2003年06月02日
■ゲーム業界を語る! 〜平林久和氏インタビュー
ゲーム業界の現状と未来について,ゲームアナリストの平林久和氏にお話をうかがってきたよ。
今,進路を考えている君へのアドバイスもある。ゲームに興味をもつ人なら必見だ!
今,ゲーム業界はいったいどんな状況にあるんだろう?
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ゲーム会社の合併や統合のニュースが世間を騒がし,話題になっている。今,ゲーム業界がどうなっているのか,そしてこれからどうなるのか,そんな誰もが抱く疑問に答えていただこうと,ゲームアナリストの平林久和氏を訪ねた。氏はゲーム業界の隅から隅までを知るゲーム業界のご意見番。まずゲーム業界の現状について語っていただこう。
平林氏:「学生さんからゲームソフトの売上が落ち込んでいるけど就職しても大丈夫ですか? とよく聞かれます。そんなとき,僕は『君はゲームやってる?』って尋ね返すんです。
すると昔に比べて最近はゲームをやっていないって答える人が多いんですね。それが今のゲーム業界の状況です。ユーザーがあまりゲームをやらないのだから,業界が儲かるわけがない。
みんな昔のゲームは面白かったって言いますが,それは当たり前。だって昔は『見たことのない』ものばかりだったんですから。発売されるゲームはすべてが新しいものだった。『スーパーマリオブラザーズ』も『ドラゴンクエスト』もそう。
でも今,新しいものは一通り出尽くしてしまって,さてどうしようかという状態になった。階段を昇り続けてきて,今は踊り場で休憩をしているところというとわかりやすいかもしれませんね」
ゲーム業界が再び元気を取り戻すためにはどうしたらいいの?
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新しいものが出尽くしてしまったと言われるゲーム業界。じゃあどうすれば再びゲーム業界は以前のような元気を取り戻すんだろう?
平林氏:「昔には戻れません(笑)。でも,いままでが『20代で社長になって外車を乗り回して……』という業界だったので,それが普通になっただけ。
ゲーム業界は簡単に稼げる業界ではなくなった。つまり,マリオから20年たって,ようやくゲーム業界が普通の業界になってきたということなんです。
他の業界と同じように,努力した人だけが稼げる業界になったんですね。まぐれや運ではなく,頭をひねって新しいメニューを作っていくことが求められている。
合併についてはこう考えられます。ゲーム業界が成熟して大きな業界になってくると,資本主義の仕組みの中に組み込まれるようになってきます。
ちょっと難しい話になりますが,株式を公開し,多くの人たち=市場に支持されることで会社が経営されていきます。ですから,これから売上が伸びるという期待感を皆に与えなければならないんですね。
合併や統合を行うと一般に会社の経営は良化するし,新しいものを作り出すきっかけにもなりえます。
ではその中でゲームクリエイターたちはどうすればいいのか。僕は,クリエイターは会社のことを気にする必要はないと思います。
どこの会社にいても実力があれば,いいゲームを作ることはできるはずです。それこそが大事なんです。周りのことよりも,まず自分の作ったゲームを1人でも多くの人にプレイしてもらうために,がんばることが重要です」
大切なのは各々が努力を怠らないこと。クリエイター自身がしっかりしていけば,会社や業界の流れにも対応していくことができるのだ。
これからのゲームクリエイターに求められることは……?
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そんな難しい時代に,ゲームクリエイターに求められることは何だろう。
平林氏:「クリエイターはゲームってなんだろう,っていう『ゲームの本質』をもう1度考え直すべきだと思います。
『ゲームはTVモニタの中でスコアを競うもの』『プレイ時間は長いほうがいい』なんていう既成概念の中で作っていては,新しいものは生まれない。
これからのゲーム業界で絶対に取り残されていくでしょう。これから成功していくのは,ゲームとは何か?という本質から考え直せるクリエイターです。
最近ではナムコの『太鼓の達人』が大ヒットしました。もう音ゲーは流行らないとか,値段の高いタタコンなんて売れないなんて言われる中,予想を覆した。
太鼓そのものを体感できる,いままでにないタタコンというインターフェイスの勝利ですよね。このインターフェイスによって幼稚園のこどもからおじいちゃんまで楽しめるものになった。
それから任天堂の『メイドインワリオ』。ゲームはめんどうくさくて時間のかかるものだという常識を覆しました。ユーザーの立場にたって考えられている。
ゲームはスコアや勝敗だけじゃないってことをこれらのゲームは体現しているんです」
ありえないことを可能にしていく力,そして古いものからまったく新しいものを作り出す力が,これからのゲームクリエイターに求められているのだ。
最後に,これからのゲームはどのように発展していくのか,そして未来のゲーム業界を背負って立つキミたちへのメッセージを伺った。
平林氏:「2010年以降,TVがデジタルになり,双方向型のまったく新しいメディアが生まれます。そうなった時に,今までとは全く違った形の『新しいゲーム』が出てくるんじゃないでしょうか。
これからのゲームは,デジタル,エンターテインメント,そしてインタラクティブという要素を得て,今までとは異なる形へと脱皮するでしょう。
これだけは覚えておいてほしいんです。ゲームの向こうには何でもあります。でも,最終的にたどりつくのは“人間”です。
プレイをしてくれるユーザーや,ゲームを一緒に作る仲間,みんな人間なんです。ゲームを考えることは,結局は人間を考えることにつながっていくのだと思います。
人間さえわかっていれば,たとえ他の実力が追いつかなくても逆転できるはず。おごらずに,ユーザーの目線を持ち続けることが重要です。
ゲームが大好きな人が,ゲームを学び,ゲームを通じて人間を勉強する。それはすごくすてきなことです。この特集を読んでいるクリエイター志望の人たちが活躍する10年後には,新たなゲームが生まれるのを楽しみにしています」
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