今年はおとなしめだったゲームサラウンドレクチャー:Game Developers Conference 2006
3月20日〜24日に北米サンノゼで開催されたGame Developers Conference 2006(GDC)では、今年もドルビーが出展、ブースとスポンサードセッションでサラウンド技術のデモンストレーションなどを行っていた。
去年まではGame Developers Conference 2006(以下、GDC)ではドルビーとDTSが出展しサラウンド技術のデモンストレーションを行っていたのだが、今年はDTSが不参加。というのも、ゲームのサラウンドといえば、90%以上(国産タイトルだったら100%)がドルビー技術になってしまい、DTS Interactiveはほとんど使用されない技術となってしまったのが大きな理由であろう。とはいえ、ドルビープロロジックIIと違い、光デジタル端子からでないと音が出ないなど、手間取る規格ではあったことも要因といえる。
コーエー・無双シリーズの開発者が語るプロロジックIIでのサウンド構築テクニック
今年も例年どおり、ブース内シアターではサウンドエンジニアによる講演が行われた。日本からはSCEJとコーエーのサウンドスタッフによるデモを開催。コーエーではディレクター以上の立場でないと、こういう場に現れることはないため非常に珍しい。
SCEJの「GENJI」のセッションは昨年の「CEDEC 2005」の記事を見てもらうとして、今回コーエーは、「戦国無双シリーズにおけるサラウンドサウンド構築の実践テクニック」と題して、PS2でのドルビープロロジックII環境におけるサウンド作成テクニックを披露した。なお、題材となったのは日本で2月24日に発売となった「戦国無双2」。
戦国無双2ではドルビープロロジックIIであらかじめエンコードされたBGMと環境音、それと効果音とボイスがドルビープロロジックIIでミックスされ出力される。とはいえ、ぐるぐる回る3Dゲームでは、環境音がカメラの動きに追従して回らないと不自然。しかし、ドルビープロロジックIIプリエンコードではそれができないため、本作では効果音を別につけて、それを“回す”ことで、リアルタイムサラウンド感を向上させているという。
また、プレーヤーの鳴らす音をセンタースピーカーからではなく“本来鳴る位置”で鳴らすことは、スイートスポットにリスナーがいる場合、天井から音が鳴るように体感されるが、それがずれると音像がめちゃくちゃになる、というデモを行った。なお、戦国無双2ではそれを回避するため、プレーヤーの鳴らす音はセンターから鳴らすようにしているとのこと。
戦国無双2ではBGMもドルビープロロジックIIエンコードされてはいるが、せっかくなので、たまにはBGMの音量を絞ってサラウンドサウンドを堪能していただきたい。
スポンサードセッションではアカデミー賞受賞のサウンドエンジニアがミキシングテクニックを披露
ドルビーの今年のスポンサードセッションは「Ready, Set, Mix」と題し、「ロード・オブ・ザ・リング」トリロジーや「キング・コング」(2006)のサウンド制作を手がけたMichael Hedges氏によるサラウンドサウンド講座を行った。このセッションではあるモノラル映画にサラウンドによるサウンドエフェクトを実際に付けていくというもの。オリジナルのサウンドは非常に簡素なものだったが、エフェクトがサラウンドになり、フォーリーや音楽などを加えて感動的な音像を作り上げていく様はさすがと言うしかなかった。著作権処理の都合により、実際の画像をお見せできないのが残念なところ。
なお、ドルビーでは8月に開催される「CEDEC 2006」において氏を招聘しようと考えているらしい。今回GDCに行けなかった開発者の方々も落胆せずに続報をお待ちいただきたい。
「プレイステーション 3」は7.1chサラウンド対応?
ところで、SCEAブースのプレイステーション 3(PS3)開発機材デモで、サウンド関連のデモが展示されていたが、このデモ、実際には鳴らしていなかったが、7.1chまで対応している。しかもディスクリート(独立出力)らしい。
ただし、2006年3月現在、ディスクリート7.1ch出力対応のサラウンドシステムは市場に出ていない。リリースは早くて今年の年末、時期がずれ込めば2007年の可能性もありうる。PS3には次世代サラウンド仕様に必須となるHDMI端子があるので、ドルビーデジタルプラスやDTS-HDの出力も可能だし、ゲームによってはPS2におけるドルビーデジタルプロロジックIIのように、“インゲームはドルビーデジタルプラスによるリアルタイムサラウンド、ムービーはドルビーTrueHDによるスタジオ原音再生”という使い方も見えてくる。実際にゲームに実装され、さらに再生機器がゲーマーにも手が届く価格におりてくるまではまだまだ先の話だが、面白いことになってきそうだ。
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