ファンタジーなのにヘルメット魔界塔士Sa・Ga:ゲイムマンの「レトロゲームが大好きだ」(2/2 ページ)
記念すべき第20回の「レトロゲームが大好きだ」ですが、取り上げるゲームはダジャレで決めました。とはいえ、この魔界塔士Sa・Ga(1989年・スクウェア)は、単に“ゲームボーイ初のRPG”というだけにとどまらない、個性的なゲームでした。
ファンタジー世界から新宿へ
システム面だけではなく、シナリオのほうもすごかった。携帯機ゆえにデータ容量も決して高くないが、マップを狭く感じさせないように工夫されている。
まず大きな工夫は、冒険の舞台を大きな塔にしたことだ。
塔を中心にして、4つの世界が階層立てになっている。それぞれの世界はあまり広くはないが、塔を中心にした世界の全体像を思い浮かべれば、上のほうの世界は空中に浮かんでいるわけで、広くなくても違和感はない。
この塔の上には、楽園が存在するという。モンスターが現れ、すさんできた世界から抜け出すため、塔を昇っていくのがこのゲームの目的だ。
4つの世界では、塔への入口に封印がほどこされており、そのままでは上の階に進めない。プレイヤーはそれぞれの世界で、封印を解くクリスタルを探すことになる。
1階の「大陸世界」では、3人の王が持っている剣、よろい、たてを入手するのが当面の目的。
ここで出てくる玄武は、四天王の1人。四天王は4つの世界をそれぞれ支配しており、クリスタルを手に入れようとする主人公たちと対立する。
「海洋世界」では、まず地下のダンジョンを通って、動く浮島を探す。見つけたらそれに乗って海を移動する。最後は海底に潜む、四天王の青龍を倒す。
「空中世界」では、四天王・白虎を倒そうとするレジスタンス勢力が存在する。主人公たちは白虎の配下となり、レジスタンスと戦うふりをして、白虎を倒すすきをうかがう。フィールドを高速で移動できる乗り物「グライダー」が登場。
「都市世界」は、それまでとは違う、異色ずくめの世界となる。
まず舞台がいきなり、荒廃した未来世界である。しかも町の名前が“アメヨコ”、“アキバ”、“シンジュク”といった、東京の地名。
外を歩いていると、四天王の朱雀が自ら襲ってくる。シルクハットの男が助言したとおり、この時点では倒せないので、逃げたほうがいい。
どうにか町にたどり着き、朱雀を倒そうとしている暴走族(!)と協力。朱雀のバリアを破る装置を作るための部品を探す。
防具もこの世界観に合わせて、「バトルスーツ」や「アライのメット」が登場。
ゲームボーイの先入観を打ち崩す
魔界塔士Sa・Gaのシナリオの白眉は、実はクリスタルを4つ集め終わったその先にある。
四天王を束ねるアシュラを倒すため、さらに塔の上へと歩いていくのだが、その途中にはさまざまな部屋がある。死体の転がるシェルターや、死んだ冒険者たちの記録が残る部屋。
4つの世界以外の場所は、ゲームのシナリオに直接関係がなく、行かなくてもゲームはクリアーできる。しかし、そういう場所をあえて設けたことで、背景世界に“深み”が増しているように思う。
それまでのRPGではあまり見られなかったような、重々しい空気が漂っているのだ。
「アシュラの破壊活動のおかげで大儲けしている会社」なんてのも、ストーリー上必要のない場所だが、ここを見た後、別の場所で多くの人々が死んでいるのを目にすると、やりきれなさを感じてしまう。
現実の戦争でも、これに似たケースがよく報道される。現代の人にこそ見てもらいたい場面だ。
ストーリーは、アシュラを倒した後、プレイヤーの誰もが驚くような展開を見せる。携帯ゲーム機のRPGとは思えないくらいの、壮大かつ思い切った展開である。
もっとも、このゲームの世界全体が、携帯ゲーム機のRPGならではの狭い世界だからこそ、こういう展開になっても違和感が感じられないのかもしれない。
終盤のダークな雰囲気といい、壮大な展開のストーリーといい、「ゲームボーイのRPGなんだから、そんなに大したことは、やってこないだろう」という、プレイヤーの先入観を見事に裏切ってくれる。
もしかしたら、河津秋敏氏をはじめ、制作スタッフの皆さんは初めから、ゲームボーイというゲーム機に対する先入観を打ち払うために、魔界塔士Sa・Gaを作ったのではないだろうか? そんな気すらしてしまう。
少なくとも、このゲームを作るにあたって、「ハードの性能に限界はあっても、作るゲームに限界はない」というような信念は持っていただろうと思う。
翌年(1990年)に発売された「Sa・Ga2 秘宝伝説」も人気が高い。
成長システムは一部変更になり、人間は「ファイナルファンタジーII」のように、使った能力が成長するようになった。また、アイテムを装備してパワーアップする、“メカ”が新たに登場。
9つの世界で秘宝を集めながら、主人公の父親を探すのが目的。世界の中には「大江戸」なんてのもあって、世界観がファンタジーにとどまらないのも前作同様だ。
「Sa・Ga」シリーズはその後、「時空の覇者 Sa・Ga3」を経て、スーパーファミコンの「ロマンシング サ・ガ」に移行する。ただし「ロマンシング サ・ガ」は、確かに同じ河津秋敏氏の作品ではあるが、コンセプトが違うので、元の「Sa・Ga」とは別のシリーズと考えたほうがいいと思う。
携帯用ゲーム機の「Sa・Ga」シリーズは、以降発売されていない(2002年に魔界塔士Sa・Gaが、ワンダースワンカラーに移植されているが)。
今、ニンテンドーDSがめちゃめちゃ売れてることだし、スクウェア・エニックスさん、DS向けに「Sa・Ga4」を作ってみるのはいかがでしょうか?
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