2003年冬発売予定のPS2用ゲームソフト「はじめの一歩2 VICTORIOUS ROAD」。
今回「はじめの一歩2」のゲームの開発を行うのは2003年に結成されたゲーム製作会社グランプリだ。
グランプリとは?そしてその製作の指揮を執るプロデューサー,青柳龍太氏に「はじめの一歩2」と開発会社グランプリの話を伺った。
プロフィール
氏 名:青柳 龍太(あおやぎ りゅうた)
年 齢:1969年12月26日
血液型:AB型
出身地:東京都葛飾区
趣 味:ビデオゲーム・絵・強行軍ドライブ
所 属:有限会社グランプリ
所 属:代表取締役 プロデューサー
収録日:2003.8.18
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ゲーム製作会社 グランプリ
グランプリは,ニューの分社化によって発足した新組織。実はグランプリという名称だけは'89年に誕生していて,'91年に青柳氏がニューに入社したときにも新たに別会社として立ち上げようといった話はあったというから,その誕生の経緯は10年以上前に遡る。
青柳氏は'97年までニューに在籍し,その後フリーでゲーム開発に携わっていくわけだが,ちょうど前作「はじめの一歩 VICTORIOUS ROAD」を開発していた2000年に分社化の話が浮上。
そして,ゲームビジネスにおける “ブランド”という発想を再構築し,新しい姿を生み出したいと考えたニューの方針に合致する形で,ついに今年3月に「グランプリ」が発足することとなったのだ。
青柳氏はこの業界に入る前,元々ゲームが好きだったこともあり,ゲームセンターで働き店舗を任されるまでになっていたという。
アーケードゲームの「ワンコインで自分がやりたいものをやれる感覚が好き」と語る青柳氏。実はアーケードゲームばかりやっていて家庭用ゲームはSFCを買うまでプレイしたことがなかったようだ。
そんなおり,青柳氏の知人がニューの設立に携わり,その知人の紹介を経てゲーム業界に入ることに。
青柳氏は,ゲーム業界を目指している人に「まず,ゲームが好きというのは,この業界に入る人にとって凄く支えになると思う」「よい作品を作ろうと思ったら枠にはまっていることはできない。もちろん会社を定時で帰れることは難しく,そんな生活が3カ月,1年と続いたときに本当に自分がこの世界を好きなのかどうかが分かってくる」とアドバイス。
1年,2年とやっていて,そこで後悔しないためにもゲーム業界を目指すときの覚悟は重要なのだ。
将来,ゲーム業界に入って,青柳氏のようにプロデューサーになり,思うままのゲームを制作したいと夢見る読者もいるだろう。
しかし,だからといって,すぐにプロデューサーになれるわけではない。青柳氏もゲームキャラクターのドット絵を描くことから始まり,そしてグラフィックの仕事をこなしながらじょじょにゲーム企画の手伝いもするようになっていったという。
「ゲームを作りたければ,とにかくゲーム業界に入って,そこで色々学んで道を進めばいいと思う。学校などもゲーム業界への道としては良いのではないか」と青柳氏はアドバイスする。
さて,プロデューサーとなった青柳氏が最初に企画したのは,ゲームとは少し毛色の違うディスクマガジンだったという。しかし,残念ながらそれはすぐに企画倒れになってしまい,その後,ちゃんとしたタイトルを作ろうということで開発に携わったのが,PS用ゲームソフト「ちっぽけラルフの大冒険」である。
「ちっぽけラルフの大冒険」はPSとしてはめずらしい2Dジャンプアクションだ。
そしてニューの代表的な作品,本格ボクシングゲーム「BOXERS' ROAD」の制作を経て,40万本以上の売り上げを記録した「はじめの一歩 VICTORIOUS ROAD」を開発することになる。
そしてグランプリを設立。青柳氏はプロデューサーとして「はじめの一歩2 VICTORIOUS ROAD」の開発を手掛けることになる。
はじめの一歩2 VICTORIOUS ROAD
青柳氏自身,原作の「はじめの一歩」ファンだというだけあって,そのこだわりはハンパではない。
今回,「はじめの一歩」制作には,前から興味があったモーションキャプチャーでのモーション表現が初めて導入されたという。意外なことに前作ではモーションキャプチャーは使っていなかったそうだ。
というのも,「モーションキャプチャーを使うとデータが大容量になってしまい,そこからキーを落としてデータを軽くしたときに実用に耐えうるものにできるのかという部分で,前作ではそれが難しいということになり使用しなかったから」とのこと。
大量のモーションを入れさまざまな割り込みをかけてさらにモーションを多彩にする際に引っかかっていた,モーションのつなぎ目や容量の問題がクリアになったため,今作で導入できることになったのだ。
新技術の蓄積はどのように行われるのかとの質問に「日々積み重ね。一本作るごとにスキルは上がっていく。また,スタッフは常に,自分の興味のあることや,できそうなことを研究している。好きでやってると色々気付くようになるってことでしょうね」と語る青柳氏。
スケジュールや予算管理はもちろん,スタッフの意見を聞き,集約し,作品の方向性を検討し,今回はここまでできて,ここは捨てる等の判断を下すのもプロデューサーの大事な仕事なのだ。
システム面では,前作よりもパンチなどの当たり判定などがかなりチューニングされているとのことだ。
前作ではフックをかなり強くしていて,どこで振っても当たるようにあえてしていたが,今作では離れていれば当たらないように現実に近い感じになっている。
また,前作ではアッパーもボディーから頭まですべての攻撃をカバーしていたが,今回は通常は頭しか狙えないようになり,ボディーアッパーが打ちたければ,一度ボディー打ちの操作をしてからでないとボディーアッパーが打てないようになっている。
さらに,前作ではあえて平均化していたストレート,フック,アッパーの特性を,今作でははっきりと差別化した。
前作ではどのキャラクターでもプレイヤー側は同じように対応できたが,今作ではストレートを使ってくるキャラクターならそれに対応したプレイが必要になるのだ。
「その意味でストレート使いの宮田はかなり良いキャラとして使えますよ」と青柳氏。なんでも,強いはずなのに出番の少ない宮田を使ってほしいとのこと。
今作の特徴といえば,「BOXERS' ROAD」の要素を取り入れ,自分だけのオリジナルボクサーを作成し,一歩たちの世界に入り戦うことができるという「BOXERS' ROADモード」だろう。
「BOXERS' ROAD」では,企画書の段階ではモンタージュでテンプレートをたくさん用意していたが,今作のBOXERS ROADモードでは,さまざまな体型や顔などさまざまな人種を再現でき,より細かいレベルまでカスタマイズできるようになった。
顔のカスタマイズについては前から入れたいと思っていて,今回ようやく入れることができたそうだ。
「はじめの一歩2 VICTORIOUS ROAD」の開発は技術的な問題が解消し順調に進んでいるようで,今冬の発売に向けて最後の追い込みに入っているところだという。
青柳プロデューサーは「『はじめの一歩』のファンも,ボクシングゲームのファンも楽しめるような作品に仕上げるので,無事に発売された暁にはぜひプレイしてみてほしい」とコメントする。
プロデューサー青柳 龍太
プロデューサーという肩書きを得た今も,青柳氏のゲーム制作における信念に変わりはない。
ゲームを開発していると「開発側の立場や都合が入ってしまって,見方や感じ方がある意味業界慣れしてしまう面がある。もちろんそれも大事なことではあるが,自分がゲームをプレイしたときの気持ちを失わないようにしていきたい」というように,一ゲーマーとしての気持ちを忘れずにプレイヤー側の視点での物作りを心がけていきたいという。
■開発用PS2をはじめ,CRT 2台とモニターの乗った青柳氏の仕事机。
今冬間違いなく大注目の一作となる「はじめの一歩2 VICTORIOUS ROAD」。現在,青柳氏をはじめ,グランプリスタッフが全力で制作する新たな「一歩」の発売を期待して待とう。
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