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子供の頃にロボットのおもちゃで遊んだ記憶が呼び覚まされる――DSの特性を生かしたアナクロテイストのゲーム「超操縦メカ MG」レビュー(2/2 ページ)

ぜんまい仕掛けのブリキのおもちゃや超合金のロボットで遊んだことがある世代なら、このゲームはきっとツボにはまるはず。「マリオネーションギア」と呼ばれる多種多様なメカをタッチペンで操作する感覚は、当時の懐かしいおもちゃで遊んだときのそれとどこか似ていて、まるで童心に返ったようにワクワクする。

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テンポよく進むストーリーと、多彩なミッションが魅力

画像 マップ上で、四角のマスはキャラクター同士の会話などイベントを示し、丸いマスは実際にマリオネーションギアに搭乗して遂行するミッションを表す。また、星形のマスはマリオネーションギアを製造・販売する工房など、施設を意味している。
画像 敵を倒すというミッションだけでなく、線路上の塞いでいる岩石をマリオネーションギアで取り除くといったミッションもある。

 主人公の少年はクロノタウンという街の小さな工房で働いていて、そこの主であるガロイや一人娘のメリッサ、マリオネーションギアの整備を担当する親友のケイなどと行動をともにする。ストーリーは、与えられたミッションをクリアすることで進んでいくが、さまざまなミッションがあるので展開が単調にならず、飽きさせない。出現した敵を倒すというものばかりでなく、たとえば鉄道の線路を塞いでいる岩を制限時間内に取り除くというミッションもあれば、ときには仲間からレースでの勝負を挑まれることもある。それぞれのミッション内容に適した特性を持つマリオネーションギアを選ぶことが、クリアする上でのポイントになる。

 そのためには、タイプの異なるマリオネーションギアをなるたけ多く取りそろえたいところ。このゲームには100種類以上のマリオネーションギアが登場するが、新しい機体を入手する方法は大きく分けて3通りある。1つめは、特定のミッションをクリアするともらえるもの。2つめは、ミッションをクリアするごとにもらえる報酬を貯めて、マリオネーションギアを開発する工房から購入するという方法。この工房にもさまざまあって、それぞれが独自の設計思想をもって開発している。たとえば、「輪工房」は車型に変形できる機体の開発が得意で、レースなど高速移動を要求されるミッションに向く。「重工房」は、ブルドーザーやショベルカーなどの重機をベースにした機体が多い。とりわけ個性的なのが「円工房」で、ここが作る機体は電子機器を一切使わず、ゼンマイや蒸気機関を動力源としている。ゼンマイ仕掛けの機体には、コクピットにゼンマイを巻くためのねじがあって、戦闘中でもこまめにゼンマイを巻き直さないと動けなくなってしまうというユニークさがある。

画像画像 車型に変形する機体を主に開発している「輪工房」。この「輪工房」をはじめ、主要な8つの工房は「八工房」と呼ばれるが、それ以外にも新興勢力の工房もいくつか存在する
画像画像 個人的に気に入ったのが、「円工房」が作る「ゼンマイ人形 水星号」。何しろぜんまい式なので、コクピットにあるねじをときどき巻き直さなければならないのが面倒だが、見た目の印象とは裏腹に攻撃力もあって、意外と使える?

 そして3つめの方法は、各ミッションをクリアしたときに設計図を入手できることがあり、この設計図をもとにガロイ工房で製造するという方法だ。これにも資金が必要になるが、同レベルの機体を各工房から購入する場合と比べれば安く済む。ただし、特定のミッションをクリアしても設計図が必ず手に入るとは限らず、中には極めて低確率で出現するものがあったり、選択した難易度によって左右されるものもある。

画像画像 入手した設計図を使い、ガロイ工房で新しい機体を製造することもできる。「設計図04_A」と「設計図04_B」を使用し、800Gの資金を投入して製造すると……
画像画像 カタツムリのような形をした「マイマイ人形マノン」が完成。各工房で売られているものだけでなく、このように設計図から製造することで入手できる機体も数多くある

画像 ヒートゲージがいっぱいになってしまうと、機体がオーバーヒートして操縦不能に。特に、敵との戦闘中にオーバーヒートすると、無防備で非常に危険な状態に陥ってしまう

 これらの手段で手に入れたマリオネーションギアは、「人形乗り換え」メニューからいつでも好きな機体に乗り換えることができる。さまざまなタイプのマリオネーションギアに乗ってみることで、プレーヤーごと自ずと好みの工房や機体が固まってくるだろうと思うが、同じ機体に繰り返し乗り続けていると要整備となり、整備中の機体はしばらくのあいだ搭乗できなくなってしまう。また、ミッション遂行中も、マリオネーションギアを好きなだけ動かせるというわけではない。機体をアクティブに動かし続けているとヒートゲージが上昇し、これがいっぱいになるとオーバーヒートして、コクピットからの操作を受け付けなくなってしまう。巨大メカといえども万能ではなく、愛機をいたわりながら乗ることを心がけなければならないというのが変わっていて、そこにプレーヤーなりの戦略や戦術が要求される。

画像 ミッションごと難易度を4段階から選択できるという作りが斬新。ただし、一定以上の難易度でないと設計図が入手できないなどの差異がある。

 また、ゲーム全体に難易度設定があるのではなく、ミッションごとに「イージー」から「スーパーハード」までの4段階で難易度をその都度選択できるというのも一つの特徴。ミッションの内容が多岐にわたるだけに、「戦闘は苦手だけど、レースならお手の物」といったようにプレーヤーのスキルに応じて難易度を調整できるというのは、気が利いていてなかなかおもしろい試みだと思う。

 シナリオもテンポよく進行し、いろいろな人との出会いを経ながら徐々に盛り上がっていく。まるで某有名アニメから着想を得たかのような茶目っ気あるイベントも一部に見られたりして、つい笑ってしまった場面も……。マリオネーションギアが大地を踏みしめるたびに画面が揺れる演出や、金属的な効果音など、開発スタッフがいかに巨大ロボ好きであるかをひしひしと感じさせる一方で、昨今のトレンドとは微妙に違う、ちょっとズレたテイストも発揮していたりして、至る所にスタッフの遊び心を感じることができる。

ニンテンドーDSの特性をフルに生かした会心作

 数あるニンテンドーDS用ソフトの中でも、タッチパネルの下画面をここまで効果的に活用したソフトはかつてなかったのではないかとさえ思う。マリオネーションギアの移動にこそ方向ボタンを使うものの(一部の機体では左右の旋回にタッチパネルを使うこともある)、剣を振ったり弾を発射したりといった操作はすべてタッチパネルのコクピット画面上で行い、その感覚が実にアナログっぽくて、「巨大なメカを自分で操縦している」という実感がわきやすい。また、A/B/X/Yのボタンでも機体の移動ができるようになっているが、これは左手でタッチペンを操作した方が扱いやすいという左利きの人への配慮だろう。

画像 ニンテンドーDSであることを考えれば、これだけの3D表示ができていること自体が秀逸だが、戦闘シーンではどうしても視野の狭さが感じられ、敵機との位置関係がつかみづらいことも。なお、R(またはL)ボタンを押すことで、カメラアングルをサイドビューに切り替えることもできる

 強いていうなら、ハードがニンテンドーDSということもあり、3Dポリゴンでのグラフィック表示にはやや難を感じる(それでも、ニンテンドーDSにしてはかなりレベルの高い3D表示を実現しているが)。自機を大きく見せようとしている分、全体的な視界が狭く感じられ、複数の敵機に囲まれると、もう何が何だかわやになってしまうような場面も……。また、これは好きずきもあると思うが、登場人物のキャラクターデザインや性格付けにもう少しひねりが加われば、人物像がより魅力的に映ったのではないかと思う面もある。

画像 「爆工房」が10年前に作ったという旧式の「爆人形ランディス」。左上にある丸いものは爆弾で、これを左下のスロットに放り込むことで発射できるのだが、初めはその役割がわからず、爆弾をコクピットの中で暴発させてしまい、自らダメージを被ったことも……。こうしたギミックにもユーモアを感じる

 いわゆるロボットではなく、マリオネットから派生した“マリオネーションギア”という着想が根底にあって、その世界観に独創性を強く感じるが、タイトルやパッケージを見る限り、単にロボットアニメをモチーフとしたゲームとして映ってしまうのは、いささかもったいないような気がする(わたし自身もプレイするまでそういうイメージを抱いていた)。ゲーム中でも、糸繰り人形のマリオネットからマリオネーションギアに至るまでの過程をもう少し掘り下げてみるのもよかったかもしれない。

 このゲームをプレイしていると、任天堂の次世代ゲーム機「Wii」に対する期待感までふくらんでくる。ニンテンドーDSはタッチパネル、Wiiではモーションセンサーを備えたリモコン型コントローラーに特徴があり、どちらも感覚的な操作体験を可能にしているだけに、もし「超操縦メカ MG」をWiiでも製作したら、ニンテンドーDS版以上に体感的なゲームに仕上がりそうな気がする。大画面テレビの中で迫力たっぷりに動くマリオネーションギアを、個人的にはぜひ見てみたい。

(C)2006 Nintendo


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