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さまざまなジャンルをいいとこ取り。セガの戦国時代シミュレーション、その完成度とは?「天下人」レビュー(2/2 ページ)

あのセガが歴史モノシミュレーションを発売、ということで話題となった「天下人」。ある意味セガらしからぬ1本と言える本作だが、そこはゲーム作りに熟知している同社。このジャンル初とは思えないほどゲーム性は良好に仕上がっている。ここではそのシステムを中心に、本作の見どころを検証していこう。

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クセのある5人の武将を天下人に押し上げろ

 プレイヤーが選択できる武将は、織田信長、徳川家康、真田幸村、伊達政宗、島津義弘の5人で、それぞれの人生を追うストーリーがで展開される。ゲームのタイトル名が「天下人」だけに、実際に天下人となった家康をはじめ、各地で天下盗りを目指した豪傑が目白押しだ。豊臣秀吉や武田信玄がいないのが気にかかるが、秀吉はほかの武将のシナリオで出番が多く、シナリオの前半が信長と重なりやすいから出ないに違いない、と勝手に結論付けてみた。そして、ある意味戦国時代には欠かせない真田幸村を登場させることで、信玄の存在をカバーしている、と見るべきだろう。このキャラクターデザインは、「三国志大戦」と同じ獅子猿氏が担当しており、主観で言えば信長と政宗はいわゆるカッコイイ系だが、残り3人はなかなか“濃い”メンツがそろっている。まったくの個人的感想だが、過半数が“濃い”キャラクターというのは、本作のセガらしさが最も強調されている部分に見えてほかならない。

画像 武将ごとに難易度が違い、信長や家康は初心者向け、政宗や義弘は中〜上級者向けといえる。最初から義弘を選びたい初心者の方は残念だが、まずは家康などで練習してからのほうがよい。お楽しみは最後までとっておくものだ
画像 各武将のシナリオ前後には演舞(デモ)が入り、ストーリーを解説してくれる。このくさいまでの熱い演技の人間ドラマも本作の見どころだ

画像 いわゆる戦国時代を扱うアクションゲームと比べてプレイ可能な武将数は少なく感じるかもしれないが、1つのマップにかける時間が長く、またシナリオ数も分岐を含めると1人当たりのシナリオは10以上が用意されており、ボリュームは十分だろう

 各自のシナリオは章構成で進み、各章ごとに一度合戦が行われる。例えば信長なら、桶狭間から始まり、二章は美濃の稲葉山城攻め、そして三章は姉川の戦いと、ほぼ史実どおりの展開を見せる。とはいえこのまま進むと本能寺で死んでしまうため、途中からは「if」のシナリオへとつながって行く。また、シナリオには分岐が用意され、そのため一度のプレイでは全シナリオ制覇は不可能。2周目では、1周クリアのセーブデータがあればそのレベルを引き継いでプレイできるので、強力な武将や部隊を率いて戦いを楽しめる。

 ただし、それぞれのシナリオをプレイしていると、戦国時代の知識を持つ人ほど違和感を感じるシーンが目に留まる。例えば信長でプレイの場合、桶狭間や美濃攻めの時点で配下の柴田勝家と前田利家、木下藤吉郎(秀吉)が同格の身分となっている。また真田幸村の場合、上田城で徳川秀忠軍を翻弄したが関ヶ原で西軍が負け、幸村は父昌幸とともに九度山へ配流されるという史実どおりの展開になるのだが、ここで九度山を脱出し大阪城へ入ると、石田三成や大谷吉継が健在でともに戦ってくれるのだ。また逆に、大阪城に攻めてくる徳川軍には、関ヶ原前に亡くなっている徳川四天王筆頭の酒井忠次が平然と陣取っている。これら時代考証のあいまいさは、完全ifのゲームならともかく、史実も念頭においている内容としては気になって仕方がなかった。

画像画像 また、主に脇役武将のイラストも“濃い”。左が貴族風のお歯黒大名で知られる今川義元。そして右が肥前の熊と呼ばれし竜造寺隆信だ。隆信が茶人風イラストのため、正直言って入れ替えたほうがよいぐらいだ。おそらく本作は従来の戦国時代ゲームと武将の個性が重ならないようにデザインしたと思われるが、それが理由で、むしろ史実の武将イメージからかけ離れてしまった気がしてならない。ゲーム性は良好なだけに、それだけが少々残念

武将や兵種を育成して戦いを有利に!

画像 シナリオが進むと、武将や兵種レベルが足りずにどうしても勝てない、という事態も発生する。この場合は合戦前の「展望図」画面で鍛錬を選び、盗賊相手の合戦を行い経験を稼ぎ、レベルアップしてから再挑戦しよう

 ゲーム内に登場する味方武将は、敵を倒しシナリオをクリアすることで経験値を得、そしてレベルアップしていくRPG要素も含まれている。これには武将そのもののレベルと現在率いている兵種のレベルがあり、武将は全体的な戦闘力や兵力がアップ、そして兵種は特殊技などが強化される。また、兵種レベルがレベル5になると上位兵種が選択可能になり、さらに戦闘力がアップする。大半の武将は、例えば槍隊と騎馬隊など2種類の兵種が選択できるので、どれか1つを徹底的に強化するか、幅広く育てるかといった楽しみもあるわけだ。とはいえやはり上位兵種になると強さを実感できるので、ここは一転集中が望ましいところ。また、合戦終了時には武器や防具などの装備を得ることもある。これらを次の合戦前に装備すれば、戦闘力や移動速度などが向上する。もし忘れてしまった場合でも、合戦中いつでも軍議へ戻れるので、装備しなおすのが賢い選択だ。

今までとはひと味違う戦国時代を楽しめる1本

 タイトル画面からはいつでも操作方法を教えてくれるチュートリアルの「指南」も用意され、まさに初心者にも優しい仕様となっている。先述の時代考証など細かい点で気になるものの、登場武将のプロフィールを見られる付録や、1周クリア後のおまけ要素も用意され、痒いところに手が届く丁寧なつくりは好感が持てるだろう。これは比較的玄人ユーザーをターゲットとしがちなセガ作品において、こういっては何だがいい意味で予想を裏切られた印象だ。だからといってゲーム全体が簡単なわけではなく、シナリオが進めば高難度マップも用意されており上級者も満足できるはずだ。このバランス感覚の絶妙さも、本作の魅力の一つといって間違いないだろう。

 戦国時代を扱うゲームは数あるが、合戦に特化したリアルタイムシミュレーションは意外と少ないだけに、こういったジャンルのソフトを待っていた人は多いはず。その中で発売された本作は、久しぶりに登場した高い完成度の作品と断言できる。戦国好きの人はもちろん、すべてのシミュレーションファンが納得できる1本なので、ぜひ一度プレイしてほしい。

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