日本のゲーマーが世界へ羽ばたく日は近い? World Cyber Games2005日本予選リポート:東京ゲームショウ2005――World Cyber Games2005日本予選(2/3 ページ)
「ゲームプレイで大金を稼ぐ」――そんな夢のようなイベントが今、世界各地で開催されている。その中で世界最大規模のものが、予選開催国世界63カ国、総予選参加人数100万人を数える「World Cyber Games」だ。今回は日本であまり知られていない「ゲームトーナメントビジネス」を取り巻く企業の世界を紹介する。
―― 4dNのメンバーは普段どんなことをしているんですか?
Nao-K 現在所属している学生メンバー以外は、自分たちそれぞれの仕事をしながら、自宅でネットワークのプレイを行い、試合前、あるいは遠征時に集まってLAN環境下、つまり試合と同じ環境を組んでプレイを行います。
中国遠征の前は、全員で東京に集まって、インターネットカフェで一週間くらい練習を繰り返しました。
選手が自宅にいるときは、毎日2〜3時間は「aim」マップという、四角い箱の中に、障害物が点々とあるシンプルなマップで、1vs1の照準練習を行うことを義務づけています。ありとあらゆる条件下で、1vs1の戦闘を制することができるようになってもらいたいということで、日々の練習を行ってもらっています。
メンバーが集まったときの練習は、試合で採用されるマップの研究がメインになります。どこの壁が銃弾を通すのか、ゲーム中の進行ルートの模索、手榴弾の投げ方の練習、こうった地味な作業を延々と行います。
また、Counter-Strikeのプレイレベルの高い台湾や韓国のトップチームと交流をしているので、皆が集まったときは彼らとオンラインで対戦をしてもらったりしていますが、やはり回線速度の問題でラグが発生してしまいます。オフラインで行う大会とはどうしても環境が異なってしまいますからそこがなかなか難しいところです。
―― 現在日本最強という立場にいる4dN.PSYMINですが、その強さの理由はどこにあるのでしょうか?
Nao-K それぞれの選手のモチベーションの高さですね。インターネット上で配布されている海外のトッププレイヤーたちのリプレイファイルをありとあらゆる角度から検証しています。当然ながらほとんどのサイトが英語ですが、それを理解するために選手たちは自発的に英語を勉強しています。
もちろん、もともとのプレイスキルも重要ですが、その後の環境を整えるのも大事ですし、Counter-Strikeはチームプレイを行うゲームなので、コミュニケーションをいかにとるか、も大事です。
4dNのリーダーは現在19歳と、かなり若いですが、年上のメンバーに対しても、練習中、試合中の悪い部分はしっかりと指摘します。なぁなぁでやっていては絶対に勝てませんから。4dN.PSYMINの「絶対に勝つぞ」というモチベーションの高さが強さの秘訣かもしれません。
―― コンシューマと違って、マシンスペックによって「強さ」の差が出てくるPCゲームですが、普段の選手たちのマシンはどのようなものを使っているんですか?
Nao-K 実は選手によってばらばらですね。一番低スペックだと、ペンティアムIIIの500Mhz程度でプレイしているメンバーもいれば、一番上ですと、最新最速のマシンを使っているメンバーもいます。正直なところ、全員分を統一したいんですが、日々進化するマシンを、企業として常時提供していくのはなかなか金銭的に難しいところがあります。
―― WCG本戦が11月にありますが、これから先の4dNの予定は?
Nao-K まずはWCGにでて、それから11月の後半に予定されている「CPL冬季大会」の日本予選参加、来年韓国で行われる「WEGシーズン4」の参加を予定しています。そして、来年は4dNの最終目標である「CPL夏季大会」に照準に合わせています。
WCGの目標はもちろん優勝ですが、今回のCounter-Strikeは僕たちがメインでやっているバージョン(Counter-Strike 1.6、WCGは最新バージョンのCounter-Strike:Sourceを使用して行われる)ではないんです。マップオブジェクトの違い、手榴弾の軌道の違い、集弾率の違いがあるので、他のチームがどのような状態で出てくるのか全く未知数です。これから本戦までの2カ月間でどこまでそのバージョンにメンバーたちがあわせられるか、というところが課題になるでしょう。現在、世界中のプレイヤーがバージョン1.6でプレイしているので、おそらくWCG本戦では、大波乱が起きると思います。
ただ、来年のCPLがまた、バージョン1.6で行われることになっていて……そこも難しいですね。現在多くのプレイヤーが支持しているバージョンで大会を行わないというところで、運営側と選手の温度差が若干でてきているのかもしれません。
いずれにせよ、まずは目前に迫ったWCG2005のグランドファイナルに向けて、最終調整に入ります。結果をご期待ください。
日本に「e-sports」の波を。WCG2005日本予選プロデューサー安氏インタビュー
2003年よりWCG日本予選の運営を行っている株式会社テクノブラッドプロデューサーの安氏にお話を伺った。「e-sports」を軸に、新しい形でゲームの世界が広がる、と言う安氏の見る将来とは。
―― 現在、WCGの他にCPL(Cyberathlete Professional League)などのPCゲームイベントの運営も行われていますが、現在「ゲームイベント運営」というビジネスは成立しているのでしょうか?
安 正直に申し上げて昨年、一昨年は非常に苦しい時期でした。しかし、「きちんとイベントをやっている会社」という信頼感をスポンサー企業さんに持って頂くことができて、今年度のイベントの運営費はスポンサーさんから協賛をいただいてまかなっています。
多くの企業の方はWCGやそのコンセプトに対する興味が非常に高くて、現場の担当者レベルでは大いに盛り上がるんですが、いかんせん認知度が低いために、なかなか具体的なビジネスのお話までは到達しない。それでも、そういった中で今年は東京ゲームショウでWCGの予選ができたというのは非常に大きいですね。
―― 今回のWCG日本予選では本戦と同じCounter-Strike:Sourceが採用されました。しかし、他の国の予選では、プレイヤーに人気のあるバージョン1.6を使用していた、と聞きますが……。
安 今回、日本でもメジャーな1.6を使用せず、Sourceでの日本予選が行われた、ということで選手たちには不満があったと思います。しかし、今回、WCG本部に「絶対に本戦のバージョンはSourceである」ということを何度も確認した上で、本戦と同じバージョンで日本予選を行うということにしました。
弊社としては、Sourceで本戦をやるのに、予選が違うバージョンであるというのは問題ではないかと。1.6の強さがそのままSourceの強さと言えるわけではないだろう、ということで、そういうチョイスをしました。
―― また、今回、日本でははじめてコンシューマのトーナメントがありました。
安 こういったゲーム大会を開催するにあたって、まず、日本がゲーム大国といわれて久しいにもかかわらず、今までに一本も日本のタイトルが採用されていない。これが日本におけるWCGの牽引力が低い理由だと思っているので、なんとか日本のタイトルを採用してもらいたいと働きかけていました。
また、WCGの採用タイトルがPCゲームメインになっている中で、日本における参加選手数を増やすというところで、コンシューマのプレーヤーにもこういう世界があるということを伝えなければいけないだろう、という気持ちもありました。
―― 結果として、予選参加人数が200名近くになりました、手応えはいかがでしたか?
安 やっぱり、日本はコンシューマが強い。今回の東京ゲームショウの入場者数を見ても、ゲームをプレイする人たち、興味がある人たちが日本にはこんなにいるんだ、と。そういうところで、日本のプレイヤーをどんどんこういったイベントに取り込んでいきたいと思っています。
我々のイベントは「ゲームのプロモーション」ではない
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