Microsoft、GDCでXNAベースの開発ツール群「XNA Studio」のプレリリースバージョンを配布:Game Developers Conference 2006
Microsoftは、Game Developers Conference 2006開催に合わせ、次世代ゲーム開発ツール群「XNA Studio」のプレリリースバージョンを配布するとともに、クロスプラットフォームでのゲーム開発を容易にする「XNA Framework」の提供を発表した。
XNA Studioでゲームの開発が容易かつ短時間でできるようになる
XNAは、Xbox 360をはじめとする次世代ゲーム機や、既存のゲーム機、PCなども含めた総合開発プラットフォームで、その提供は2004年のGDCで初めて表明された。それから2年、今年のGDCで、そのXNAをベースとした開発ツール群「XNA Studio」のプレリリースバージョンが配布された。そして、GDC 2006の会期2日目に行われた「Microsoft Game Developer Day」でも、さっそくXNA Studioの概要や、内包されるツール類の使用方法などが解説された。
XNA Studioには、「XNA Build」や「XNA Framework」といったツールが内包されている。このうちXNA Buildは、テクスチャデータなどのゲームに必要なさまざまなデータを管理し、それらデータがゲーム中のどこで使われるのか細部に至るまで依存関係を保持することによって、ゲーム製作に必要となるデータ管理作業を省力化するという役割を担う、XNA Studioの核となるツールだ。XNA Buildを利用することで、ソースコードとデータの依存関係が簡単に把握できるようになり、デバッグ作業がやりやすくなるのはもちろん、テクスチャデータの入れ替えや依存関係が存在しないデータの検索など、非常に時間や労力のかかっていた作業を簡単に行えるようになるわけだ。
プロジェクトが大きくなればなるほどゲームの開発プロセスは複雑になり、プロセス管理に多大のリソースや時間を費やさなければならなくなる。しかし、XNA Buildを利用することで、プロセス管理に費やされるリソースを大幅に削減でき、本来のゲームを構築する作業により多くの時間やリソースを割り振れるようになる。これによって、ゲーム開発の時間やコストを削減でき、ユーザーにゲームを早く届けられるようになる、としている。
それに対しXNA Frameworkは、GDC 2006に合わせて発表されたXbox Studioに内包されるツールの1つ。Xbox 360やWindows XP/Vista、Windows Mobileなど、さまざまな環境をターゲットとしたクロスプラットフォームタイトルの開発を容易に、かつ短時間で行えるようにするためのものだ。XNA Frameworkの利用方法も21日のMicrosoft Game Developer Dayで解説されたが、その場で開発言語「C#」で記述されたソースコードを利用し、ターゲットとなるプラットフォームを指定し、複数のプラットフォーム向けに最適化された実行ファイルをビルドするデモも行われた。実際にその作業を見ると、クロスプラットフォームタイトルの製作は非常に簡単になるということがよく分かった。
また、Expo会場のMicrosoftブースでは、XNA BuildおよびXNA Frameworkを利用して製作したクロスプラットフォームソフトのデモも行われていた。まず、小さな星に花の種を打ち込み、星を花でいっぱいにするという3D描画のデモソフト。こちらは、画面中に1万5千の3Dオブジェクトを表示し、種を打ち込んだり視点を移動させたりといった操作が可能という仕様で、Windows用として3人のスタッフが3週間で作り上げた。そして、そのWindows用のデモソフトをXNA Frameworkを利用してXbox 360用に移植する場合、たった1日で作業が完了するそうだ。実際にXbox 360で動作するものも用意されており、Windows版とまったく同じ動作をしていた。
同様に、Windows Mobile用として動作している「上海」(麻雀をモチーフとしたパズルゲーム)をXbox 360用に移植したものも用意されていた。こちらは、単純な移植作業は1日で終了し、グラフィックの品質を向上させる作業を2人のスタッフで3日間しかかからず完了させたそうだ。
Xbox Live Server Platformの提供によりXbox Liveと外部サーバとの接続も容易に
もう一点、新たな発表があった。それは、Xbox Live Server PlatformというXbox Liveを利用したネットワーク機能を利用するための新しいテクノロジーを提供する、というものだ。
Xbox Live Server Platformでは、Xbox Liveのネットワークと、ゲームメーカーが独自に用意したゲームサーバを、セキュリティを保った状態で接続させるためのソリューションが提供される。これによって、ゲームメーカーがXbox Liveに用意されていない独自のネットワーク機能を用意し、ゲームに盛り込むことが可能とになる。例えば、「Project Gotham Racing 3」に用意されている「スペクテーターモード」(他のプレーヤーのプレイを観戦できるモード)は、Xbox Live Server Platformで提供される機能を利用し、Xbox Live外部の独自に構築されたサーバによって実現されているそうだ。5月より提供が開始されるXbox 360向けの開発キットで、Xbox Live Server Platformで提供される機能を利用するためのツール群が追加されることになるそうだ。
以前、Microsoftバイスプレジデント兼チーフXNAアーキテクトのJ.アラード氏にインタビューした際にアラード氏は、「XNAを利用することで、まさにWebページを作るかのような感覚で、少人数でゲームのコンセプト構築からプロトタイプの製作までができ、しかも他のプラットフォーム向けの開発も同じ環境を利用して行える、それが究極の目標です」と語っていた。その目標が実現されるにはまだかなりの時間がかかるだろう。とはいえ、XNA Studioにはその目標達成に必要となる機能の一部がすでに盛り込まれており、今回のセッションやデモを通して、その目標に向かって着実に前に突き進んでいることがよくわかった。
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