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日本を感じろ――ドキドキ、ワクワクが止まらない由緒正しき冒険活劇「大神」レビュー(2/3 ページ)

水墨画調のグラフィックや、画面に筆を走らせて様々な奇跡を起こす「筆しらべ」など、見た目の新しさについ目を奪われがちだが、「大神」はただ新しいだけの作品ではない。忘れかけていた“ゲームって楽しい!”という感情を、呼び覚ましてくれる良作だ。

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謎解き、探索、戦闘――すべての核となる筆しらべ

 オオカミの姿を借りているとは言え、仮にもアマテラスは神様。ゲーム中ではその力を振るい、さまざまな奇跡を起こすことができる。これが本作のもうひとつの見どころ、筆しらべだ。

 使い方は簡単、ゲーム中にR1ボタンを押すと画面が静止し、画面上に巨大な筆が現れる。これを左スティックで動かし、画面に線を走らせると、描いた模様によってさまざまな奇跡が起こるというわけだ。アマテラスが使える筆技は、壊れたものを元通りにする「画龍」(修復したい個所を塗りつぶす)、あらゆるものを両断する「一閃」(直線を引く)、枯れ木に花を咲かせる「桜花〜花咲の力〜」(枯れ木を円で囲む)など、全部で13種類。最初からすべてを使うことはできないが、各地に封印された筆神たちを解放することにより、1つずつ筆技を取り戻していく形となっている。

 新たな筆技を修得することで、これまで行けなかったところに行けるようになったり、これまで倒せなかった敵が倒せるようになったりするあたり、使い方としてはそう、例えた「ゼルダの伝説」のアイテムに近い。線の引き方ひとつで、武器にも、道具にも、移動手段にもなるという意味では、こちらのほうがずっと洗練されていると言っていいかもしれない。実際、本作の謎解きや探索、イベントのほとんどは筆しらべを使って行うようになっており、たったこれだけの要素でひとつのゲームを成立させてしまっていることに驚かされる。

 と、ややこしい話は抜きにしても、単純に“画面に線を引く”というアクションの気持ち良さと、描いた線がたちまち風や草花になって動き出す、というギミックだけで個人的には大満足だったりする。筆1本であらゆるものを生み出す気持ち良さは、まさに神様になった感覚だ。ぜひとも実際に触って、体験してみてほしい。

photophoto 橋が壊れていて先に進めない。こんな時は画龍で橋を直せば進めるようになる
photophoto 岩をもまっぷたつにする一閃。探索に、戦闘にと活躍するため、使用頻度は高い
photophoto 枯れ木をよみがえらせる桜花。桜花にはこのほか、ツタや蓮の葉といった植物を操る力もある

魅力的なキャラクターたちが織りなす笑いと感動のストーリー

 ここまで触れてきたのは、本作の“新しさ”の部分となる。もちろんこれだけでも十分に触ってみる価値はあるが、実はそれ以外の、物語や謎解き、アクションといった“ゲームの土台”となる部分にも、本作の魅力はたっぷり詰まっている。

 中でも魅力的なのが登場人物たちだ。特に主人公のアマテラスは、写真で見るかぎりはりりしい大神さまなのだが、実際遊んでみるとまったく神様っぽくない……というかまるっきりオオカミそのものだ。なにせこの神様、人々が話をしていても“クゥーン”とか“ワオ?”とか首をかしげながら尻尾をぶんぶん振るばかりというバカっぷり。華麗なアクションシーンなどから、勝手に寡黙な一匹狼を想像していた筆者としては、あまりのギャップに思わず噴き出してしまった。

 そんなアマテラスの代わりに物語の転がし役になってくれるのが、ふとしたことから旅をともにすることになる妖精のイッスン(こちらはちっちゃいくせに口だけは達者)だ。例えば人々が何か“困ったねぇ”と話を持ちかけてきても、アマテラスはトボけた顔で尻尾を振っているだけ。そこへイッスンがピョンピョン跳ねながら“よし、さっそく行ってみようぜ……聞いてンのカィ、アマ公!”とツッコむ。この奇妙な二人三脚が最高に楽しくて、見ているこっちも思わずほのぼのしてしまう。

 物語は誰でも知っている「ヤマタノオロチ伝説」をベースに、さまざまな神話や昔話のエッセンスを散りばめたものになっている。スサノオやヒミコといった「古事記」、「日本書紀」の人物が登場したかと思えば、桃太郎や浦島太郎、スズメのお宿に竜宮城まで出てくるため、“次は誰が出てくるんだろう”と想像するだけでもけっこう楽しかったりする。彼ら魅力的な脇役たちと絡み合いながらテンポよく二転三転するストーリーも秀逸で、ひさびさに物語でワクワク、ドキドキできるゲームに出会えたと思う。

photo 口は悪いが憎めない、大切なパートナーのイッスン。アマテラスとのかけ合いは最高!
photo 伝説の英雄イザナギの子孫スサノオ。最初は怠けてばかりで頼りないが、やがて……
photo 行く先々に現われては、おかしな予言を残していく謎の男ウシワカ。なぜ英語!?

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