さまざまなジャンルをいいとこ取り。セガの戦国時代シミュレーション、その完成度とは?:「天下人」レビュー(1/2 ページ)
あのセガが歴史モノシミュレーションを発売、ということで話題となった「天下人」。ある意味セガらしからぬ1本と言える本作だが、そこはゲーム作りに熟知している同社。このジャンル初とは思えないほどゲーム性は良好に仕上がっている。ここではそのシステムを中心に、本作の見どころを検証していこう。
ここを見ている多くの読者、特にセガに詳しい人ほど、本作の発表時に「セガが歴史シミュレーション?」と思ったに違いない。実は「アドバンス大戦略」シリーズを除けば、メガドライブ時代の「太平記」までさかのぼるほど、同社にとって歴史シミュレーションは縁が遠い存在となっていたのだ。そんなこともあり、正直なところ当初は「大丈夫?」などという失礼な感想を抱えてしまったほど。そんなわけで少々不安を持ってプレイしてみた「天下人」だが、その感想は「とにかく遊びやすい」というものであり、当初抱えていた負のイメージはあっという間に払拭された。
ストラテジー風システムのリアルタイム戦術シミュレーション
本作の基本システムは、いわゆるリアルタイム形式の戦術シミュレーションで、合戦マップに配置された武将の部隊に指示を与えながら、敵全滅や目的地占領などの勝利目的を目指すというもの。常に状況が変化し続けるためスピーディーな展開を楽しめるのが魅力のリアルタイム制だが、逆に状況判断や戦闘が忙しい、難しいと言う人がいるのも事実だ。だが、本作では部隊を指示している間は時間が止まるため、目的地や攻撃目標をじっくり考えながら指定でき、ターン制ほどではないが状況に追われて何もできない、ということはないはずだ。また、マップがあまり広大にせず、各部隊に目が届きやすいことも遊びやすい理由のひとつとなっている。
そして、ポイントとして、マップ上には自然の地形だけでなく多くの人工建造物の存在がある。いわゆる柵や城門といった破壊目標はもちろん、壊れた橋や矢倉は、忍兵により修理や強化が可能で、これにより新たな通路や攻撃拠点を作り出すことが可能となっている。戦いの最中に、占領で拠点を得るだけでなく、強化できるというシステムは、リアルタイムシミュレーションというよりもリアルタイムストラテジーに近い。これにより、勝利のためには戦闘と占領だけでなく、一段高い戦術能力が必要となるわけだ。ここでまた難しそうと思う人がいるだろうが、もちろん安心してほしい。難度が低い序盤ではこれらの建造物はごく少数しか配置されておらず、しかも戦闘そのものがこの場所を確実に活用するように仕込まれており、必然的に使い方を覚えられる。もちろん武将同士の会話などにより、活用法やそのタイミングがある程度チュートリアル風にサポートされているため、やり方を迷うことはない。
全ボタンを使うが、意外と簡単な操作性
操作方法については、説明書を見た瞬間は「L3、R3も含めて全部使うのか」と一瞬たじろいでしまったものの、何のことはない。その多数が視点変更やズームに振られており、極端な話、割り切ってしまえば十字キーと○△□×(×はキャンセル用なので実質3つ)ボタンだけでも十分操作可能なレベルだ。
ほかのボタンは、最初のシナリオなどで、基本ボタン操作の合間にでも適当に押していれば簡単に慣れるだろう。なお、十字キーの都合でカーソルそのものを部隊アイコンの真上で止めにくいのだが、これは多少離れていてもボタンを押せばカーソルが最寄の部隊に自動で補正移動するので問題なし。なお、L2ボタンを押し続けることで時間を早回しでき、これは部隊の長距離移動などをただ見ているだけの時にストレスを感じなくてすむ。こういった配慮も「遊びやすさ」に直結している。
陣形や軍団、特殊命令を駆使して戦え!
合戦シーンでは、敵味方の部隊同士を激突させ、そして敵部隊を全滅・大将の撃破を目指す。とはいえ実際に戦ってみると、大抵のマップで敵兵力が自軍より多いため、そのまま戦えば、哀れランチェスターの「集中効果の法則 ※」により敗北は必死。後述の育成で部隊1つ1つの戦闘力を高めることで不利はいくぶん減少できるが、それでも苦戦はまぬがれない。
※ランチェスターの法則:近代の集団戦では、兵力を2乗した数値を元に残存兵力を計算するというもの。例えば同じ戦闘力の場合、敵が50人、味方が30人なら、兵力を2乗するので2500−900=1600となる。1600の平方根は40なので、味方が全滅しても敵は40人残ることになる。なお「天下人」のゲームシステムがこれにのっとっているわけではないので念のため。
少しでも効率よく敵を倒すには、まず部隊の種類を見て相性がよい部隊をぶつけるのが基本。これは足軽は槍に強く、槍は騎馬隊に強く、そして騎馬は足軽に強いという、いわゆる三すくみを利用することになる。もう1つは弓や鉄砲などの遠距離攻撃舞台の活用だ。部隊同士の衝突時に、その後ろから援護攻撃を行えば、それだけで戦況は優位になれるだろう。
ほかには、最大3部隊を1つの軍団に組み込んで、集団攻撃を行う手がある。これは特殊命令でいつでも編成・離脱が可能で、軍団を構成すれば集団で戦えるメリットのほか、組み合わせ次第で攻撃力などが付加されるなどの特典が生じるのだ。これで強力な大部隊を作り、敵の少数部隊を各個撃破すれば、ランチェスターの法則を逆に利用して損害を抑えながら敵兵力を削ることができる。
戦術を駆使するだけでなく、兵種ごとに定められた兵種特技を使う方法も有効だ。これは一定時間の戦闘力向上といった補助的なものから、広範囲の敵に大ダメージを与えるものや、敵部隊を混乱状態にして一時的に無抵抗にするなどさまざまで、これを駆使すれば強力な部隊もあっという間に撃破できるだろう。ただし、この命令には回数制限があるので、ここぞという時にしか使えない。タイミングの見極めはプレイヤーの戦術眼しだいだ。
そして最後の方法は、地形や施設の活用だ。柵があれば一定時間的を足止めできるので、そこを弓や鉄砲で攻撃すれば一方的に敵を減らせるほか、味方の本陣や矢倉の近くで戦えば兵力の減少を抑えられる。マップによっては大砲や火計、そして弓を発射する弓矢倉が設置されており、忍兵を使え作動させれば大きな戦果も期待できる。
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