ココナッツ・ビーチの開放感「アウトラン」:ゲイムマンの「レトロゲームが大好きだ」(2/2 ページ)
今回は「アウトラン」(セガ)を取り上げてみました。1986年のゲームですが、ゲームセンターでかなり長期間稼動していたこともあって、それほど古い作品には思えません。「アウトラン」っぽい風景を、伊豆で探してみました。
セガ体感ゲーム第4弾
「アウトラン」は、セガの体感ゲーム第4弾。
体感ゲームの第1弾は、大型のバイク型筐体に乗り、それを傾けて操作する「ハングオン」。
続く「スペースハリアー」では、プレイヤーの座るシートが、操作に合わせて動いていた。第3弾「エンデューロレーサー」を経て、「アウトラン」の登場となる。
「アウトラン」でも、カーブでハンドルを切るときや、クラッシュしたときにシートが動く。
体感ゲームはその後も進化を遂げ、やがて水平にぐるぐる回る「ギャラクシーフォース」や、全方向にシートが回転する「R360」に行き着く。ただし、そうした新しい体感ゲームが普及した1990年代になっても、「アウトラン」はなお、ゲームセンターで、現役で稼動していた。
ちょうど「テトリス」や「UFOキャッチャー」のヒットで、ゲーセンに若い女性がよく訪れるようになった頃。
ゲーム中の車と同じ真紅の筐体に、古さを感じさせないゲーム画面。「アウトラン」は、この時代の華やかなロケーションにも、よく合っていた。
一方で、このゲームはコアなゲーマーにも受け入れられていたようだ。ギアをロー、ハイと交互に入れて、路肩でも減速せずに走る「ギアガチャ」というテクニックが発見され、タイムアタックが盛り上がったらしい。
家庭用ではセガサターン版がベスト
「アウトラン」は、家庭用ゲーム機にも移植されている。マークIII版、メガドライブ版、PCエンジン版、セガサターン版、プレイステーション 2版などがある。
中でもメガドライブ版は、移植が1991年と遅かったこともあって、当時は“最高の移植”とよばれた。
後にセガサターン版が出たこともあって、現在はメガドライブ版の中古価格もそれほど高くはないようだ。しかし残念ながら私は、当時新品で買っていなかった上、中古でも入手できなかったので、このメガドライブ版をプレイしたことがない。
アーケード版の再現度では、やはりセガサターン版が最高峰といえるだろう。
1996年に、SEGA AGESシリーズの1作として発売されたセガサターン版。さすがに可動座席はないが、それ以外は完璧ではないだろうか。ココナッツ・ビーチの青い空はどこまでも気持ちがいいし、ウォールズの高い壁は、スピード感をもって迫ってくる。
マルチコントローラー、レーシングコントローラーに対応している。
プレイステーション2版「アウトラン」も、SEGA AGES 2500シリーズの1作として発売された。ただし、初期の同シリーズは、“昔の作品を現代の技術でリメイクする”ことに重点を置いていたようで、「アウトラン」も3Dポリゴンでリメイクされている。
アナログコントローラーを使った操作性もいいし、もちろんグラフィックもきれい。元のゲームの雰囲気を生かしながら、うまくアレンジされていると思う。
ただし、元のバージョンは収録されていないので、資料的価値はセガサターン版の方が勝っている。
PSE法の施行で、もしセガサターンの売買が(個人間以外で)禁止されてしまっていたら、簡単に触れることのできない作品が、大量に発生してしまうところだった。
よくゲーム業界で、「ゲームは文化として認められた」と言われることがあるが、PSE法が当初の形で施行されていたら、ゲームを文化としてとらえるための研究(ゲームシステムや表現方法の変化、時代との関連性などの検証)が、困難になっていただろう。
もっとも、今調べたら「アウトラン」は、Xbox版「アウトラン2」に収録されているらしい。101ミッションクリアーするか、50時間以上プレイすれば出てくる、隠しゲームらしいけど。
セガには海がよく似合う
セガのヒット作には、海が出てくるゲームが多い。
「アウトラン」もココナッツ・ビーチの印象が強烈だが、ほかにも例えば「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」の1面も海沿いだし、「アフターバーナーII」も海上のイメージが強い。さらに「バーチャファイター2」のジェフリーステージ、「テトリス」、「ペンゴ」、「バーチャレーシング」、「G-LOC」……。
体感ゲーム華やかなりし時代、先述のとおりゲーセンに若い女性がやってくるようになっていた。セガはいち早く、ゲーセンの内装を明るいものにして対応したのだ。
アーケードゲームの場合は、青い海と青い空が作り出すさわやかな風景が、そんなゲーセンの雰囲気に、マッチしていたのではないだろうか? 家庭用ゲーム機のゲームにおいても、そのイメージを意識して、さわやかな海の風景を取り入れていって、成功したのではないかと思う。
セガの本社は東京湾沿いの地、羽田にある。だから海の出てくるゲームが多いのかもしれない。
セガは、大空に向かって飛んでいく飛行機のように、さわやかなゲームを作り続けるメーカーなのである。
……あ、でも、「シーマン」にも海が出てくるけど、全然さわやかじゃないか。
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