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「GTA」とは似て非なる新世代エンターテインメント「龍が如く」レビュー(4/4 ページ)

“伝説の極道”と呼ばれた男の、暴力と哀愁に満ちたドラマ。まさに、大人のためのエンターテイメントが誕生した! ここでは、ヤクザ社会という、特殊な舞台を理解するための解説も交えつつ、熱き男が繰り広げる熱き闘いの魅力をたっぷりとご紹介する。

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緻密に作り上げられた大歓楽街で存分に楽しもう

 ところで、いくら強いとはいえ、ケンカばかりの毎日じゃ心が荒むという人もいるだろう。だが、ご安心あれ。疲れた男を癒すことにかけて、龍が如くはこれ以上はないほどの充実ぶりを誇っているのである。

 発売前から、なにかと話題になった、物語の舞台・神室町。ゲームが進むと、横浜へ出張したりすることもあるのだが、物語の大半は、一馬のホームタウン・神室町で繰り広げられる。そこには組の事務所やチンピラたちのねぐらをはじめ、ケンカの舞台となる場所が多数用意されているのだが、街にあるのはそれだけではない。

 例えば「食」。関連する店舗を挙げると、牛丼屋、喫茶店、アイスクリームショップ、ハンガバーガーショップ、ラーメン屋、バーなどがある。

 例えば「遊」。ゲームセンター、パチスロ、バッティングセンターなど。しかもゲームセンターならUFOキャッチャーができたり(さすがはセガのゲーム!)、バッティングセンターなら、規定数以上のホームランを打つと景品をくれたり、といったミニゲームが楽しめるようになっている。

 シナリオが進んで、特定の条件を満たすと、ブラックジャック、バカラ、ルーレットができる裏カジノ、己自身の肉体をかけてファイトマネーをもらう地下闘技場、博徒御用達の賭場(丁半博打)など、遊びきれないほどの娯楽も登場してくる。

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コンビニやドンキホーテ(こちらは実名で登場)などもあちこちにあるので、ちょっとした買い物には便利だ。コンビニでは、すぐ食べられる品が数多く並ぶが、こうした食品類は、ケンカの最中に失った体力を回復させる効果があるので、買っておくと重宝する。なお、大手酒造メーカーや雑誌社との提携により、実在の飲料や雑誌も売られている。宣伝時に話題になったグラビアアイドルの写真などは、こうした雑誌に掲載されている

 そして、男にとって最大の楽しみ「女」。ビデオショップ(ただしヤバい映像はナシ)、ショー付きのランパブ、キャバクラ、マッサージ(健康的なマッサージのみ)などなど。そのものズバリ、ピンク通りという道を中心にこれらの店舗が並んでいる。キャバ嬢とは個人的に仲良くなったりするとメールが送られてきたりもする。ケンカで相手から迷惑料をせしめたら、彼女たちに癒してもらってまたケンカへ……これでは極道の名が泣く気もするが、そのへんはプレーヤーの裁量次第といったところだろう。硬派を自認する人はいかなければいいのだ。

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楽しいことも多いが、そこはやはり夜の街。危険な誘惑もいっぱい転がっている、ついつい調子に乗って、ひどい目に遭ったりしないように。「君子危うきに近寄らず」だ。とは言え、だまされてやるのも男の甲斐性のうちか!?

GTAシリーズとは本質的に異なる、龍が如くのゲーム性

 リアルに作られた街と、犯罪者の主人公という組み合わせを聞くと、どうしても「グランド・セフト・オート」(以下、GTA)シリーズに似ている、と感じる人がいるだろう。だが、この両者はそうした上辺の類似性とは裏腹に、ゲーム性はかなり違っている。

 GTAシリーズの場合、主人公は不特定のチンピラであり、それ以上の存在ではない。シリーズの中には主人公に名前がついている例もあるが、それでもそこに主人公の人生観といったテーマ性はない。

 詳しく語るのは控えるが、GTAシリーズは、“リアルに作られた街をいろいろな車で走り回る”ということから出発している。つまり、発想の原点がドライビングシミュレーションと同じなのである。そこから、いろいろな車を次々乗り換えさせたいというコンセプトが生まれ、主人公が車泥棒であるという基本設定が生まれる。そして、車泥棒である以上、彼はチンピラであって……と繋がるのだ。

 対して、龍が如くでは、まず初めに“極道を描く”という観点から出発している。そしてその拠点として、日本最大の歓楽街である新宿歌舞伎町をベースに、神室町という架空の舞台を作っている。完成した姿は一見似ているが、両方をプレイすれば、底に流れているゲーム性が異質であることは、すぐに気づくだろう。

 この両者に関しては、どちらが優れているという比較は意味がない。それぞれが別の物差しで計るべき作品なのだから。

 龍が如くの遊び方は、プレーヤーの数だけあるといっていい。各種のギャンブルやバッティングセンターなどのミニゲームは、実際やってみてもかなりハマる。好きな人なら、何時間でも遊んでいられるだろう。

 しかし、龍が如くの主軸は、あくまで極道のドラマなのだ。桐生一馬という、ひとりの男の闘いこそが要なのである。メインとサブという観点で言えば、両者の立場が逆転することはあり得ない。だが、かといって制作者たちが意識した、たったひとりの極道以外は受けつけない、といった偏狭さとも無縁なのだ。

 人気作家・馳星周氏の監修を仰いでまで描き出した極道の物語を、ひょっとしたらそれをすべて崩壊させてしまうかもしれない、ありあまるほどの副次的な面白さと混在させたこと。この思い切った姿勢こそが龍が如くの最大の特徴なのだと思う。硬派を貫くメインストーリーと、時に大バカなギャグにもなってしまうサブイベントは、同じゲームとは思えないほどのギャップを示すことすらある。それを容認したことで、龍が如くは、混沌とした膨大なエネルギーを獲得し、個性的なゲーム性を生み出すことに成功しているのだ。

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龍を彫った一馬と鯉を彫った彰。龍は、中国の大河・黄河を意味し、鯉はその黄河にある竜門を超えて、成長していくという意味を持つ。この刺青は、一馬と彰、ふたりの関係を象徴する。一馬を超えようともがく彰。それを受け入れつつ、跳ね返そうとする一馬。ふたりの極道の闘いは、どんな終幕を迎えるのだろうか?
龍が如く
対応機種プレイステーション 2
メーカーセガ
ジャンルアクションアドベンチャー
発売日発売中
価格7140円(税込)

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