FINAL FANTASY XIやハンゲームなど、オンラインゲーム関連のセッションが目白押し(2/2 ページ)
今年のGDCでは、日本発また日本で展開されているオンラインゲームに関するセッションがいくつか用意されていた。その中から、ファイナルファンタジーXIとハンゲームに関するセッションの内容を紹介していこう。
日本市場におけるオンラインゲームコミュニティポータル「ハンゲーム」の軌跡
日本でのオンラインゲームの市場規模は、ゲーム全体の市場規模の中で2004年では約10%、2005年は約16%ほどを占めるというように、ここ数年で規模が拡大しつつある。その中で、特に成長著しいのが、無料でプレイできるオンラインゲームを多数提供している、NHN Japanが運営するゲーム専門ポータルサイト「ハンゲーム」だ。簡単にプレイできる無料ゲームが多数用意されており、カジュアルオンラインゲームのカテゴリーでは、他のサービスを圧倒するシェアを誇っている。そのNHN Japanの室田典良氏がGDC 2006で公演し、日本でのオンラインゲームの状況やハンゲームがどのような戦略によって日本で大きなシェアを獲得するに至ったのか解説した。
日本でハンゲームのサービスが開始したのが2000年12月。当時のハンゲームは、独自の運営サイトでゲームを提供していたのではなく、Yahoo! JapanやISPなどが運営するポータルサイトと提携し、ゲームはそのポータルサイトで提供し、ポータルサイト運営企業からライセンス料を受け取るという形で運営されていた。しかし、「企業にサービスを提供するというビジネスモデルでは市場の成長性に欠ける」(室田氏)と判断し、2002年初頭にそれまでのビジネスモデルを大きく転換、最終的にプレイするユーザーから料金を徴収できるビジネスモデルへと舵が切られた。既存ポータルサイトとのライセンス契約を解消し、将来の有料化を視野に入れた独自サイトでの運営が始められたわけだ。これが最初の転換点で、ハンゲームの実質的なスタートラインと言ってもいいだろう。
次の転換点となるのが、2002年7月。この時点で、本格的な有料運営が開始された。しかし有料化となったのは、ゲームではなくアバターアイテムだ。これは、ゲーム自体を有料化するとユーザー数の拡大が望めなくなる可能性が高いばかりでなく、アクセスするユーザー数が激減してしまう恐れがあるとの判断があったからだそうで、ゲームをプレイすること自体は無料のままで、ユーザーがアバターアイテムを購入したいと思わなければ料金が発生することはない。つまり、料金負担の選択権はユーザー側に与えられているわけだ。そして、ゲームを有料化しなかったことや、ブロードバンド回線の急速な普及という後押しもあり、ハンゲーム側の思惑どおりユーザー数は急拡大し、2005年末の段階で、登録ユーザー数が2500万以上、コンカレントユーザー数も最大12万という規模にまで至っている。
コミュニティ機能を充実させたことがハンゲームの成功のカギ
ハンゲームのユーザー数がここ数年で爆発的に増えた理由としては、アバターアイテムの有料化や一部のゲームでの課金を実施してはいるものの、基本的には多数の無料ゲームを楽しめるサイト、という位置づけで運営されているという点にあるだろう。しかし実際には、それだけでユーザーを増やすことも事業を拡大することも難しい。「そこでハンゲームで重視したのが、コミュニティという要素です」と室田氏。
ハンゲームのコミュニティ機能には、ユーザーとのメールのやりとりやフレンドリストの登録、日記の登録など、ブログとほぼ同じ機能が用意されている。ゲームプレイ中には画面内にアバターが必ず表示され、チャット機能などを利用して他のプレーヤーとコミュニケーションが取れるようになっている。また、「アバターワールド」と呼ばれる、アバター用の仮想都市を用意し、そこに自分の部屋を持って部屋にアイテムを飾ったり、友達の部屋に遊びに行くこともできる。そして、これら充実したコミュニティ機能が用意されていることによって、当初はハンゲームを単なる無料でゲームをプレイする場であると考えているユーザーでも、何度もアクセスするうちに、ゲームだけでなく他人とのコミュニケーションも重視するように考え方が変化することが分かったそうだ。
このように考え方が変化すると、友人とのコミュニケーションのために毎日でもアクセスしたくなる。また、デフォルトのみすぼらしい姿のアバターでは恥ずかしくなり、自分のアバターも着飾らせたくなる。ユーザーのサイトへのアクセス率が増え、アバターアイテムの購入量も増えていく。つまり、ゲームやアバターだけでなく、ユーザー間のコミュニティ機能を充実させたことが、ユーザー拡大の大きな要因になっていると言ってもいいだろう。
セッションの最後、室田氏は「ゲームで人を集め、集まった人に対してコミュニティを育成し、そのコミュニティの中で価値を作り、その価値に対して課金する、というビジネスモデルが成り立っているというのは、非常におもしろいケースなのではないでしょうか」と指摘していたが、日本でのハンゲームの成功は、おもしろいケースではなく、当初からしっかりとしたビジョンを持って運営してきたことによる必然的な結果であると筆者は考える。オンラインゲーム事業を展開するにあたって非常に参考になる例ではないだろうか。
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