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上野の森美術館で天野喜孝展「マニエラ」――5月3日〜10日まで開催

5月3日から10日まで上野の森美術館で、ファイナルファンタジーシリーズのビジュアルコンセプトなどでも有名なアーティスト、天野喜孝氏の美術展が開催されている。

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日本では7年ぶりの大規模個展「マニエラ」(maniera)

maniera:マニエリスム(manirisme・仏)の語源。美術・文学などの様式の一。極度に技巧的・作為的な傾向をもち、時に不自然なまでの誇張や非現実性に至る。その背後に多く新プラトン主義などの観念的・主知的な意識がある。美術史では、ルネッサンスからバロックへの移行期に生まれ、ポントルモ・プロンツィーノ・グレコなどに見られる。マニリズモ。(三省堂「大辞林 第二版」より)

 アニメーションのキャラクターデザイン、装幀画、版画、ゲームや映画などのビジュアルコンセプトデザイン、アメリカンコミックス、そして舞台美術、陶芸と、現代アートの新たな表現を模索し、様々なメディアとのコラボレーションを展開し新しい可能性の扉を開く天野喜孝氏の美術個展が上野の森美術館で開催されている。

 大規模個展としては、1998年の「THINK LIKE AMANO」(上野の森美術館)以来の7年ぶりの開催であり、今や活動の場をアメリカやヨーロッパなど世界へ広げた天野氏の未発表も含めた作品を鑑賞できるチャンスとなっている。

 今回の個展では、厳選を重ねた初展示作品を含めた約70点もの原画が展示され、「THINK LIKE AMANO」で出品され7年ぶりに公開される3×16メートルの「New York Nights」や、1999年の第2回ニューヨーク個展「HERO」展の展示作品の一部が日本で初公開されたりと、天野氏の25年に及ぶ制作活動の一端を垣間見ることができる。


7年前にもここに展示された「New York Nights I」はやはり圧倒的。手前に見えるのは陶芸家叶松谷氏とのコラボによって完成した陶器

こちらも圧巻。1999年作、2×12メートルの油彩「Wild Lily」

 また、野菜の妖精を描いた「N.Y.SALADA」や、映画「花と蛇」のポスター「サンシュエル」の原画、同じく「花と蛇」の画集からインスピレーションを受け、今回のために制作された3部作(各120センチ×240センチ)も公開されており、また違った天野氏の活動が展覧されている。


淫靡ながらもファンタジーを感じられる作品

 そして見どころとも言えるのが、ファイナルファンタジーの世界を表現した11×5メートルの巨大インスタレーション。立体的に表現され「まるでジオラマ」の中にしるように感じられるこれらの作品は、セイコーエプソンの最新デジタル技術「ピエゾグラフ」とのコラボレーションで実現したもの。出力だけで数時間もかかり、天野氏自らも自分で書いたほうが早かったんじゃないかと言わせるほど、手間と時間とお金をかけたものとなった。

 天野氏のマネージャー鈴木さんは――「美術館でこそやるべきインスタレーションとして捉えてくれれば、コンセプトとしてもアートとしても成立している。堅苦しいアートではなく、絵の中に入って楽しめる一体型のアートなので親子で楽しんでほしい」と受け手と発し手が共にあるべき姿を語ってくれた。

 ファイナルファンタジー関連では、アメリカのゲーム雑誌「Erectoronic Gaming monthly」の表紙として描かれた「ファイナルファンタジーXI」の原画も注目されていた。


基本的には「FFXI」で構成されている。オープンぎりぎりで完成したとのこと

「Final Fantasy XI」2003年、756×560mm、アクリル

 ほかにも、天野氏ならではの生物のフォルムを持つ機械が跳躍している「フロントミッション」のコンセプトデザインや、映画・オペラ公演のポスター、ドリームワークスが権利を獲得した「ライオンボーイ」のアクリル画、「スーパーマン」や「バットマン」などのアメリカンコミックヒーローを描いたものなど、まさに多彩。1999年に刊行されたアメリカンコミック「The Sandman:The Dream Hunters」で、高い評価を得ている天野氏は、オリジナルのアメリカンコミックヒーローを生み出す企画も進行しているとのこと。当然、評価を受けた「The Sandman:The Dream Hunters」の一部も展示されている。


躍動感溢れる「フロントミッションオンライン」のコンセプトデザイン群

「The Sandman:The Dream Hunters」1999年、750×385mm、アクリル

会場では公式サイト内で発表されたオリジナル作品「Fantascope〜tylostoma〜」も上演されていた。虚空に彷徨う幽霊船から、男は700年ごとに地上に降り立つ。灰色に朽ち果てた都市で男が出会った女との因縁の物語を監督・木村草一、東映アニメーション製作のもと、画ニメ=Fantascope:tylostomaという映像作品として完成させた。画ニメとは“作家の空間を映像パッケージに収める”ことをテーマに掲げた新たな映像レーベルで、アーティストが描いた絵画を軸に、多彩な演出効果を織り交ぜ、その世界を最大限に表現するもの。声の出演は、天野喜孝氏ご本人をはじめ、杉本哲太氏など

会場出口では天野氏関連のグッズも販売。絵葉書やTシャツなど種類も多い

天野喜孝氏にインタビュー――スペシャルな人も乱入

 本日からの開催ということもあり、会場には天野氏ご本人も来場していた。そこでインタビューとあいなった。


天野喜孝。1952年静岡に生まれ。竜の子プロダクションで、人気アニメ「科学忍者隊ガッチャマン」「みなしごハッチ」「タイムボカンシリーズ」などのアニメ作品のキャラクター設定をした後、フリーとなり、雑誌・絵本等にファンタジー画などを発表

 今後書いてみたいモチーフなどは? との問いに天野氏は「いろいろあるんですけど、オリジナルで四畳半物語みたいなものを書きたいですね。もちろんファンタジー。まだ全然固まってはいないんだけど、2〜30分の映像作品で日本的な雰囲気を持った作品になると思います。記憶の中だけの少女などが登場するんですけど……まだ構想中です」と明かしてくれた。

 作品を書くにあたってのコンセプトの違いについて、兵器や生物が好きだと答える天野氏は、「ファイナルファンタジーとフロントミッションのコンセプトデザインを描くにあたっては、2つ比べて特に目に見える変化のようなものは意識していない。ただ、ロボットを描く時は生き物と思って書いています。表面が金属というだけで、中身は動物。今回、黒豹をモチーフにした5分の1の造形物を展示しているんですけど、本当は原寸大のロボットして製作し、会場を徘徊させたかったんです。メカというよりはサイボーグ、そんなイメージです。実現できなかったんですけど、どこか機械メーカーさん作ってくれないかなぁと思ってるんですけど……いかがですか?」と笑っていた。

 今回の展示物の中で、特に気にいっているものについては「花と蛇」の作品を挙げる天野氏。エロスを追求するという初めての経験に印象深かったとのこと。ここで話は「花と蛇」の話となり、団鬼六氏の話へと展開。偶然いらっしゃっていた団氏を交えて撮影となった。団氏も天野氏の「花と蛇:サンシュエル」を気に入っており、ファンタジーで描くエロスについて絶賛していた。


団氏もお気に入りの「サンシュエル」

最後は天野氏と団氏の両名でパチリ。まさか団氏にまで会えるとは思いませんでした

 ちなみに、今回の個展でも展示されている可愛い野菜の妖精たちを描いた「N.Y.SALAD」のアート展が日本橋高島屋7階 クロスロード7にて明日5月4日から5月10日まで同時開催される。入場は無料。

天野喜孝展「マニエラ」
会期2005年5月3日〜5月10日 10時〜18時
会場上野の森美術館
料金一般:当日1300円、前売り1000円
学生:当日1000円、前売り800円
小学生・中学生:当日700円、前売り500円
(C)Yoshitaka Amano
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