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やーきゅーうー、すーるなら!? 「水晶の龍(ドラゴン)」ゲイムマンの「レトロゲームが大好きだ」(1/2 ページ)

DOGの「水晶の龍」といえば、“ヒロインと野球拳ができる”という裏技が有名です。実在しないウソ技なんですが、それでも今なお語り草。当時の裏技ブームのすごさがうかがえます。

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「水晶の龍」といえば野球拳というわけで

 今回取り上げるゲームは、DOG(スクウェア)が1986年に発売した「水晶の龍(ドラゴン)」。ファミコンディスクシステム用のアドベンチャーゲームだ。

 私・ゲイムマンは、別の仕事で中国地方に来た際、近くに「水晶の龍」ゆかりの地があることに気づいたので、寄ってみた。

 松山の道後温泉である。

 松山と「水晶の龍」に、どんな関係があるのか?

 「水晶の龍」は、“ヒロインのシンシアと野球拳ができる”というウソの裏技が、たいへん話題になったゲーム。実はここ松山は、野球拳発祥の地である。

画像 道後温泉本館にて。明治27年に建てられた、堂々たる建物である
画像 伊予鉄道の道後温泉駅と、坊ちゃん列車。いずれも明治時代のものを再現して造られた

 道後温泉は、日本で最も古くから知られた温泉のひとつ。古事記や万葉集にも載っていて、少彦名命(すくなひこなのみこと)や、聖徳太子も入ったという伝説がある。泉質はアルカリ性単純温泉。

 江戸時代、松平定行によって温泉街が整備される。道後温泉本館の建物は1894年(明治27年)に完成。伊予鉄道が道後に達したのは1895年(明治28年)のこと(当時は別会社であった道後鉄道の路線)。

 1924年(大正13年)、伊予鉄道の野球部が、野球の試合で敗れてしまった後、その夜の対戦相手との宴会で、歌と踊りをつけてじゃんけんを行なった。これが野球拳のはじまりである。

 松山では、野球拳の全国大会が毎年開催されており、野球拳の家元も存在する。ただし、かつて「トリビアの泉」で取り上げられたのでご存じの方も多いと思うが、ここの野球拳は本来の伝統的な形にのっとったものであり、参加者が“負けたら服を脱ぐ”ということは一切ない。

 つまりシンシアがやっていた野球拳は、本来の野球拳ではないわけで、……いや、シンシアもそんなこと、やっていないんだけど。

激しい裏技情報争奪戦の産物

 “シンシアと野球拳ができる”というウソ技は、徳間書店「ファミリーコンピュータマガジン」(ファミマガ)の、裏技を紹介する「超ウルトラ技(テクニック)50+1」コーナーに、写真つきで掲載されたものである。

(「ファミリーコンピュータマガジン」1987年第2号から引用)

 「シ、シンシア! やっや野球拳をしようぜぇへへ」

 パッケージの裏に、シンシアの写真があるね。これと同じシーンに、まずは行ってほしい。

 ここでAボタンを押してシンシアの話を聞いたら、シンシアの手を見よう。

 するとアイコンが、グー、チョキ、パーに変化するのだ。そして、シンシアとジャンケンをすることができるんだよ。

 そのうえ、じゃんけんに勝つといいことがあるゾ。


画像 この画面で、シンシアの手を「調べる」と……
画像 砂漠の中へワープしてしまった。野球拳なんてできやしない

 超ウルトラ技(ウル技)コーナーには、毎回ひとつだけ、実際には存在しない裏技「ウソテク」が紛れ込んでいた。掲載された裏技「ウル技」の中で、どれがウソテクか、正解した読者50名に、好きなゲームソフトがプレゼントされた。

 ウソテクが設けられたのには、ほかの雑誌による裏技情報の盗用を防ぐ狙いもあったといわれている。実際に、ウソテクがほかの雑誌に掲載され、それで盗用がバレたこともあったらしい。

 “シンシアと野球拳”は、ウソテクの中でも特に、内容のインパクトの強さから、“伝説のウソ技”として、今なお語られている。私は当時ファミマガを読んでいなかったので、国立国会図書館に行って確認した。

 ご丁寧にも、精巧に加工された“野球拳をするシンシア”の画面写真が載っており(ほかの号のウソテクにも画面写真はあるのだが)、これがこの裏技の信憑性と、読者の期待感を高めたであろうことは想像に難くない。

 当時、裏技情報はゲーム専門誌の目玉コーナーだった。裏技情報目当てに雑誌を買う人も多く、裏技コーナーがどれだけ充実しているかが、雑誌の売り上げに大きく影響したらしい。

 ちなみに、同じ号に載っていた本物の裏技には、「ザナックで1UPアイテムを大量に出す」、「ディープダンジョンで攻撃が必ず必殺の一撃になる」、「たけしの挑戦状のおもしろパスワード」、「メトロクロスのコンティニュー」、「聖飢魔IIのコンティニュー」などがある。

 アクションゲームには、コンティニューが裏技になっているゲームが非常に多かった。これらのゲームは、裏技を知らなければ到底クリアー不可能だった。

 最大手だったファミマガが、ウソテクを作ってまで盗用を防ごうとしたのには、裏技情報に対するニーズが高かったという、時代背景があったのだ。

小ネタで垣間見える当時のスクウェアの企業規模

 野球拳以外のことがあまり語られない「水晶の龍」だが、肝心のゲーム内容はどうだったのだろうか?

 まず大きな特長は、“グラフィックの良さ”である。

 「クレオパトラの魔宝」の回でも書いたが、スクウェアといえば当時はパソコンゲームでも、グラフィックを売りにしたアドベンチャーゲームで定評があったソフトハウス。

 DOGというのがそもそも、ファミコンディスクシステム用ソフトを作るために、パソコンのソフトハウスが集まったグループだった。そのためか、初期の頃は「ディープダンジョン」や「アップルタウン物語」など、かなりパソコン色の強いゲームが多かった。

画像 1986年のゲームとは思えない、優れたグラフィック。しかも口パクする

 「水晶の龍」では、漫画家の佐藤元氏がキャラクターデザインを行ない、またアニメーション処理が多用されている。アニメーションは、あのサンライズが製作協力したらしい。

 主人公はエリファス星に住む青年、ヒュー・ルーカス。エリファス星付近で、宇宙船が失踪する事件が相次いだ。ヒューも宇宙で、巨大な“水晶のドラゴン”の襲撃を受け、意識を失う。

画像 ユージンはこの後もヒューの前に何度か現れるが、いつもすぐに消えてしまう

 気がつくとヒューは、謎の女性・ユージンに助けられていた。しかし、恋人のシンシアと友人のナイルは、行方不明になっていた。ヒューは彼ら2人と、行方不明になった人々を救うため、調査を始める。

画像 小ネタもいくつか隠されている。当時の開発スタッフは、スクウェアのその後の急成長を、予想していなかったかもしれない

 ゲーム序盤は、エリファス星の街の探索が中心となる。

 十字キーを操作すると、画面上の矢印が動き、Bボタンを押しながら十字キーを動かすと、アイコンが選択できる。矢印とアイコンを組み合わせて、画面上の物や場所を調べたり、アイテムを取ったり使ったりする。

 科学者のおばばに会うと、スペーススクーターを渡される。これで宇宙に出られるようになる。

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