みんなで作るRPG「百の世界の物語」:ゲイムマンの「レトロゲームが大好きだ」(2/2 ページ)
ボードゲームスタイルのRPG、「百の世界の物語」(アスク講談社)。中古でけっこうなプレミアがついているようですが、一般的にはあまり知られていないゲームだと思われます。でも、1人から4人まで楽しめる、かなりハマれるゲームなのです。
クエストこなしてレベルアップ!
「百の世界の物語」は、RPGでもあり、ボードゲームでもある。
プレイヤーは勇者となって、酒場などで依頼されるクエストをこなしたり、モンスターを倒したりして、経験値を貯める。
そしてレベルを上げ、町で武器や防具を買って強くなったら、シナリオの主目的である、ドラゴン退治や宝探し、お姫様の救出に挑む。
……と書くと、よくあるRPGのようだが、「百の世界の物語」では、勇者は1人ではない。2人〜4人の勇者がいて、それぞれほかの勇者より先に、シナリオの目的を達成しようと競うのだ。
「百の世界の物語」では、ウォーシミュレーションのようなターン制が導入されている。それぞれの勇者が交替で、移動、アイテム使用、町や村でのアイテム購入・クエスト請け負いなどといった行動をとるのだ。
クエストを成し遂げることで、お礼として経験値やお金を得られる。このゲームはレベルアップが非常に早いので、積極的にクエストを受けて、経験値を稼ぐと良い。
クエストは基本的に、請け負った人だけが実行できるが、中には「誰でもやれるクエスト」がある。
「誰でもやれるクエスト」は早い者勝ち。モンスターを倒すクエストで、1ターンでモンスターを倒しきれない場合は、別の勇者が戦闘に入って、クエストを横取りすることもできる。
戦闘といえば、勇者が別の勇者に戦いを仕掛けることもできる。逆に、パーティを組んで、協力してモンスターに当たることも可能だ。パーティを組むと、人数分だけ順番が回ってくるので、移動も速い。
最終ボスはとても強い。レベルを上げて挑んでも、なかなか勝てないかもしれない。ただし、複数の勇者でパーティを組んで戦えば、多少は楽に戦える。
とはいえ、パーティを組んでいてもライバルはライバル。誰のターンで敵を倒したかによって、得られる経験値が大幅に変わる。だから自分のターンでうまく敵を倒せるよう、他人のターンで防御に徹して、敵に与えるダメージを調整するという作戦も考えられるのだ。
RPGのエッセンスを凝縮
シナリオは、「われらドラゴンバスターズ」、「伝説の秘宝」、「お姫さま物語」の3種類。
ただ、「われらドラゴンバスターズ」を例に取ると、ドラゴンを倒して城に戻れば、そのままエンディングになることもあるが、ドラゴンを倒した後に真の黒幕が現れる場合もある。ほかのシナリオでも、プレイするたびに細かな違いが現れる(もちろんマップも毎回異なる)。
「百の世界の物語」の魅力は、つまるところRPGそのものの魅力といえるだろう。テーブルトークRPGも含めた、RPGというゲームが本来持っている魅力。これをわずか1時間ほどのプレイで味わうことができる。
どんどんレベルが上がり、勇者たちがどんどん強くなる。
ひんぱんにクエストが出され、それらを勇者たちが次々と達成していく。
出されたクエストを断ることもできるなど、行動の自由度はかなり高い。目的を達成せずにゲームが終了してしまうこともある。このあたりは、決められたシナリオどおりに行かないこともある、テーブルトークRPGに近い。
仲間とは協力することもできるが、基本的には互いがライバルで、時には戦うこともある。もちろん勇者同士の戦いにかまけてばかりいると、本来の目的が達成できない。そのバランス感覚も絶妙だ。
何が起こるかわからない意外性もある。突然、勇者の追っかけファンが現れ、勝手についてきたり(もちろん戦闘時に足手まとい)。仕事人が現れて、ほかの勇者の経験値を下げてくれたり(間違って上げてしまうことも)。背景世界が“何でもあり”なユキリアだから、こういうイベントが入っていても違和感がない。
そして何といっても、「物語をプレイヤーたちがつむいでいく楽しさ」がある。
町を回る順番も、イベントをクリアーしていく順番も、プレイヤーの自由だ(イベントをクリアーしなくてもいい)。勇者たちの行動がそのまま物語となり、1回プレイするごとに、物語がひとつ作られていく。
だから「百の世界の物語」なのである。
このように「百の世界の物語」では、RPG、特にテーブルトークRPGのエッセンスが、ボードゲームのスタイルを使って、見事に表現されている。
まさに「百の世界の物語」には、RPGの魅力が凝縮されているのだ。
ハウステンボスに、オランダの魅力が凝縮されているように。
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