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殴って笑い、笑って殴る。これぞエンターテイメント「ゴッドハンド」レビュー(1/2 ページ)

クローバースタジオの三上真司氏とグラスホッパー・マニファクチュアの高田雅史氏がコラボレーション。ハードなアクションとウエスタンスタイルの音楽が交錯する世界を、ひたすら脳天気で軽い兄チャンが駆け抜ける。

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こんなハルマゲドン、見たことない!?

 はるか昔、人間界は魔王サタンの軍団によって支配されていた。そこへ1人の男が現れ、徒手空拳でサタンを倒してしまう。人々は尊敬の念を込めて、彼を“GOD HAND”と呼ぶようになる。以来、その両腕を手にした者は、神にも悪魔にもなれるという伝説が生まれた。

 人間を超越した絶対的なパワー。それを継いでいるのが、本作「ゴッドハンド」の主人公であるジーンだ。彼はゴッドハンドを持つ者として、サタン復活を目論む悪魔やその眷属たちと戦いを繰り広げていく。

 ここまで聞くと、何だかシリアスでハードな話を予想されるかもしれない。だが、このジーンがあてもなく旅を続ける風来坊で、ノリはいいがひたすら軽〜い兄チャンとなればどうだろうか? おまけに、その兄チャンに力を授けたのが、負けず劣らずの軽さと、悪知恵一歩手前の要領の良さを持つお姉チャンだとしたら? そう。本作「ゴッドハンド」とは、そういうゲームなのである。

photo 主人公のジーン。右腕にゴッドハンドを持つ。根はいいヤツでケンカも強いのだが、素晴らしく軽い。神だの悪魔だの、シリアスは話題がまったく似合わないところがイイ
photo こちらがジーンに力を授けたヒロインのオリヴィア。ゴッドハンドを守護してきた一族の末裔で、唯一の生存者……なのだが、とてもそう見えないところがミソ。あの手この手でジーンに悪魔狩りをさせてしまう小悪魔的美少女だ

 何もハルマゲドンだからといって、毎度毎度気張ってやる必要もないじゃないか? たまには、明るくはっちゃけてみたって悪くないだろう? ほらほら、呆れてないでリラックス。ノリで行こうぜ!

 ゲームのどこを見ても、こんな声が聞こえてきそう。だいだい、冒頭に書いたサタンの軍団をめぐる話の扱いからしてすごい。これだけの設定、普通だったらバリバリのCGムービーなんぞを流してドーンと語りたいところ。だが、本作では違う。

 何と、こんな重要な設定が酒場の片隅に置かれた年代もののラジオから流れてくるだけなのだ。当然、映像なしで音声のみ。それどころか、このラジオに気付かなければ、プレーヤーはGOD HANDの言われを知ることすらないのだ(いちおうマニュアルには書いてある)。

 設定なんか知らなくてもノープロブレム。ひたすら、敵をボコればOK!

 またまたそんな声が聞こえてきそう。実際、ゲームをスタートすると、簡単なイベントが流れた後、いきなり主人公の前に敵が出てくる。主人公の状況とか、旅をしている目的とか、舞台がどこかなんて説明は一切ない。敵が近づいてくるから、とりあえず殴る。倒す。次の敵が出てくる。それを繰り返しているうちに、いつの間にかゲームが進んでいく。

 華麗なムービーや懇切丁寧なチュートリアルから始まるゲームに慣れていると、ちょっと面食らってしまうかもしれないが、別にそれほどとっぴなことをやっているわけじゃない。これは、アーケードゲームの感覚なのだ。コインを入れる。敵が出る。バトル開始。まさにゲーセン気分だ!

ノリは軽いが中身はハード

 ただし、ここでちょっとご注意を。キャラクターが軽くてノリがいいのとは裏腹に、アクションゲームとしてのレベルはなかなかハードなのである。特に初めて行ったステージでの苦戦は必至だ。一度ゲームオーバーになると、体力をマックスまで回復した状態から再挑戦できるというコンティニュー機能があるので、これをフル活用しないと、とても簡単には進めない。アクションが苦手な人は、最初のうちはイージーでも苦労するかもしれない。

photo ザコ敵といえども侮れない。1対1なら、どうにかなるのだが、集団で出てくることが多いので、囲まれたらまずアウト
photo ザコは基本的に人間なのだが、中には、悪魔に憑依されている敵がいる。そいつらを倒すと悪魔が実体化してくるのだが、これがかなり強い。序盤では、よほど自分の状態が良くないと勝つのは難しいかも

 アクションゲームが好きな人でも、最初のステージで最初に遭遇する敵にやられてしまう可能性は十分ある。その意味で、「ゴッドハンド」はいわゆるスーパーヒーローものではないのだ。いかに神の腕を継承していようと、基本的には人間。腕力は上がっていても、全身の能力が超人になっているわけではない。無理は禁物だ。

 しかし、ここで難しいアクションゲームはキライ、なんて簡単に放り出さないで欲しい。「ゴッドハンド」は一部のマニアをターゲットにした高難易度作品ではない。プレーヤーが考えないとダメ、という作りになっているだけなのだ。

 例えば、敵にはガード機能があり、こちらの攻撃を簡単にブロックしてしまう。対して、ジーンはガードができない。その代わり、スウェーやダッキングといった、敵の攻撃を回避するアクションができる。敵は受けるが、こちらは避けるというスタンスなわけだ。

 加えて、本作では先行入力をしたアクションはすべてその通り行われ、途中でキャンセルがかけられない。ということは、敵が出てきたからといって、攻撃ボタンをバシバシ叩くと、叩いた回数分の攻撃が終了するまで、ほかのアクションがまったく取れなくなってしまうということになる。この間に敵が攻撃をブロックすれば、そこから反撃を受けてしまう。従って、ただボタンを連打しているようなプレイでは、ゲームオーバーは時間の問題だ。

photo 敵に一定量以上のダメージを与えて、ふらふらの状態にすると、○ボタンを押せ、という指示が出る。大ダメージのチャンスだ。この時ばかりは、ひたすら連打連打連打!

 では、どうするか? 通常攻撃は一定回数ならば連続ヒットするようになっている。これはコンボと呼ばれ、初期段階で4発が可能だ。ただし、コンボはつねに成立するわけではない。攻撃がヒットすれば、敵はわずかだが後退する。これによってジーンの攻撃範囲の外に出てしまえば、それ以上の攻撃は当たらない。敵との間合いを正確に把握し、コンボが可能と見れば、ボタンをコンボの上限数分連打し、届かないと見たら、それ以上の深追いをせず、敵の出方をうかがう。アクションゲームをやると、ついついヒートアップしてしまうが、このゲームではクールでクレバーな頭脳を保っていないといけないのだ。


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