少年兵たちは戦時下にあっても恋をする:「ガンパレード・オーケストラ 白の章 〜青森ペンギン伝説〜」レビュー(1/5 ページ)
そのあまりに特異な世界観や、強烈な個性を放つキャラクターの面々、そしてかつてないほどの自由度の高さで好評を博した「ガンパレード・マーチ」から5年余り。待望の続編「ガンパレード・オーケストラ」は、この「白の章」を皮切りに全3部作で相次いでリリースされるという。
前作「ガンパレード・マーチ」は異例のロングセールスを記録
2000年9月にプレイステーションで発売された「ガンパレード・マーチ」は、いろいろな意味でエポックメーキングなソフトだった。発売当初はさほど話題にも上らず、初動こそ地味なスタートだったが、その後インターネットの掲示板や口コミで注目を集めるようになり、販売本数を伸ばしていった。ハードがプレイステーション 2に世代交代を果たして以降もコンスタントに売れ続け、いまなお店頭に新品が置かれているのを見かけるくらい、極めて異例ともいえるロングセラーになっている。かくいうわたしも発売直後はまったくのノーマークで、とある個人ホームページで紹介されていたことから興味を持ち、数カ月遅れで買い求めた覚えが……。
このソフトが人気を集めたゆえんは、独創性のある世界設定と、その中でプレーヤーが自由に立ち回れるところにあったと思う。一見すると学園を舞台とした恋愛シミュレーションの様相だが、かといって登場人物の誰かと恋を成就させることだけが最終目標ではなく、勉学に励んで学園一の秀才を目指してもいいし、授業をさぼって街をぶらつき、不良ぶってみるのもいい。また、生徒たちには学園での若者らしい日常がある一方で、“幻獣”と戦う軍人の一面も併せ持ち、その奇妙なミスマッチ感が個性を際立たせていた。
その「ガンパレード・マーチ」から5年余りの歳月を経て、続編として登場したのが「ガンパレード・オーケストラ」だ。これは全3部作で構成されるというスケールの大きな作品で、その1作目としてまず「ガンパレード・オーケストラ 白の章 〜青森ペンギン伝説〜」(以下、白の章)がリリースされた。
前作のファンにとっては、待ちに待った続編といえそうな「ガンパレード・オーケストラ」。登場キャラクターや舞台が異なる3部作で展開され、その1作目がこの「白の章」。今後、「緑の章」、「青の章」と立て続けにリリースされる
システムの根幹は前作を継承しつつ、より遊びやすくなった印象に
前作も続編の3部作も、その根底に流れるストーリーや世界観は共通のものだ。“ガンパレ”シリーズの世界では、第2次大戦以降、突如現れた謎の幻獣と人類との戦争が50年以上にわたり続いているという設定。幻獣の魔の手は日本にもおよび、戦力不足から10代の若者までもが兵士としてかり出され、各地に配属されている。「白の章」の物語は、前作から約7カ月後の1999年12月より始まる。舞台が熊本から青森へと移され、登場人物も一新された。
本作に登場する主要キャラクターは、生徒が16人、担任教師1人と“ペンギン”1羽を含めて総勢18人。前作の26人(うち生徒は22人)と比べるとややボリュームダウンしたような印象だが、何しろ全3部作構成なので、あとの2作でさらに数多くのキャラクターが登場することになる。そして、今回大きく変わったのが、主人公(=プレーヤー)となるキャラクターを生徒16人の中から選べるという点。前作でも2周目以降に主人公を変更することができたが(それでも全員は使用できなかったが)、今回は初めから好きなキャラクターでプレイできる。
また、生徒16人のうち、クラスメイトとして登場するのは主人公を含めて9人で、それ以外のキャラクターはゲーム中に登場しない。ここは、前作のファンからすると評価が分かれるところかもしれない。前作では、クラスは違うものの計22人の生徒と交流できる楽しさがあり、その人数の多さが学園生活らしさを実感させる一面もあった(実際には、人数が多すぎてほとんど言葉さえ交わさなかった生徒もいたが……)。今回は9人と少ない分、ひとりひとりとより深く接する機会は増えそうだが、ちょっと物足りなさも覚える。なお、戦闘で仲間の誰かが死亡してしまうと、その補充要員として別のキャラクターが登場する仕組みになっている。
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