私が夢に見たマシンがついに登場する――J・アラードが情熱を注ぐ「Xbox 360」とは(2/3 ページ)
MicrosoftのチーフXNAアーキテクトであり、Xbox 360のハードウェアを統括するJ・アラード氏。彼がXbox 360についてひとたび語り出すと、その熱を帯びた言葉に、こちらの感情が吸い込まれていくかのような錯覚を覚える。“Xboxのエバンジェリスト”にXbox 360について聞いた。
HD時代ではドラスティックな変革が起きる
私はGDCで、HD時代のプラットフォームについて話した。聞いた人もいるかもしれないが、もちろんプラットフォームにとってハードウェアは必要だし、ソフトウェアを作るゲームクリエイターのおかげでハードは生かされる。しかしHD時代ではサービスこそが重要だ。これがあるおかげで、ゲームコミュニティに対して、この“全て”を体験させることができるわけだ。
ここで少し、HD時代におけるゲームについて考えてみたい。ゲームのコンソールにおける世代交代は、技術的な発展をなぞっている。
ゲームは、まずはアーケードから始まり、そして家庭に持ち込まれることになる。次に家庭の中では、2D時代から3D時代へと移り変わっていった。
2D時代と3D時代を比較してみたとき、ゲーム環境はかなり異なる。2Dの代表的なものは「スーパーマリオブラザーズ」だろうが、そこから「トゥームレイダー」に移ってきたと考えれば分かりやすい。最初はサイドスクロールから始まり、3Dになるとポリゴン処理やフリーカメラスクロールといった技術が加わる。メディアを考えてみても、2D時代はカートリッジだったのが、3D時代にはCD-ROMが中心となった。
これは簡単な変化のようにも思えるが、ゲーム産業にとっては、非常に重要な変化であった。なぜなら、カートリッジからCDへと移行することで、コストの削減が可能になったからだ。これはゲームパブリッシャーにとって大きな利点となった。
またそれだけでなく、クリエイターにとってみれば、本物の音楽を入れたり、「ワイプアウト」のようにリアルなサウンドトラックを作成したり、音声を入れたりといったことが可能になり、「ファイナルファンタジー」のような長編も作ることができるようになったわけだ。
入力環境を見てみよう。コントローラは、2Dでは(押しているか押していないかの)デジタル入力であったのに対し、3Dではアナログ入力が可能となる。「Halo 2」は、2D時代のコントローラーでは遊ぶことができない。ゲームの難易度を考えてみても、2D時代にあった「パックマン」はパターンで動くが、3D時代のHalo 2ではAIが利用されているなど、進化している。
また、2D時代で中心となっていたのはテクノロジーだった。8ビットのシステムから16ビットのシステムへ移行したりと、技術革新により進化していった。しかし3D時代では、ゲームの内容、つまり“クリエイティブ”が中心になっていった。ファイナルファンタジーや「ゼルダの冒険」、トゥームレイダー、Halo、「グランド・セフト・オート」といったゲームがそうだ。
Xbox 360ではゲーマーを中心に世界が構成される
では、HD時代のゲームについて考えてみよう。一番最初にユーザーが考えるのは、画面の大きさだろう。これまでの4:3から16:9へとゲームデザインが移行するからだ。そして720Pという解像度や、5.1chデジタルサラウンドなどといったことを、想像するわけだ。
しかし次世代のXboxでは、これらの点だけでなく、ほかの違いにも目を向けてほしいのだ。CDやDVDを使うだけでなく、インターネットを使ってゲームを直接家庭に届けたりという新しい試みを、テレビに負けないくらいのデイリーベースで行っていく。カートリッジからCDに変わったときのような、大きなビジネスモデルの変化が、メディアやクリエイターにもたらされることになる。
HD時代の入力環境も、デジタルからアナログへ変わっていったように、アナログに加えて音声や映像が加わるようになる。いまでは、昔のような音源のゲームをプレイしてもつまらないのと同じように、今から5年後には、ゲームをするときには音声と映像がなければゲームではない、という状況になっているだろう。
2D時代の“パターン”から3D時代の“AI”に移ったように、HD時代では“HI”(Human Intelligence)が関わってくるようになる。今度はプログラムされたものを動かすのではなく、人間の知能が、ゲームをプレイする際に大きな役割を果たすわけだ。そこでは、ゲームをプレイする際の中心にあるのは、クリエイターが表現したコンテンツだけでなく、実際にゲームをする、ゲーマーだ。
そこで、次世代Xboxのネーミングも、HD時代を見据えた名称になっている。Xenonが3D時代の延長にあるならば「Xbox 2」とすればよい。しかし次世代Xboxは“ゲーマーが中心にあるHD世代のマシン”である。それが、次世代Xboxの名前を付けるときの動機付けとなっている。このため、次世代のXboxは、ゲーマーが中心にいるという意味も込めて、「Xbox 360」となったわけだ。
これは、「全てのものがあなたの中心にあり、360度、あなたの周りを回っている」という意味から付けられた。このネーミングには我々は満足しているが、もちろんこれ以外にもさまざまな名前の候補が挙がっていた。
“360”という名前を聞いたとき、ある人は観覧車を思い浮かべたし、スノーボードで「360」を決めたときのことを思った人もいるし、飛行機の旋回や結婚指輪、レコードやiPodなどを考えた人もいる。つまり、私たちが作り上げたイメージだけでなく、ゲーマーが個人的に体験したことや感情移入できるようなこと、喜びをもたらしたことを、それぞれが思い浮かべてくれたわけだ。
これはまさに、我々がこの製品に対して「こうであってほしい」と願ったことでもある。我々は、この製品がパーソナルなものであり、感情を呼び起こすものであり、喜びをもたらしてくれるものであることを望んでいるからだ。
Xbox 360のデザインは2社のコラボレーション
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