FINAL FANTASY XIやハンゲームなど、オンラインゲーム関連のセッションが目白押し(1/2 ページ)
今年のGDCでは、日本発また日本で展開されているオンラインゲームに関するセッションがいくつか用意されていた。その中から、ファイナルファンタジーXIとハンゲームに関するセッションの内容を紹介していこう。
クロスプラットフォーム、クロスカルチャーへの挑戦〜FINAL FANTASY XIのグローバル展開〜
現在、日本、アメリカ、ヨーロッパでサービスが展開されている、スクウェア・エニックスのMMORPG「ファイナルファンタジーXI」(以下、FFXI)。“ファイナルファンタジー”という、人気RPGの名前を冠としたMMORPGということに加え、プレイステーション 2とPC(4月20日よりXbox 360も加わる)とのクロスプラットフォームを実現しているという点でも当初より注目を集めていた。今回、FFXIのグローバルオンラインプロデューサであるスクウェア・エニックスのセイジ・サンディ氏により、FFXIを題材とした、スクウェア・エニックスの世界規模でのオンラインゲームに対する戦略について講演が行われた。
サンディ氏はセッションの冒頭で、MMORPGを運営する上での課題として、「いかに新規ユーザーを獲得するか」「いかに既存ユーザーを満足させるか」という2点をあげた。そして、その2つの課題に対するスクウェア・エニックスの答えとなるのが、「Cross-Platform」戦略と「Cross-Culturel」サービスという2つの大きな柱となる戦略である。
Cross-Platform戦略は、文字通り、ハードウェアに依存しないクロスプラットフォームでのサービスを提供するというものだ。FFXIをはじめとするスクウェア・エニックスのオンラインゲームは、クライアント(ユーザー)がコンテンツ(ゲーム)に対して直接接続してプレイするのではなく、クライアントとコンテンツが「PlayOnline」という共通のネットワークプラットフォームを介して接続しプレイするようになっている。
これは、ハードウェアに依存せずすべてのユーザーに(グラフィックではなくゲーム性に関して)同一のクオリティを提供できるようにするためという意味と、ハードウェアごとに接続サーバを用意する必要がなくなり、運営維持費などのコストを大幅に削減できるという意味がある。もちろん、複数のハードウェアで同じサービスを展開できるため、特定のハードウェアのみでサービスを展開するよりも多数のユーザーを獲得できるメリットもある。
また、ユーザー側にもメリットがある。ユーザー管理はPlayOnline上で行われ、PlayOnlineを介してプレイできるゲームは、すべてPlayOnlineで管理されている1個のID(PlayOnline ID)のみで楽しめるし、PlayOnline IDさえあれば、ハードウェアや環境に依存せずログインでき全く同じ環境でゲームを楽しめる。また、プレーヤー間でのメッセージのやりとりやフレンドリストの管理などもPlayOnline IDを利用して行われるため、ゲームの種類を問わずコミュニケーションが取れる。
Cross-Culturalサービスは、国や文化、言語などの差を超えて、同じフィールドでプレイする環境を提供するというもの。例えばFFXIでは、全ゲームサーバが日本に設置されており、日本、アメリカ、ヨーロッパの全ユーザーが同じサーバに接続してプレイするというスタイルをとっている。確かに、言語の違いは、MMORPGなどではコミュニケーションがうまく取れないという弊害もあるように思うが、FFXIでは翻訳エンジンが搭載されており、ゲーム内で頻繁に利用される特定の言葉を各国の言葉に自動的に置き換えるという機能を用意するなどの対策も取られている。
そして、Cross-Culturalサービスでの最も大きな利点と言えるのが、ピークアクセスタイムの平均化が可能という点だろう。FFXIのサービスが行われている日本、アメリカ、ヨーロッパには時差があり、それぞれの地域でピークタイムがずれている。そのため、サーバ全体で見ると、特定のピークタイムはあまり存在せず、平均的な稼働率になっていることがわかる。しかも、サーバや回線などの運営コストを実に66%も削減できているそうだ。
もちろん、Cross-Platform戦略やCross-Cultural戦略には弊害が全くないわけではない。文化の異なるプレーヤー間でのトラブルなどは、その弊害の顕著な例である。とはいえ、全世界で約50万という登録会員数を見ると、その弊害を補ってあまりあるほどのメリットがあると言えるのではないだろうか。
コミュニティマネージメントがゲーム存続のカギを握る
さらにサンディ氏は、その登録会員数を維持し、さらに発展させていくために必要な要素として、ゲーム内外のコミュニティの存在を挙げた。
ゲームのコミュニティは、最も習熟したプレーヤーがピラミッドの頂点に位置し、徐々に習熟度の低いプレーヤーが裾野に広がっていき、全体で大きなピラミッド型を形成していると考えられることが多い。しかしサンディ氏は、ギルドやパーティ、ファンサイトなどの少ない人数のグループもコミュニティであり、そういった小さなコミュニティが集まって大きなコミュニティが形成されていると指摘。小さなコミュニティの動向が、全体のコミュニティの動向に影響を与えると考え、大小さまざまなコミュニティのリーダー的存在となっているユーザーを満足させるような対策を取る。すると、そのコミュニティのメンバー全員がリーダーとともにゲームに付いてくる。そこで、ファンサイトに連動企画を持ちかけたり、開発者とユーザーがふれ合える機会を設けるといった施策を実際に儲けているそうだ。その具体的な例として、今年3月10・11日にアメリカで行われた「Final Fantasy XI Fan Festival 2006」では、数多くのユーザーが集まり、大変な盛況だったようだ。
このような、Cross-Platform戦略やCross-Culturalサービスをベースとしたさまざまな施策によって、FFXIは長期間にわたり、多数のユーザーを獲得し、しかも会員数を減らすことなく維持できている。FFXIは、4月20日に発売される新拡張パック「アトルガンの秘宝」によるさらなるバージョンアップが予定されているように、今後も紹介してきた戦略に基づいた施策が続いていくはず。サンディ氏がセッションの最後に指摘した次世代MMORPGの研究開発に関しても気になるところだが、今後のFFXIの動向についても目が離せない。
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