声優のなんたるかを知りたくばこのアニメを見よ――「ラブゲッCHU 〜ミラクル声優白書〜」（3/3 ページ）
4月4日より放映中のテレビアニメ「ラブゲッCHU 〜ミラクル声優白書〜」。この作品は、アニメ業界や声優業界の裏事情を赤裸々に描いた作品だ。その内容はどのようなものなのか……？ 実情を探るべく、出演者の方々に直撃した。
物語と出演者がリンクしている部分というのは、もちろんこれだけではない。というのも、本作が声優・アニメ業界を描いているのだから、物語自体が出演者にリンクしているといってもいい。出演者全員が共感するような内容も多数盛り込まれている。
「『あるある』と思えるようなシーンがたくさん登場しますよ」と話してくれたのは、緑川さん。「たとえば、桃子たちが通う養成所での授業や練習は、現実の養成所でも行われているようなものが多いんです。なかでも、早口言葉や滑舌の練習などのシーンは、演じる我々も特に真剣ですね。声優としての実力を試されているようで」。この言葉には一同大きくうなずいていた。「まさかアフレコ中にまで『ういろう売り』（有名な滑舌のトレーニング）が出てくるとは思いませんでした。いつ自分に難しいトレーニングの演技がまわってくるのか、ドキドキしています……」とつぶやいた鈴木りんか役・新谷良子さんのひとことにもどことなく哀愁が漂っていて、苦労したらしいことがうかがえる。
また、大原天音役の山本麻里安さんは「セリフや裏話だけでなく、本物とそっくりに描かれたスタジオも出てきます」と語る。「その描写は、『あ、××スタジオだ』と一目でわかるほどですよ」。スタジオの内装まで詳しく知る視聴者の方は少ないというのは承知の上で、それでも本作はスタジオや備品などの詳細な描写にもこだわりを持って作られている。
その作り込み具合は素晴らしく、佐々木祐理花役の落合祐里香さんは、「ファンの方から『声優になりたいんですけどどうしたらいいんですか』と聞かれることがあるのですが、そのときにはこの作品を見ることをお薦めしたいです」と語っていたほど。野沢さんも「本作は声優業界やアニメ業界について非常によく調べられて作られています。これから声優さんを目指すという人には、このアニメはいいお勉強になるんじゃないでしょうか」と、太鼓判を押してくれた。
とはいえ、これはドキュメンタリーではなくテレビアニメ。エンターテイメントとしての、コミカルな描写や過剰な表現なども大いに加えられている。原作者の小泉まりえさんは「私は最初、声優に関する知識がまるでなかったので、養成所から音響監督さん、監督さんなどに取材をしてまわりました。そして、そこで得た情報の中から印象的なことをピックアップして原作を書いていったんです。その結果、現場でも笑いが漏れるようなエピソードができました」と語る。本作の監督をつとめる東郷光宏さんも「一見華やかにも見える声優・アニメ業界ですが、その裏話をリアルに描いていくと意外と地味になってしまうんです。そこで、単純におもしろいと思ってもらえるように、ドタバタのコメディを基本にしています」と続ける。
業界内外のリアルな姿とエンターテイメントの融合が行われている本作。東郷監督は「これが声優業界のすべてということではなく、このアニメを通じて業界の雰囲気を感じ取っていただければと思います。そして、『声優になってみたい』と思う人が出てくればいいですね」と自らの描く理想を語ってくれた。
真栄田アタリ役の高橋直純さんも「声優を志す人や業界に詳しい人などは、どこまでがフィクションでどこからノンフィクションかを考えながら見るのも、本作の楽しみ方のひとつではないでしょうか」と新たな楽しみ方を提唱していた。
これまで、ありそうでなかった声優アニメ。声優の世界を覗いてみたいという方はもちろん、純粋にアニメを楽しみたいという方にもオススメしたい。声優という職業に興味のある方は、この作品からいろいろと学べることもあるだろう。純粋に楽しみたいという人は、豪華声優陣の演技に注目。なかでも、声優養成所でのトレーニングの様子は、「収録時には緊張したり、四苦八苦したりしていたのかもしれないなあ」などと思いを巡らせてみると、また違った面白さを発見できるはずだ。
前列左から、佐々木祐理花役／落合祐里香、小野寺 翼役／坂本梓馬、苺原桃子役／高本めぐみ、大原天音役／山本麻里安、鈴木りんか役／新谷良子。後列左から、一ノ瀬水斗役／緑川光、真栄田アタリ役／高橋直純、成田留奈役／今井由香、武宮先生役／野沢雅子、大門エリ役／三石琴乃Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.