目指したのは本物のサッカー――選手視点だとサッカーゲームはここまで変わる:「LoveFOOTBALL 青き戦士たちの軌跡」レビュー(3/3 ページ)
日本トップクラスのDF宮本恒靖選手がイメージキャラクターを務めていることでも話題を呼んだ、バンダイナムコゲームス発のサッカーゲーム「LoveFOOTBALL 青き戦士たちの軌跡」。新たな試みを各所に盛りこんだ意欲作のプレイ感たるや、さて、いかに。
成長させる楽しみ、記者会見やロッカールームでの一幕
試合に勝利すると、選手を成長させることができる。通常2ポイント、動きがよければ3ポイント得ることができ、「オフェンス」、「キック」、「ラン」、「フィジカル」、「ディフェンス」、「ゴールキーパー」の6項目に振り分けることができる。ここで強くした日本代表の選手は記録され、次に再び日本代表ストーリーをプレイすると、強くなった選手データが持ち越される。同じ選手を何度もプレイして強くしていっても良いし、全員でプレイして、代表の力を底上げしても良い。時には代表チーム同士で紅白戦が行われ、そこで選手の課題が浮き彫りにされることもある。
雰囲気を盛り上げてくれるそのほかの要素として、記者会見やインタビュー、ロッカールームでのチームメイトとの会話などがある。試合終了後、必ずインタビュアーにマイクを向けられ、用意された三択から回答するのである。時には“僕でいいのかな…”といった弱気な発言をすることもできるが、基本的には“周囲のフォローのおかげです! 僕の仕事が評価されてうれしいです!!”なんて答え続けていたいものだ。
ロッカールームでは、選手同士でちょっとした会話がある。しかし、戦術の見直しや、次はこんなことをやってみないか、といった提案はなく、“今回の試合は厳しかったな”などの感想だけで終始する。欲を言えば、やはり戦術についての話し合いや、監督に全員で直訴する、といったイベントもほしかった気がする。また、個人的な感想ではあるが、関西弁を話す選手が多い現在の日本代表だが、全員が標準語になっていた。このあたりはきっと少しは議論の的になったのだろうが、できれば、関西弁の選手は関西弁でしゃべってほしかったと感じた。
試合の臨場感から学ぶサッカーはすごい
それにしても本作の臨場感たるや、筆舌に尽くしがたい。1人の選手を動かすだけだから、余裕をもってレーダーを見ることができるのでは、と思うだろう。それがまったく逆なのだ。1人の選手のみを動かしていると、考えなければならないことが莫大に増える。
今の自分の位置は? 自分の周囲の相手選手は? ボールは奪われそうにない? それとも50/50? マークしなければならない選手は今どこにいる? もし自分にパスがきたらどこにパスを出す? パスを要求するには、どこに走りこめば良い? こんなことを、選手を動かしている間中、ずっと考えていなければならないのだ。レーダーをじっくり見ている余裕なんてない。
つまり、このシーンでは周囲はどう動くのか、ここでボールを奪わないと相手はどうつないでくるのか、といったことを、頭の中で想像しなければ、とても追いつかなくなるのだ。以前、元日本代表のある選手がこんなことを言っていた。
“テレビのような俯瞰(ふかん)でピッチを眺められたら、試合を簡単に支配できる。その全体像を頭の中で想像できるのが、本当の司令塔だ”
LoveFOOTBALLをプレイしていると、この言葉の重さが身にしみる。われわれはテレビ中継で斜め上からの視点で試合を観戦している。すると、スペースがあったり、フリーな選手がいたりするのを簡単に見つけることができ、なぜそこにボールを放り込まないのか、と歯ぎしりする思いを抱く。しかしピッチに立っている選手から見える風景は、LoveFOOTBALLのようなシーンなのである。そこから、アナタは俯瞰(ふかん)画面をイメージできるだろうか。できるのならば、サッカーの、司令塔の素質は十分にあるだろう。
正直なところ、本作にはいろいろと課題も多い。しかし、枝葉の問題点をひとつひとつあげつらうよりも、ゲーム自体が目指した理想の高さ、そしてかなりの割合でその理想を達成していることを評価したい。
個人的にはサッカー番組の司会でおなじみの、スパイスの利いた小粋な解説をする倉敷保雄アナウンサーがお気に入り。オモシロトークが楽しくて仕方ない。宮澤ミッシェル氏の掛け合いも、かなり辛口だが、そのあたりは実際にゲームをプレイして確かめてもらいたい。
Love FOOTBALL 青き戦士たちの軌跡 | |
対応機種 | Xbox 360 |
メーカー | バンダイナムコゲームス |
ジャンル | アクションサッカーゲーム |
発売日 | 発売中 |
価格 | 7140円(税込) |
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