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可能な限りたくさんのローンチタイトルを用意する――WWS社長フィル・ハリソン氏インタビュー東京ゲームショウ2006

全世界のソニー・コンピュータエンタテインメントの開発スタジオを統括する、ソニー・コンピュータエンタテインメント・ワールドワイドスタジオ社長のフィル・ハリソン氏に直撃インタビュー。PS3向けタイトルの開発状況やネットワークサービスは?

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フィル・ハリソン氏は、全世界のSCE開発スタジオを統括する立場。ソフトウェア開発の責任者だ

 全世界のソニー・コンピュータエンタテインメントの開発スタジオを統括する、ソニー・コンピュータエンタテインメント・ワールドワイドスタジオ。その社長であるフィル・ハリソン氏に、現在のプレイステーション 3向けタイトルの開発状況や、ネットワークサービスの内容などについて聞いてみた。


―― まず、現在のプレイステーション 3向けタイトルの開発状況を教えてください。

フィル・ハリソン氏(以下、フィル) ブースを見ていただければわかるように、今回、非常に多くのプレイステーション 3(以下、PS3)向けタイトルを展示しています。そこからもだいたいの状況がお分かりいただけるかと思いますが、ローンチまでまだ時間がありますので、さらなるクオリティアップを目指してブラッシュアップを行っているところです。クオリティという意味では刻々と変化していますので、大きな意味での開発状況も刻々と変化していると言えるでしょう。

―― このようなことを聞いたのは、現在でもまだPS3本体と同時に発売されるローンチタイトルがどの程度の数になるのか、明確になっていないからです。そこで、現時点でだいたいどの程度の数をローンチタイトルとして考えているのか教えてください。

フィル 可能な限り多くの数を用意しようと思っています。実際に、ブースに展示されているタイトルのうちのいくつかは、完成間近であることがわかると思います。現時点ではまだ明確な数はお答えできませんが、もう少しローンチに近付いた段階で、正式なローンチタイトルを発表することになります。

―― PS3のコントローラに搭載される6軸検出システムに対応するタイトルとして「WARHAWK」があげられていますが、それ以外にはどういったタイトルが対応することになっていますか?

フィル 「RESISTANCE FALL OF MAN」、「GENJI(仮)」、「Monster Kingdom(仮称)」、「LAIR(仮)」、「flOw(仮称)」、「MotorStorm」など、たくさんあります。とはいえ、すべてのゲームで対応させるというわけではありません。クリエイターにも、PS3のレギュレーションとして6軸モーションセンサーの利用を義務づけているわけではありません。6軸モーションセンサーを利用することで、より望ましい効果が得られるという場合に積極的に対応していくことになるでしょう。

―― ワールドワイドスタジオができて、世界レベルでのソフトの製作体勢はどのように変わったのでしょうか。また、現状で各地域での個別のソフト開発をどの程度管理されているのでしょうか。

フィル まず、ワールドワイドスタジオができたことで、PS3向けタイトルの開発に関して非常に明確な利点があります。それは、タイトル間で技術を共有できるようになったという点です。今回、東京ゲームショウで展示されているワールドワイドスタジオ制作のタイトルでは、グラフィックスエンジンやサウンドエンジンなど、基本的に同じものを利用しています。基本となる技術の開発を行う必要がなくなり、ゲーム本体の開発により注力できるようになりましたので、各タイトルの開発期間も底上げできています。

 また、私の仕事は、各スタジオが最大限の能力を発揮できる環境を作ることにあります。ですので、資金面やビジネス面では管理していますが、制作面に関してはそれほど管理せずに各スタジオに任せています。それでも、開発者からはかなり口出ししていると言われますが(笑)。

―― PS3の特徴といえば、やはりHDクオリティのグラフィックだと思います。しかし、グラフィックのクオリティが上がればゲーム制作の手間や開発費も上がってしまいます。そういった点についてはどのようにお考えでしょうか。

フィル 次世代のハードウェアが登場するときには、常に同じ事が言われます。PS1の時もそうでしたし、PS2の時もそうでした。世代が交代するときには、常にある程度の不確実性や懸念がついてまわるものです。しかし、業界全体の経済的な基盤は拡大していますし、現在の市場規模や、それによるリターンの大きさから考えると、コスト増という部分の負担はそれほど高まっていないと考えます。

―― しかし、あまり資金力のない中小のゲームメーカーにとっては、やはり大きな負担になると思います。それによって、新しいアイデアが生まれにくくなり、業界が膠着状態に陥る懸念もあるかと思いますが?

フィル PS3には標準でネットワーク機能が用意されています。そして、ネットワーク機能を利用してゲームのダウンロードも可能です。これによって(コストをかけずに製作したタイトルも簡単に配布できるので)、そういった懸念も払拭できると考えています。ゲームの選択肢が増え、ゲーム自体の価格帯も広がるということは、プレーヤーにとってもいいことだと思います。PS1登場時に、ゲームの開発意欲が大きく盛り上がりましたが、その時のことを彷彿とさせます。とはいえ、既存の流通を通したパッケージメディアがなくなるということではありません。

―― PS3発売直後で、どの程度のネットワーク関連サービスが提供されることになるのでしょうか。また、将来的な展望も教えてください。

PS3のネットワークサービス専用タイトルとして配布が予定されている「flOw(仮称)」。これ以外にも、様々なネットワークサービス専用タイトルの提供が考えられているようだ

フィル すでに、様々なゲーム開発会社と話し合いを進めていて、これまで体験できなかった多様な新しいサービスを提供できればと考えています。そして、そのひとつの例となるのが「flOw(仮称)」です。これは、PS3のネットワークサービスでのダウンロード提供を予定しているタイトルです。実際の配布形態や価格面に関しての詳細は、今後の発表までもうしばらくお待ちください。

―― ネットワークを利用したコンテンツダウンロードなどのサービスは、他のハードウェアでも力を入れていますが、PS3のネットワークサービスの強みを教えてください。

フィル 3つあると考えています。まず、既存ハードとの互換性です。PS3にはPS1、PS2との互換性があって、手持ちのPS1/PS2向けソフトを楽しめますし、PS1向けタイトルに関しては、ネットワークサービスを利用したダウンロード販売も予定しています。PS3だけで、これまでのソフトの資産にアクセスできるるという点は、大きな利点だと考えています。2つ目は、すべてのPS3がHDDを搭載しているという点です。これによって、すべてのPS3でネットワークサービスが利用できます。3つ目は、ネットワーク向けに新しいソフトを開発する環境が整っているという点です。アーケードゲームのように非常に狭いユーザーをターゲットとしたソフト開発を行うのではなく、革新的で挑戦性のあるソフトを開発できる環境が整っているというところです。これがもっとも大きな強みだと思います。

 今回のインタビューでは、特に大きなトピックについての言及はなかった。もちろん、PS3ローンチ直前というタイミングや、フィル氏の立場を考えると、軽々な発言は期待できるはずもなく、しかたがないことだろう。とはいえ、その中でもワールドワイドスタジオによってソフト開発の効率化が進んでいることや、PS3でのネットワークサービスがかなり重要視されていることに加え、PS3ローンチに向けて全力でタイトル開発が進んでいるという部分が確認できたという点では有意義なインタビューであったように思う。

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