を差し入れるとき最初に力を入れるわけですが、このときの力が少なくて済むという印象です。ものすごく大きな差というわけではありませんが、プラモデル作りを進める中でゲートカットを何度も繰り返すことを考えると1回ごとの負荷が軽いに越したことはありません。ごく軽い力でリズムよく作業を進められるので気分も良いです(どちらかというとこちらのほうが大きいかも)。
切断面を見てみましょう。まっすぐ、きれいに切り取れているのが分かると思います。実際の使用シーンを想定してパーツのキワまで攻めて切断してみましたが、ゲート跡の白化も際立ったものは見られませんでした。写真だと光の反射でゲート周辺が白っぽくなっていますが実際にはほとんど気にならないレベルです。
また、破損の危険が高まるのであまり推奨されない使い方だと思いますが、このMr片刃ニッパーでランナーを切ってみました。多少力は必要ですが、両刃ニッパーと比べると刃の入りは明らかにスムーズです。断面も、中央部分は白くはなっていますが滑らかで、凹凸やケバ立ちなどはありません。
実際に使ってみた:「究極」は本当? アルティメットニッパー
では次にゴッドハンド「アルティメットニッパー」を使ってみます。「職人技による究極の切れ味」を称するだけあり、こちらも切れ味は素晴らしく、高い切削力でゲートをスムーズに切断できます。ほぼ力を入れることなく静かにパーツが離れていく印象です。
切断面も直線的で歪みがありません。こちらも先ほどと同様、パーツのキワでゲートを切り取ってみましたがゲート跡は全くのゼロにはならないものの「1回切っただけ」の仕上がりとしては申し分ない結果です。
ランナー切断も試してみます。いちおうアルティメットニッパーの用途は「プラスチックモデルのゲート、ランナー専用」、切断力は「プラスチック直径3mm以下」となっているので今回切ってみるランナーも用途の範囲内ではあります。ただ、太いものを切ることは先ほども述べたとおりそれだけで刃が欠けるリスクを増す行為ですので推奨しません。
緊張しながら切ってみると、こちらも静かに刃がランナーに沈み込み、音もなく切断できます。両刃ニッパーで切る場合はシャープな刃先のタミヤ薄刃ニッパーであっても「パチン」という音をさせて切り離したランナーが切断の反動で飛んでいってしまうのですが、片刃ニッパーにはそれがなく、スッと下に落ちます。片刃と両刃の切れ味(というか切断の仕組み)の違いが顕著に出ているといえます。切断面はやはり多少白くはなるものの滑らかで引っ掛かりはありません。白化部分もMr片刃ニッパーよりも小さく済んでいるように見えます。
気になる両者の比較ですが、これは大きな差は実感できなかったというのが正直なところ。ゲート程度の太さの切断ですとニッパー自体で感じられる性能差はかなり微妙で、短時間の試用ではしっかりとは認識できなかった、と思っています。どちらかというとパーツの形やゲート周りの入り組み方による切りやすさによる違いのほうが大きく感じられました。
ただ、ランナーの切断面を比較すると分かるように「刃の入りやすさ」に関してはアルティメットニッパーが上回っていると思われ、高価格帯モデルとしてのポテンシャルを感じさせてくれます。今回は耐久性に関しては検証できていないので、長く使い続ければまた違う結果になる可能性は十分あります。
まとめ
プラモデルの仕上がりは単体のツールだけで決まるものでもないですが、ニッパーの違いで成形色仕上げが左右されることは確かめられたかなと思います。
ニッパーのような基本ツールは長く使ってこそ自分に合う・合わないが分かるものでもありますが、もしまだ片刃ニッパーを試していないなら一度手に取ってみてもよいのではないでしょうか。私も今回初めて使ってみて想像以上に両刃ニッパーとの差を感じることができ有意義でした。
片刃ニッパー不要論(特にアルティメットニッパーが槍玉に挙がっている印象)も一部にあるようですが、プラモデルのような趣味の世界で「いったん試してみる」ことはそれ自体に価値がある行為ともいえます(安くないものでもあるので難しい部分もありますが)。プラモデルをより楽しむためにぜひ一度ご検討いただければと思います。






