小畑さんが描く華やかでポップな外見とは裏腹な、本格志向の「義経」でブームを締めくくる:「義経紀」レビュー(4/4 ページ)
大河ドラマの影響か、源平の争乱が各方面で話題を集めた2005年。ゲーム界において、そのトリを務めるのが、この「義経紀」だ。人気漫画家・小畑健さんのキャラクターデザイン、さらには田中敦子さんや大塚明夫さんをはじめとする実力派声優の演技を得て、悲劇の将の半生が華麗によみがえる。
勾玉を集めて、特殊攻撃を発動させろ
仲間たちは、それぞれ「借神攻撃」と呼ばれる、固有の特殊技を持っている。これを使うには、ステージにセットされている宝箱から「勾玉」を回収しなければならない。勾玉は何個も置かれているわけではないので、乱用は控え、ボス戦など、ここぞというタイミングで使う切り札的技である。威力も高く、複数の敵を巻き込む攻撃を繰り出すので、乱戦でピンチになったときに緊急避難にも使える。
勾玉にはもうひとつの使い道がある。それが義経と仲間の合体攻撃である「連携必殺技」だ。ストックできる勾玉の最大数は3個なのだが、連携必殺技の発動にはそのすべてが必要となる。当然、各ステージ中でもごく限られた回数しか使えないが、それだけにビジュアル的にも威力的にも最大級の効果が期待できる。文字通りの必殺技だ。
キャラクタータイプと敵との相性、作戦指示、勾玉を使った特殊技……。こうした要素が仲間たちの存在を引き立ててくれる。クリアしたステージが増えてきたら、それぞれの仲間と、いろいろなステージに挑戦するのも楽しいだろう。試行錯誤しているうちに、自分なりの戦い方も確立されてくれば、その分、戦いがいっそう激しくなる終盤のステージも恐れることはなくなる。
歴史絵巻風の演出とドラマチックなムービーにも注目
幾多のシステムを盛り込んだ義経紀。それだけでもゲームとして十分な価値はあるが、加えて見逃せないのが、ドラマチックな演出だ。最も今日日、“美麗なムービーなど珍しくない”と思う人もいるかもしれない。確かにただ綺麗なだけでは別に魅力とはならないだろう。
しかし、そこに演技の良さが加わればどうか。本当に実力のある声優が競うと、どれほど聞き応えのある内容になるか、義経紀はその好例だ。特に、キャリアの中でも珍しい男性役にチャレンジしている田中敦子さんの義経と、大塚明夫さんの弁慶の演技の見事なこと。
三郎役の黒田崇矢さんも、主君への忠誠と世の中の裏まで知り尽くした影の部分を同居させた、素晴らしい三郎を聞かせてくれる。平清盛をはじめ、敵役もいいし、各ステージを繋ぐ絵巻風インターミッションの重厚感も、時代劇らしい高揚感を盛り上げてくれる。
年末商戦という、業界がもっとも華やぐ時期にリリースされた義経紀。そこにはゲームを作り慣れた職人たちが凝らした技巧と、ベテラン声優陣の聞き応え十分の芝居が詰め込まれている。なにかと源平の争乱が取り上げられることが多かった2005年の最後を飾るに相応しい作品だといえるだろう。
義経紀 | |
対応機種 | プレイステーション 2 |
メーカー | バンプレスト |
ジャンル | 絢爛剣術アクション |
発売日 | 発売中 |
価格 | 通常版:7140円(税込) 限定版:1万290円(税込) |
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