ドリフトでインベタでミニターボな夜に、相手の国では朝だったりするWi-Fiマジックに酔いしれる:「マリオカートDS」レビュー(4/4 ページ)
2005年12月8日に発売された「マリオカートDS」は、スーパーファミコンから続く人気シリーズ「マリオカート」の最新作。レースゲームとして人気と評価の高い今シリーズに、ついにニンテンドーWi-Fiコネクションを利用した通信対戦機能が備わった。世界中の誰とでも対戦できる画期的なレースゲームの魅力を探ってみよう。
ついに来た、夢のWi-Fi対戦 〜世界のみなさん、コンニチハ
本作最大の特徴にしてセールスポイントと言ってもいいのがニンテンドーWi-Fiコネクションを利用したWi-Fi対戦だ。対応ソフト第1弾は「おいでよ どうぶつの森」だった。そして本作が対応ソフト第2弾である。
ネット接続に対して腰の重かった任天堂が長い準備期間を経て提供するサービスということで熱い期待も寄せられるというものだが、実際に「おいでよ どうぶつの森」をプレイしてみたときに、筆者はそのタイムラグのなさ、ストレスのなさに驚いた。自分の村に3人の他人がいて各自が自由気ままに動いているのだが、動作は軽快でネットを介していることを感じさせないほどの状況だったのだ。しかもこれが本当に「無料」で「あんしん」(ともだちコードをお互いに登録した人しか入ってこれない。セキュリティ面は安心だ)なのだから、たいしたものである。
本作の対戦でもフレンドコードをお互いに登録したうえでのともだちとの対戦が可能なのだが、しかし本作は、そこから1歩、いや100歩くらい前に踏み出した環境を用意している。なんと、世界中の人と対戦することができるのだ。
世界中というと大げさかもしれないが、実際のところ本作は北米版と欧州版がすでにリリースされており、そちらの地域の人と対戦することが可能なのである。Wi-Fi対戦では対戦条件として「ともだちと」「ライバルと」「こくないのだれかと」「せかいのだれとでも」という4つが設定されている。
「ともだちと」ならフレンドリストに登録のある人との対戦。これはおいでよ どうぶつの森と同じ感覚だと言ってよいだろう。それに対して「ライバルと」となると、プレーヤーと腕前の近い対戦相手が選ばれる。腕前はそれまでのWi-Fi対戦の成績から算出されるのだろう。この時点ですでに誰だかわからない人との対戦が楽しめるわけだ。そして「こくないのだれかと」であれば日本中のプレーヤーたちを対象に誰とでも遊べるようになる。さらに「せかいのだれとでも」であれば北米と欧州のプレーヤーも対象に含まれるという寸法だ。どこの人かというのはレース中に表示されるエンブレムの色でわかるので「お、おれ今、ヨーロッパの人3人と戦ってるな」ということは即座にわかるようになっている。
何度かWi-Fi対戦をやってみたが、やはり「せかいのだれとでも」を選択した場合が一番相手が見つかりやすかった。「こくないのだれかと」だと夜はけっこうつながりやすいが深夜、早朝は対戦相手が見つからず仕舞いなこともあった。「ライバルと」だとさらに見つからないことが多い。
必然的に深夜とか早朝に外国の人と対戦してみたりする(相手の国は何時だろうと考えるが実際よくわからない)のだが、やはりその対戦の快適さは特筆に価する。相手によってかは分からないが、たまに相手の表示がおかしくなってワープしまくる現象が見受けられた。しかし通信対戦環境はおおむね良好で、筆者がプレイしているあいだに筆者自身が通信エラーで切断されることはなかった。相手側が途中でいなくなってしまうことはままあったが、これは相手側が意図的に切断している可能性もあるので、何とも言えない。
あと、これは印象でしかないが、外国のやり込んでいる人というのは本当に半端じゃなく強いのである。勝ちも負けも何百にも達しているという対戦成績もすごいが「普通に走っているのに何でこんなに差がつくの?」と言いたくなるくらいに速い人がわんさかいて、正直へこみそうになるほどだった。それでも「誰だかしらんけど、Bobってやつすげー」的な、マリオカートで見知らぬ外国人と戦ってるという状況が面白い、というか、そういうオンライン独特の面白さは堪能できる。
もちろん日本にも猛者はいる。そしてまさに今日本作を買った、というような人が0勝3敗という成績で参戦したりもする。そのマリオカートというパイプだけでつながった人々がガチンコでレースをして、勝利と敗北に一喜一憂しているさまを想像すると、何だか愉快だ。各プレーヤーはオリジナルのエンブレムを作ることができるのだが、これもそれぞれ個性が出ていて面白い。どこかの誰かとつながっているという感覚を楽しむのに一役買っているといえるだろう。
ただ残念なのは、せっかくオンラインでつながるのだから、簡易チャットとか何かコミュニケートできる手段がほしかったという点だ。これはしかし、あえて入れなかったのだとは思う。見知らぬ誰かとゲームをする、まではよいが、そこで言葉のやりとりがあった場合に、何か二次的なものが生まれてしまう可能性がある。それがよいものであればいいが、よくないものも含まれて、例えば子供がプレイしていて何の気なしに個人情報を教えてしまうだとか、相手が外国人で話が通じなくて逆に困るだとか、そういうことも起こりかねないだろう。いろんな要素を考えれば、ただ対戦ができるだけ、という本作の仕様は英断ではある。しかし、せめて何がしかの感情を伝えるようなアイコンだとか、そういったものがあってもよかったんじゃないかとは思うのである。
NDSで登場した、ということの意義 〜Wi-Fi対戦という発明
本作はNDSというプラットフォームで登場したわけだが、ではNDSの売りである2画面とタッチパネルを活かしきっているかというと、そこは少し疑問が残る。下画面に詳細マップを映すことで後ろの敵を意識しやすくなったし、下画面を見ながら走ったりすると案外面白かったりもするのだが、2画面あるからこういう風に使った、という域を出ていないように思う。またタッチパネルに関しては、マップの切り替えくらいにしか使わないので、Yで切り替えるよりはタッチで切り替えるほうが楽、という程度にしか使われていない。NDSの2画面とタッチパネルを思う存分活かしてやろうという貪欲なタイトルの真逆にあるタイトルだといえる。
別に筆者はそれを非難するつもりはない。いいのである。それでいいのだ。何もNDSで出たからと言って、全てがタッチパネルを意識しなくてもよいのだし、飽くまでもボタンの操作に拘った本作は、それはそれで筋が通っていると思う。そして何よりも、NDSのWi-Fi通信という機能については他の追随を許さない勢いで活かしまくっているのだから、それでいいではないか、と思うのである。
おいでよ どうぶつの森は村で遊ぶというどちらかといえば静的なコンテンツだった。しかし本作はスピード身上のラグがあっては成立しないハードなレースものなのだ。その対戦においてこれだけの通信環境を無料で提供できるようにしたという、その任天堂の発明に筆者は惜しみない賞賛を贈りたい。そしてタイムマシンに乗って高校生の自分に言って聞かせてやりたい。「俺、携帯ゲーム機のマリオカートでBobにボロ負けしたよ。自宅にいながらヨーロッパの人と遊んだんだよ」と。おそらく高校生の自分はそんなことは信じないだろう。そういえば今は21世紀だ。二足歩行のロボットがガシガシ走るさまも目撃した。未来ってこういうことなのかな、とふと思ったりしてしまう。
とにかく本作は前作までのファンなら間違いなく買いなうえに、新しもの好きの方々にもぜひ触れてほしいタイトルだ。回線が不安定っぽい状況も何度か見られたが、大枠では快適だったWi-Fi対戦。今後プレーヤーは確実に増加していくだろう。めちゃくちゃ速い外国人に勝てるように筆者も鍛錬していこうと思う。さて。ヨッシーサーキットでミニターボの練習でもするかー。
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