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“血統”よりも“ケツ統”が大事レビュー(2/2 ページ)

“総合競馬エンタテインメント”と銘打った「ダービータイム」。PSP初の競馬SLGとなる本作は、オーソドックスでバランスよくまとまったシステムと、無線LAN機能での新たな遊びの可能性を兼ね備えた、“期待の新馬”だ。

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ワイド画面ならではの臨場感あるレースシーン

 さて、肝心のレースでは、スタート前に騎手に作戦の指示を出す。「騎手に任せる」「大きく逃げて」「後方で待機して」などの位置取り、「早めに仕掛けろ」「ゆっくり仕掛けろ」などの足を使うタイミングの2種類。ペースや人気馬の脚質を考えて選ぶのがセオリーだ。

 また、馬には「スピード」「パワー」「持続力」「闘争心」に始まり、適性を示す「スタート」「休み明け」「夏場」、性格の「落ち着き」「馬込み」「素直さ」……と、全24種類ものパラメータが設定されている。これらも見極めて、戦法を練りたい。

 ひとつ残念なのは、レースでは直線、頻繁に前が詰まり、先行してスムーズな競馬をしないと、負けてしまう傾向があること。確かに、実際の競馬も先行有利とはいえ、ここはゲームと割り切って、自分の馬が馬群を縫うように飛んでくる、そんな爽快感があっても良かった。レースシーンは見応えがあるだけに、前が空かないイライラがもったいない。

 レースのグラフィックは滑らかで美麗。横長のPSPの画面に、緑のターフと競走馬の勇姿が映える。コーナーを曲がるときに一瞬、馬の動きがぎこちなくなることがあるものの、それ以外は問題なし。レースシーンを省略して結果だけを見ることもできるが、思わず愛馬の走りを観戦してしまう。ハード初期のラインナップに、珍しく競馬ゲームが入った理由もわかる気がする。

 最新のデータに基づき、国内外の2700頭の競走馬、42人の騎手が実名で登場。種牡馬として、早くも「シンボリクリスエス」や「キングカメハメハ」も収録されている本格派。それでも省くところは省き、バランスよくまとまっているダービータイム。新ハード・PSPの特性をうまくつかみ、やり込み派にもライトユーザーにも向いたタイトルとなっている。

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騎手への指示画面。同時に表示される展開と馬の性格を参考にして指示を決める。多頭数のときは先行が圧倒的有利に思えるが……
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中山、東京、京都、新潟など、各競馬場が臨場感あるグラフィックで再現されている
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馬の躍動感あふれる動きが表現されたレースシーン。ゴール前での激しい競り合いは見物だ

PSPの無線LAN機能を生かし、広がる遊びの概念

 本編以外の目玉、対戦モードと予想モードも紹介しよう。まずは、アドホックモードに対応した通信対戦。最大9台を接続して、18頭の競走馬と競える。これは、競馬仲間やゲーム仲間がいる人にとっては魅力的な機能だろう。パスワードを取る手間もなく、集まればすぐに遊べて、場所を選ぶこともない。日時を決めて独自のルールを作れば、大会だって気軽に開けてしまう。

 さらに注目なのが、無線LAN機能を活用した実際の競馬とのリンク、予想モードだ。そこには無限の可能性が感じられる。

 予想モードは、無線LAN機能で土日に行われるJRAのレースの出走表をダウンロードし、仮想投票するモード。的中すれば本物のオッズに応じた的中額が牧場の資金に還元される。競馬ゲームとしてはスケールが大きい、画期的なモードだ。

 というわけで、発売日の直後、2005年4月23日(土)に行われたレースを体験した。予想モードでは、メニューを開いて「競馬予想」を選択し、接続方法を選んで設定すると対象レースのデータがダウンロードされる。手間も時間もほとんどかからず、比較的スムーズなのには驚いた。

 データの内容は、枠順、馬名と馬齢、騎手。過去の着順や詳細なデータは来ておらず、これだけで検討するのは難しいので、スポーツ新聞と照らし合わせて予想する。

 馬券は、1点1000円(ゲーム内資金)で1レースにつき最大10点。金額が限定されている中でいかにリターンを出すか、これが燃える。その日の対象レースは、東京、京都、福島のメイン、全3レース。とりあえず当てたいので、東京と福島のレースは手堅く単勝と複勝に絞りお茶を濁す。

 勝負レースは阪神のオーストラリアトロフィーだ。単勝1.6倍の圧倒的人気、武豊のサイレントディールを2着づけにして、1着を穴っぽいトーセンダンディとマイネルベナード、3着を実力派のチアズメッセージ、ツルマルヨカニセの三連単で挑む。一応馬連も押さえて投票完了。予想モードのマークシートにはボックスやフォーメーションがなく、多少苦労したが、無事に全点を入力した。投票可能期間は開催前日の午後8時から出走の10分前までだ。

 結果は東京・福島の単勝と、京都の押さえで買った馬連580円がヒット。10万馬券を取ったこともある穴党の筆者にしては(さりげない自慢)、ショボいリターン……。正直物足りないが、今回は記事にするので当たらなければ始まらない、と言い訳してみる。

 開催日の午後8時以降、もう一度アクセスすると、自動的に結果が照会され、実際のオッズに基づいて精算される。オッズは100円単位に切り上げで、ゲーム内資金への還元を選ぶと1000倍になって返ってくる。つまり、馬連580円は、600万円になるということだ。素直にうれしい。

 ちなみにさまざまなデザインのメンコなどを購入できる、資金とは別概念のメダルに変えるなら、馬連580円は600枚に化ける。

 予想モードは非常に将来性があるシステムだ。ゲームはどうしても閉じた世界であることが多い。しかし、本作では現実世界に開いている。今回は、まだ予想ゲームに留まっているが、JRAが蓄積している過去の膨大なデータとリンクできれば、面白いことになるのは明白だ。PSPが見せる大きな可能性の一端に触れた思いがする。

 今作の予想モードにしても、普段競馬をやっている身にもかかわらず、不思議と新鮮でワクワクした。成績がデータとして残るということもあり、「負けられない!」との気持ちが強い。財布のお金が減らないので、思い切って大胆な予想をするもよし、的中率にこだわるもよし、さまざまなスタンスが取れるだろう。

 今年から競馬法が開催され、これまでは禁止されていた学生でも20歳を過ぎれば馬券購入が可能になった。これからリアルな競馬にデビューするという人にも「ダービータイム」は入門編としていいかもしれない。

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対戦モードには、本体同士をアドホックモードで接続する「通信対戦」のほか、メモリースティックを持ち寄る「データ対戦」もある
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予想モードのサービスは、2006年3月31日までの予定。1開催日につき2〜3レースが対象となるようだ
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予想が的中すると、ゲーム内の所持金やメダルが手に入る。実際に現金が当たるわけではないので、念のため

やや下火の競馬ゲームを盛り上げる救世主となれるか?

 競馬SLGはすでに成熟したジャンルであり、コアなファンが抱く理想はかなり高い。ダービータイムも、そうした視点で見れば、脚質による有利不利の偏り、レースの中心となる人気馬が簡単に負ける、など、いくつかの改善点が存在する。

 それでも、PSP初の競馬ゲームであること。それから、通信機能を使った世界の広がり。これらを考えれば、上々の第1歩と言える。「ダービータイム」が“伝説の名馬”と呼ばれるのは、まだまだ先だろう。だが、栄光のゴールに向かって、まずはポーンとスタートゲートを飛び出したことは間違いない。

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ダービータイム
対応機種PSP
メーカーソニー・コンピュータエンタテインメント
ジャンル総合競馬エンタテインメント
発売日発売中(2005年4月21日)
価格5040円(税込)
(C)Sony Computer Entertainment Inc.


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