アクションと格闘ゲームの絶妙なブレンド。アクション派の秋はこれでキマリ!:「アーバンレイン」レビュー(5/5 ページ)
正義なき街に乗り込んだ1人の男。待ち受ける幾多の強敵に対する武器は、己の拳のみ。「鉄拳」、「ソウルキャリバー」の制作陣が作り出した、エキサイティングでクールな世界。シンプルなシステムが生み出す、ホットな駆け引きがプレーヤーを魅了する。
観戦するだけでも楽しいマルチプレイヤーモード
では最後に、後に紹介すると述べたマルチプレイヤーモードについて説明を行おう。本モードでは、その時点で使用可能になっているキャラクターから、自由に使用キャラクターを選んで、さまざま試合を行うことができる。格闘ゲームにもっとも近い1対1の対戦から、2対2のチーム戦、特定のオブジェクトをいかに速く破壊するかなど、一風変わった勝利条件の試合も用意されている。
中でも、とりわけ面白いのが、多人数格闘アクションの魅力を凝縮した、4人での乱戦だろう。このモードは本当に熱い。自分で参戦するのももちろん楽しいが、全キャラクターをコンピュータ操作にし、観戦しているだけでも十分面白い。同時に4人を動かしているというのに、その動きのなめらかなこと! まるで異種格闘戦の中継でも見ているかのようだ。
まだ使い慣れていないキャラクターの動きをチェックしたり、乱戦での戦い方を研究したりといった点でも、役に立つ。組み合わせを変えて、何度も戦わせてみると、相手によって各キャラクターの勝率がかなり変わってくることにも気づくだろう。このモードが全員コンピュータ操作可能になっているのは、制作陣の自信の現れなのかもしれない。実際、それに見合う素晴らしい完成度なのだ。
4人対戦では、組み合わせで試合展開が大きく変わってくる。写真はボクシング、カポエラ、カンフー、レスリングの4人。格闘タイプが異なっているので、どこまで自分のスタイルで攻められるかが勝敗を分けるだろう。
格闘ゲームの閉塞感を打破するスタッフの意気込み
今から10年ほど前、格闘ゲームはものすごい繁栄を遂げていた。にも関わらず、それは急速にしぼんでしまった。その最大の理由は、複雑化していくシステムに新規のプレイヤーが参入できなくなり、しかもゲームの性質上、弱者が強者に勝つことはほとんど不可能だったため、現役プレーヤーもどんどん減っていったことが挙げられる。悲しいかな、今では完全にマニアの領域と言っても過言ではないだろう。
鉄拳、ソウルキャリバーを作ってきたスタッフには、それが良く分かっていたのではないか。だからこそ、そこで採られた選択は、格闘ゲームの持つ駆け引きの魅力を残しつつも、もっと不確定要素の強い、すなわち強者が絶対勝つという法則を崩すことだったのではないだろうか。
アーバンレインでは、特に複数での乱戦となると、弱者が最終的に勝ってしまうこともあり得る。実際のバトルロイヤルなどでもよく見かけられるが、強者が最初に集中攻撃を受けて倒されてしまうことは珍しくない。とはいえ、一定の熟練がないと勝てないのもまた確か。すなわち、運と実力のバランスだ。
これまでの格闘ゲームは、言ってみれば将棋や囲碁、あるいはチェスのようなゲームだった。しかし、アーバンレインはポーカーや麻雀のように、初心者が思わぬ展開によって名人級の強者を破るゲームになっている。これならば弱者も光明を見出せるし、強者は多少の運などでは左右されない、絶対的な強さを求めて鍛錬に励める。
格闘ゲームにアクションゲームの要素を取り込んで、多人数格闘アクションというジャンルを打ち出したアーバンレイン。これは格闘ゲームが陥ってしまった閉塞感を打破する快作だ。アクション好きなら見逃す手はない。さあ、一刻も早くグリーン・ハーバーへ出立するのだ!
アーバンレイン | |
対応機種 | プレイステーション 2 |
メーカー | ナムコ |
ジャンル | 多人数格闘アクション |
発売日 | 発売中 |
価格 | 7140円(税込) |
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