日本を感じろ――ドキドキ、ワクワクが止まらない由緒正しき冒険活劇:「大神」レビュー(3/3 ページ)
水墨画調のグラフィックや、画面に筆を走らせて様々な奇跡を起こす「筆しらべ」など、見た目の新しさについ目を奪われがちだが、「大神」はただ新しいだけの作品ではない。忘れかけていた“ゲームって楽しい!”という感情を、呼び覚ましてくれる良作だ。
“動かす”ことが純粋に楽しい
主人公がオオカミという要素は、アクション面にも色濃く反映されている。広大なナカツクニを四足歩行で疾走する爽快感は、人間キャラクターを操作するのとはまた違った気持ち良さだ。ジャンプや攻撃といったアクションも、躍動感たっぷりに描かれている。
先に書いたように、アマテラスのアクションに応じて花が咲いたり、草が茂ったりするのも心憎い演出だ(一瞬で消えてしまうけど)。開発初期のムービーでは確か、アマテラスが走った後には土煙が舞うだけだったのだが、製品版では土煙のかわりに草が生えるようになっていて驚かされた。ほかにもジャンプすれば木の葉が舞い、頭突きをすれば紅葉が散るといった具合に、プレーヤーの操作が「神の奇跡」となって跳ね返ってくる。“自分の操作が画面内に影響を与える”のがただただ楽しくて、つい意味もなくジャンプしたり、走ったりしたくなってしまう。
もちろん、筆しらべの気持ち良さは言わずもがなだ。描いた線がたちまち風になる。枯れ木を囲めば桜が咲き乱れる。岩をも切り裂く剣筋も、立ちのぼる水柱も自由自在。とにかく“動かす”ことが気持ち良くて、コントローラを触っているだけでシアワセな気分になれる。初めてファミコンで遊んだとき、“画面内のキャラクターが動いた”というだけで大騒ぎしていたのを思い出してしまった。
たっぷり遊べる寄り道の数々。コンプリートは遠い?
最初はかつての力を失ってしまっているアマテラスだが、人助けをしたり、自然をよみがえらせることで得られる「幸玉」を集めることで、体力や筆しらべに使う「墨ヒョウタン」の最大値などを強化していくことができる。こうした本筋とは無関係な寄り道要素がたっぷり用意されているのも、本作の魅力のひとつとなっている。
幸玉の入手条件はそれこそ無数に転がっており、人々の頼みごとを聞いてあげた時などはもちろん、枯れた木を筆しらべで蘇らせたり、動物たちにエサをあげたりするだけでも、わずかではあるが幸玉を得ることが可能だ。中には思わぬところで筆しらべを使わないと入手できなかったり、フィールドの隅のほうにぽつりとたたずむ枯れ木があったりと、すべての幸玉を集めるのはなかなか大変だと思う。でも、それだけに意外なところで幸玉を見つけた時のうれしさ、達成感はまた格別だったりする。
幸玉集め以外にも、世界のあちこちに散らばった「はぐれ珠」集めや、指名手配妖怪の討伐、図鑑のコンプリートなど、やるべきことは満載だ。ストーリーそっちのけで幸玉やアイテムの収集に走る人も多いことだろう。
ひさびさに“ゲームって楽しい!”と思わせてくれる良作
グラフィックや筆しらべといった派手な部分にどうしても目が行きがちだが、むしろ遊んでみて驚かされたのは、“動かす楽しさ”、“謎や仕掛けを解く楽しさ”、“物語を追う楽しさ”といった、言わばゲームの基本ともいえる要素に、ものすごく敬意を払って作られていることだった。くだいて言えば、“意外と普通で、それでいて上質のアクションアドベンチャーですよ”ということだ。
インタビューでも言われていた通り、本作は初心者からコアなゲームマニアまで楽しめる、たいへんに間口の広い作品になっている。でも個人的には、その中でも特に、“最近のゲームには飽きちゃった”というコアユーザーにこそ、本作は遊んでいただきたいと思う。かつて味わった“ゲームって楽しい!”という感動を、きっと思い出すことができるはずだ。
……ところで、最後にもうひとつだけ強調しておきたいことがある。
それは、アマテラスを含めた、出てくる動物たちのかわいらしさ! 特にアマテラスのバカオオカミ(いい意味ですよ)っぷりは、オオカミ好きはもちろん、犬好きならば思わずほおずりしたくなること間違いなし。動物好きなら、絶対に遊んでおくべき! と断言できる作品です。
大神 | |
対応機種 | プレイステーション 2 |
メーカー | カプコン/クローバースタジオ |
ジャンル | ネイチャーアドベンチャー |
発売日 | 発売中 |
価格 | 7140円(税込) |
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