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コンテンツよりもサービスに注力――スクエニ中間決算説明会

スクウェア・エニックスとタイトーは、経営統合が完了したことをふまえ、2006年3月期の中間決算と今後の経営戦略に関する説明会を開催した。

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 2006年度3月期の中間決算説明会は、TOBにより2006年9月28日付けでタイトーがスクウェア・エニックスの連結子会社となったことをふまえ、両社合同で行われた。

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 まずタイトーだが、ゲーム施設運営事業で直営既存店舗の売り上げが前年同期比93%と伸び悩んだことや業務用筐体の出荷が伸び悩んだこと、それに加えてパチスロ機のOEM生産が受託できなかったことの影響により、上期の売上高は414億8600万円に。中間期に集中して出店したことや、メダルゲーム機なへの投資拡大による減価償却費の増加により、経常利益は7億7900万円となった。

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タイトーの西垣保男社長

 スクウェア・エニックスについては、オンライン事業を支える「ファイナルファンタジーXI」が堅調であるほか、9月に発売された、「ファイナルファンタジーVII アドベントチルドレン」の好調により、売上高は前年同期比11.1%増の270億9100万円に。ただし経常利益は27億3000万円(前年同期比55.5%減)、中間純利益は22億200万円(同29.7%減)となった。

 ちなみに現状におけるソフトウェアの売上本数だが、「ロマンシング サガ −ミンストレルソング−」が45万本、「ドラッグオン ドラグーン2 封印の紅、背徳の黒」が21万本、「グランディアIII」が25万本などとなっている。

 「タイトルがどうしても下期に集中してしまうため、上期はゲーム事業がふるわなかったが、通期で考えれば計画通り」とスクウェア・エニックスの和田洋一社長。12月22日に発売を控えている「キングダム ハーツII」に加えて、北米で発売された「ドラゴンクエストVIII」が好調とのことだ。

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 「最短で経営統合するためにTOBという手段を使ったが、不成立になる可能性も高い、リスクある手法だった。このため合併後の方針については、経営レベルでも限定した話し合いしか行われていなかったが、TOBも終えた現在では各事業セグメントごとに話し合いを始めつつある」と和田氏。

 合併でのシナジー効果を問われた質問では「それぞれの効率化をまじめに考えていくことが大事なのであって、奇策はない。また、結果としては何らかの形で表せると思うが、シナジーを考えすぎて、それまでの利益や効率を失う“シナジートラップ”に陥るのもよくないと思う」と強調した。

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スクウェア・エニックス 和田洋一社長。「北米のドラゴンクエストVIIIはボイスを入れたりアイコン表示を取り入れたりと、アメリカ仕様になっている。これが好評だったら日本でもボイスを入れたドラクエを作ってみようかな。冗談ですけど」

 また和田氏は今後の戦略について、スクウェア・エニックスおよびタイトーが指向するのはコンテンツよりもサービスであると語る。「ユーザーはすでに端末やキャリアなどの環境に依存しなくなっている。コンテンツにロイヤリティがあるようにも見えるが、ネットワーク社会ではユーザーが供給側になってしまうので、それだけではユーザーを捕まえきれない。文字通りユーザーをダイレクトに捕まえることが大事だ。コンテンツ産業かサービス産業かといわれれば、サービス産業へシフトしていかなければならない」(和田氏)。

 ただし、これまで語られてきたような「1on1マーケティング」のようなことではなく、“ユーザーのコミュニティ”を捕まえることが大事だ、と和田氏。コミュニティをどうサポートするかを考えて、事業の骨格を考えているとのこと。具体的な例は挙げられなかったが、今後は「コンテンツ層」についてはカジュアルゲームやマンガ・アニメといった分野のサービス化に加え、ゲーム機を指向する「プラットフォーム層」についてはクロスプラットフォーム化を進めるとともに、ゲームに関心のない「ユーザー層」については、ユーザー館のコミュニティをどうサポートするか、またコミュニティへの帰属意識に訴えかけて収益を上げていくとのこと。

 「ゲームとは関係ないところと何で提携するんだろうとか、この会社が関連会社になるのだろうと思われるかもしれないが、理論としてはこの3つの層を念頭に進めていく」(和田氏)。

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「ゲームについてはクロスプラットフォームを指向しなければいけないので、そのためのミドルウェアの開発も重要だと思う。この技術を持っている仲間を増やすこともある」(和田氏)

 また次世代機に関する質問について和田氏は、「プレイステーション 3について言えば、能力のどこを活用するかが大事だろう。テクスチャの張り方をプレイステーション 2と同じにしていたら、それこそ開発費が2〜3倍になってしまう。AIを活用するとか、少ない絵素材を多く見えるようにプログラムするとか、いかにゲームデザインで勝負するかが大事だと思う」と語る。

 和田氏はまた、ファミコン発売からの10年、そしてプレイステーション発売からの10年と比べて、これからの方向性は全く異なると強調する。「次世代については全く新しいエンターテインメントを考えないとダメだろう。今後はネットワークでなにができるかが重要になると思う。過去10年間のように“絵”がどう変わるかだけを考えていては、開発コストの算出は不可能だ。この試行錯誤をしているのが現状」(和田氏)

 このため、今後は作り方やゲームデザインもかなり変化してくると考えているようで、その上でマーケットが創造されていくだろうとのこと。「どのハードでどの性能を引き出すか、またプラットフォームをクロスすることでどのようなサービスが生み出せるかを考えることに注力している段階である。プラットフォームごとにパイプラインを考えることはしない」(和田氏)

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