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より実機の手応えを体感したい人に――大空へのススメ「Over G」インタビュー(2/3 ページ)

タイトーが贈るフライトシミュレーション「Over G」。Xbox 360のパワーを最大限に引き出した「Over G」はどのようにして作られたのか。ディレクターの新地氏、元テストパイロットで本作の機体挙動を監修した田中氏にお話を伺った。

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F-15に初めて乗ったときの強烈な印象が「Over G」のリアルを作り上げた

眼前に広がる計器類の数々。ゲーム中はこれらもすべて、実際に稼働している

田中 空の感じ、地形、そういうのは感心するほどよく作られているんですけれども、ね。わたしがたまたまF-15が航空自衛隊へ導入される時にテストパイロットをやっていましたので、そういうデータなんていうのはもう、体に染み付いている。例えば、高度1万フィート、2万フィート、3万フィートそれぞれで、アフターバーナーの場合と、ミリタリーの場合とで、例えば、マッハ0.7から1.2までに何秒かかる、というようなものが確実に自分の中にあるわけです。

―― そういったカタログスペックと、ご自身の体にある感覚の融合で作り上げている、と。

田中 それから昔の飛行日誌をひっくりかえしてみて、データが書いてあったらそれを参考にしましたけれども、その中には数値的なものはほとんどないですね。なので、基本になるのはまずカタログスペック。それからF-15に初めて乗ったときの強烈な印象です。

―― そういったゲーム内「F-15」は、今までの「EAF」とは随分変わっていますか?

新地 これは、今だから言えるんですが、F-15をゲームに落とし込んでいくときに、田中さんがおっしゃることというのが、私たちが認識していたF-15とかなり違っていました。「こんなに性能を良くしちゃって大丈夫かな?」と内部で相談したくらいですから。それで、徳永さんに相談をしたら「その機体に乗ってるパイロットっていうのは大体性能を50%増しで言うので……気をつけてくれ」と言われまして。それで、米軍のパイロットに、ほかの機体のこともあわせて、ちょっと違うアプローチで聞いてみたら「確かにそうだね、これでいい」と太鼓判を押されまして。開発中には「日本のF-15は特別に性能がいいんですか?」って話もあったくらいです(笑)。そんなこともあって「大丈夫かな?」と思いながらずっとやってましたね。半年くらいはずっと……どきどきしながら。

―― 結局、田中さんのおっしゃるF-15がゲームに入り、それがベースとなってどんどん次の機体が作り出されていった、と。

新地 そうですね。最初はEAFのゲームエンジンを使っていこうと思ったんですが、全部作り直しになりました。F-15はすぐに終わる予定だったんですよ。そんなに特殊な癖をもった機体でもないらしいですから。それがいろいろと調整するうえで時間がかかってしまって。「とにかくF-15を早く終わらせて、次の機体に行かないと間に合わない!」と焦っていたんですが、結局F-15だけで半年近く使いましたね。

―― その苦労の中で作られた“Over GのF-15”。田中さんの評価はいかがですか?

田中 もう、ほぼ実機ですね。操縦装置さえ本物をつけていただければ、実際のフライトシミュレーターとして航空自衛隊に持っていっても売れるんじゃないかなというくらいです。

新地 それもありでしょうか? F-15というのは世界の戦闘機が目標にしているという代物で、アメリカが本気で作った戦闘機らしいですので……さまざまな戦闘機を比べるための物差しになるんです。ほかの機体を作るにあたってもF-15という基本的なものができたおかげで、すごくやりやすかったですね。

いままでのものとは本当に感覚が違う。実際に戦闘機を動かしていた人の感覚を大事にした

―― ゲームが発売されてからは、どんな反響があると思いますか?

新地 うーん、まだ想像がつかないですが……。まず、戦闘機ファンの方たちに対しては「Over Gは実機に近いんだ」という風に思ってもらえるか心配ですね。いままでのものとは本当に感覚が違いますから。操作の部分では「遊び」の部分をぎりぎりまでつめているんです。一般的にコントローラは操作してから認識するまでに若干遊びの部分がありますが、その遊びの部分を田中さんが嫌ってらっしゃったので、かなり調整を行いました。

特定の機体では、敵機体を正面にとらえていなくてもロックを持続させられる。また、右のアナログスティックで敵をサーチすることも可能

田中 例えば横に力を加えた場合なんですが、遊びを超えて、動き出す力というものが大事なんですよ。せいぜい、2ポンドから2.5ポンドくらいの圧力で機体が応答してくれないと困るんです。そういうところから「このコントローラ駄目だね」とか言いながら……(笑)。

新地 田中さんに、微妙な操作を行って頂くんですが、飛行機がコントローラの誤差で震えてしまう。これをどうしたものかと。しかもコントローラには個体差がありますから。

田中 結局それは修正できたんですか?

新地 もうギリギリまでやれるだけやりました。あと、「さらに詰めたい人にはどうぞ」ということで、キーコンフィグに遊びを詰めたりできる要素をいれてあります。だからご自分のコントローラの程度がよかったら「ギリギリまで詰めてください」ということで。それをわざわざ作るのは大変でしたが、そこはプログラマーに頼んで作ってもらいました。

―― 操作感の部分についても、戦闘機のコアなファンは一家言あると思いますが……。

田中 東京ゲームショウで展示したときに「横転が早すぎる」なんて言っていた人がいましたね。

新地 ええ。「ロールが速すぎる」って言われました。インターネットの掲示板を見ていると「実機はこうじゃないはずだ」なんて、会話がなされていることもありましたが……。やはり実際に戦闘機を動かしていた田中さんの感覚を第一にしました。

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