Virtual PCで空母戦ウォーゲーム「CARRIER STRIKE」を復活させる:勝手に連載!レトロ「PC」ゲームが好きじゃー(4/5 ページ)
「Ultimaはどうしたっ」という声を無視してひたすらレトロPC「ウォー」ゲームを復活させるこの連載。ついに日本男子お待ちかねの名作空母戦の登場である。今回はSSIゲームを起動するときに引っかかる「Virtual PCのサウンド周り」についても解説しよう。
「戦力の不確実性」を再現するキャンペーンモード
と、航空作戦についてはかなり細かい事象までゲームの中に組み込まれており、かつゲーマーも介入できるようになっている。空母における航空機遷移のルールはボードウォーゲームでも一般的であるが、ゲーマーの立場を再現する、という視点からすれば、艦隊司令長官がそんなに細かい指示を出せるのは不自然、ということにもなる。
一方で、「空母戦で注目されるポイントはどこか」ということを考えたとき、航空部隊の運用という要素は優先順位が高くなる。ミッドウェー海戦でよく聞かされる「運命の5分間」(海戦の経過を見ると、この言葉がもつ意味というのは、それほど大きくはないのだが)を覆すことに注目するゲーマーには、航空機の運用が細かくできるシステムが求められるだろう。逆に、CARRIER STRIKEの水上戦闘処理はシンプルにまとめられ、戦闘は自動で処理されゲーマーは水上戦闘において戦術的な指揮ができない。
CARRIER STRIKEにおけるゲーマーの視点、を考えたとき、ユーザーは艦船部隊の指揮官という立場になる。陸上部隊の航空機はPCによって動かされる。2〜3日間という「空母戦のハイライト」において艦船部隊のみを指揮するゲーマーに対して、「立場を逸脱して」航空機を細かく運用できるのは、空母戦ゲームデザインの「詳細と省略のバランス」からいって妥当なものではないだろうか。
いま、「2〜3日間という空母戦のハイライト」と述べた。CARRIER STRIKEにはこの「空母戦のハイライト」を再現するシナリオが用意され、プレーヤーはその中の1つを選んでゲームを始める。有名な「ミッドウェー」をはじめとする実際に発生した空母戦や、1943年にソロモン海域で起こったかもしれない仮想戦など「6本」のシナリオが用意されている。ルールに慣れたゲーマーなら1つのシナリオは4〜5時間で終了する。
しかし、1つのシナリオを単独で終了させるのがCARRIER STRIKEの本当の姿ではない。シナリオは単に「ゲームの開始時期」を決めるものにしか過ぎない。シナリオが1つ終わると、画面に「NEW BATTLE」という項目が出現する。これを選択するとCARRIER STRIKEの「本当の戦い」である「キャンペーン」モードが開始する。
キャンペーンモードでは、シナリオ開始時点(Coral Seaシナリオなら1942年5月7日)から1カ月に1回のペースで発生する空母戦を戦い続けていく。登場する兵力はそれまでの海戦の結果を踏まえて「勝手に」決定され、作戦の目的と艦隊編成、配置、それぞれの任務も「勝手に」に割り振られる。ゲーマーは「軍令部と連合艦隊に頭が上がらない艦隊司令長官」の悲哀を知ることになる。
キャンペーンでは海戦の損害がその後の戦いで登場する兵力に影響してくるため、「残存兵力による破れかぶれの敵艦隊突入」ということはやりにくい。艦上機を大量に失うと、航空部隊の練度もガクッと下がってしまうため、例えば空母戦ウォーゲームの対人戦でたまに見かける「片道特攻でやたら遠方から攻撃してくる日本軍」というのも上策でない。
しかし、それ以上に、空母戦ゲームにとって重要な「敵の兵力と目的が分からない」状況が再現される意義は大きい。日本でミッドウェー海戦で敗れた原因は「運命の5分間」ではなく「第一機動部隊司令部が敵空母の存在を想定していなかった」ことにあるのは有名な話だ。CARRIER STRIKEのキャンペーンモードは「まったく空母がいない」状況は再現できないが、それでも「敵の空母はどこに何隻いるのか」が分からない手探りの状態で索敵機を飛ばし、敵襲を受けた硝煙煙る脳内艦橋で「敵の空母は何隻残っているのか」とつぶやくことになる。
戦力の不確実性を再現するキャンペーンモードは太平洋戦争の過程を正確に再現するものではないが(それでも大筋は実際に起こった過程をふんでいく)、「空母部隊司令官が知りえる情報」の再現という意味では実に優れたデザインだと思える。これがCARRIER STRIKEの最も評価できるところではないだろうか。
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