「GTA」とは似て非なる新世代エンターテインメント:「龍が如く」レビュー(2/4 ページ)
“伝説の極道”と呼ばれた男の、暴力と哀愁に満ちたドラマ。まさに、大人のためのエンターテイメントが誕生した! ここでは、ヤクザ社会という、特殊な舞台を理解するための解説も交えつつ、熱き男が繰り広げる熱き闘いの魅力をたっぷりとご紹介する。
100億の行方をめぐって、幾多の野望が激突
一馬が出所してきたのに時を合わせるかのように、彼が昔所属していた組織・東城会で大きな事件が持ち上がる。組織が隠し持っていた、100億という巨額の資金が何者かに盗まれてしまったのだ。しかも、その犯人もわからず、金も戻らないうちに東城会を仕切る会長が殺害されてしまう。
ここでちょっと解説すると、いわゆる暴力団というのは、一定のシマを持っていて、そこからのアガリ(みかじめ料)で食っている。基本的に地域に根ざしていて、そこから外へ広がることは少ない。とはいえ、金を蓄えると、よその土地に出ていって勝手に他人のシマを奪おうとする者がでてくる。そうしてあちこちにシマを持つ暴力団が誕生する。これが広域暴力団と呼ばれるものだ。
ただ、誰もがそうだが、無闇やたらと血を流すことは望まない。無傷でアガリが入れば、それに越したことはないのである。そこで力のある暴力団が弱小の組に一定の権力を認めながら、支配下に置くということが頻繁になってくる。これが系列化である。例えば、戦国時代の大名と地方領主の関係に酷似している。地方領主は先祖代々の村を支配していて、そこの年貢で食っている。強い大名が出てきたら、そこの臣下になって、年貢の一部を治め、戦争時に兵隊を出すことを約束して、その代わり、自分の支配権を認めてもらう。暴力団もこれとまったく同じである。
ここで出てくる東城会というのは、そういう大小さまざまな暴力団を系列化した、大組織である。ところが、100億という軍資金が消えた。無論、これは傘下の組織から献上された上納金である。はいそうですか、で済まされる金額ではない。そしてその混乱の最中にトップが殺された。大混乱の勃発である。野心ある連中は、誰もがこの100億を狙う。事実上、この巨額の金を得た者が、次代の東城会を支配できるのは明白だからだ。
東城会傘下の組織の中でも、トップクラスの武闘派として知られる嶋野。風間と並ぶ、東城会の実力者だが、両者の折り合いは悪い。一馬が殺したことになっている組長は彼の義兄弟だったので、一馬に対して個人的な憎悪も抱いている
一馬が出会うことになる遙という少女は、この100億の行方に関する重要な情報を持っているため、あらゆる組織から狙われることになる。それを一馬は最愛の人の肉親であるという理由だけで守ろうとする。“大ヤクザ組織VSたったひとりの極道”。これが龍が如くを支えるシナリオの根幹である。
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