これをやらなきゃ始まらない。今年のサッカーシーンをより熱くするマストアイテム:「ワールドサッカーウイニングイレブン10」レビュー(2/2 ページ)
シリーズ10周年の記念タイトルにして、10作目となる「ワールドサッカーウイニングイレブン10」がついに登場した。驚きのモード消失、難易度バランスの変化と、前作に引き続き、またもや賛否がハッキリと分かれそうな気配だ。
攻撃側に有利なパワーバランスでは!?
攻撃時は、爽快(そうかい)感しか感じない。というのも、選手が“いてほしい場所にいる”のだ。きっと★★★のレベルで遊んでいるからなのだろうが、マイボールになった時、操作していない選手が、積極的に相手のプレスを外してスペースに入るようになっている。そのため、ショートパスはもちろんのこと、ロングパスも通りやすくなった。当然フォーメーションの相性によって違いはあるとは思うが、前作ではサイドチェンジ以外でほとんど活用しなかったロングパスを、本作ではひんぱんに使用できる。
ウイイレ8やウイイレ9では“極悪”といわれるほど通らなかったフライスルーパスも、本作は“これは通る”と思ったときは通り、“これはムリ”と思ったときは案の定カットされるという、本当にちょうどよいバランスになっていると思う。
中央突破にはそれほど難易度の変更は感じなかったが、サイドからの攻撃はずいぶんとやりやすくなった気がする。特に人数の少ないシーンでサイドからセンタリングすると、中央やファーサイドにFWが駆け込んでくれる。しかもタイミングを合わせやすい。これはシュートに行こうとしている選手が、ボールの落下点をより正確に把握するようになったおかげだと思われる。
また、これは本作におけるDFの弱点でもあるのだが、サイドに展開するとSBはもちろん、中央にいるCBまでもがサイドに寄ってくる。逆サイドにFWがウロウロしていると、そちらにもマークがつくため、中央ががら空きになるのだ。そこを狙ってパスを出すと、OMFもしくはCFが絶妙なタイミングで飛び出し、ダイレクトでキレイなシュートを決めてくれる。本作におけるシュートパターンで、一番簡単なのがこの方法ではないだろうか。
逆に言うと、DFの中央に対する意識が少々お粗末であるともいえる。しかし、飛び出してくるだろうと思われる選手にマンマークを積極的に設定すれば、この攻撃はあらかた防げるため、監督としての采配が重要になってくるのではないだろうか。
弱い。弱すぎるぜGK
シリーズを重ねるごとに、どんどん強くなっていったポジションがある。それはGKだ。神がかりともいえるようなセーブを連発するため、ゴールが異様に遠かった印象がある。しかし、本作のGKは正直言って弱い! DFを抜いて1対1になると、リベロキーパーに設定したわけでもないのに、簡単にGKが前に出る動きを見せる。そしてちょっと斜めにドリブルしているだけで、簡単に転んでくれるため、赤子の腕をひねるようにゴールを決めることができてしまう。
この動きはどうやらボールとGKの間にDFがいないと、自動的に発動してしまうらしい。ここに本作からのメッセージを感じ取ってしまう。
“GKがひとりになるような状況を作ったほうが悪い”
と。おっしゃるとおりっ! 確かにこれはサッカーの基本です。そのぶん、DFがシュートコースをしっかりと消していれば、GKは限られたコースにのみ守備の意識を持つようで、そういう時はシュートをちゃんと防いでくれる。開発陣に“ちゃんとディフェンスしてね”と諭されているようで、思わず赤面してしまう。
うれしい変更が随所に見られる
そのほか、システム面での変更にも触れておきたい。まず、フォーメーションや選手交代を自動的に行ってくれる「トップメニュー」が加わった。「かんたん設定」を選ぶと、自分の思ったとおりの攻撃方法に沿って、フォーメーションや選手選抜を決定してくれる。これは、サッカーが苦手な人やウイイレを初めてプレイする人にとっては非常にありがたいシステムだ。
試合中にプレイが切れていないとき、選手交代を行ってみよう。すると、「カビラさぁん。ホーム側、選手がアップをはじめました」とピッチ解説が入る。これは個人的に気に入っている。時には、「ホーム側、監督がもっとサイドを使えと叫んでいます」といった、プレーヤーへのアドバイスともとれるような実況も入る。
うーん、これは面白い。そのとおりやってみて、ゴールを決められたときに、監督に抱きつく演出が入るとウレシイな、なんて贅沢なことまで考えてしまう。
操作面で大きな違いには「クイックリスタート」がある。ファウルをもらった時に、L1ボタンとR1ボタンを同時に押すと、相手の陣形が整う前にショートパスを出すことができるもので、試合の流れを止めたくない時には有効な手段だ。ただし、一回画面が暗くなってすぐにリスタートするため、どこに選手がいたかをしっかり覚えておかないと、パスを出した瞬間にインターセプトされる可能性もあるので注意が必要だ。
やはり対戦が熱い
そして、誰がなんといおうとウイイレは対戦が一番熱い。ウイイレをやり込んでいるプレーヤーは、現実でのサッカーファンも多いため、選手やチーム、もしくは代表国に対して並々ならない思い入れがある。
その思い入れをゲームでぶつけ合ったときの化学反応はすさまじい。このレビューを書くにあたって、すでに事務所内では5人によるリーグ戦が2回も行われた。“やりますかっ”と誰かが声を発すれば、あとはもう歓喜や悔恨の声が次々とあがる、スポーツバーの様相を呈してくる。そして、次に自分があたるであろう対戦相手の試合運びを、じっくりと研究しだすのだ。何戦もの対人戦を繰り返していると、ひとつ見えてきたことがある。それは、全体のゲームバランスは、まさに対人戦を見据えたものである、ということだ。
弱く見えたGK、中央が空いてしまうDF陣、やりやすくなったサイド攻撃……このバランスが見えてくると、今まで意外と考えずに行っていたディフェンスに注力する必要があることに気づく。
つまり、絶対条件としてGKと1対1にしてはならない。となると、相手の攻撃速度を落とすためのディレイが重要になってくる。そのためには、DFはすぐにプレスをかけるのではなく、ボールホルダーとある一定の距離を保ったまま、ゴールへのコースを防ぐ、という操作が必要になるのだ。
そのために変更されたのが、ディフェンス時の動きだ。本作の守備を行う選手は、ボールホルダーに対して常に体を向け続ける動きを、自動的に行うようになっているのだ。となると、攻撃側も慎重にドリブルする必要に迫られる。そこで活用したいのがR2ボタンだ。前作までは「高速ドリブル」を司っていたR2ボタンだが、本作より「低速ドリブル」を行うためのボタンになった。つまり、ボールと体の距離を短く保ち、瞬時に大きな動きを行って、緩急によって相手を抜きさる操作が可能になったということ。
このためか、対人戦で多く見られるようになったシーンが、1対1のマッチメイクだ。攻撃側と守備側の選手が対峙し、抜くか抜かれるかの緊迫した勝負が生まれる。こんな空気は今までになかった! そうなると、ドリブルが得意な選手にボールが渡った時に、自然とワクワクしてくる。守備側は、いつ抜かれるかとヒヤヒヤする。
この空気を再現できたという一点のみをピックアップしてみても、ウイイレ10は名作に値するゲームだといえる。さぁ、あなたも周囲の友人と、リーグ戦を開いてみよう。必ず白熱した時間を楽しめるはずだ。
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