“波紋疾走”を何のためらいもなく「オーバードライブ」と読む人に捧げる、ハートがふるえるアクションゲーム:「ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド」レビュー(2/2 ページ)
バンダイナムコゲームスから10月26日に発売された「ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド」は、人気コミック「ジョジョの奇妙な冒険」第1部の世界を忠実に描いた波紋疾走アクションゲームだ。波紋疾走アクションゲームとは何ぞや? 波紋が疾走するアクションゲームなのです(って何も説明してない……)。
最初のうちは貧弱貧弱ゥなジョナサン・ジョースター
本作は1人用のアクションゲームで、メインとなるのは前述したストーリーモードだ。ストーリーモードでは原作の流れに沿ってチャプターが用意されていて、各チャプターの最初にはストーリーデモが流れる。その後バトルがあり、バトルをクリアしたら次のチャプターに移行できる、というのが大まかな流れだ。
あらかじめ決められたエリアの中で自由に動き回れる3Dアクションで、左スティックで移動、右スティックでカメラ操作、□ボタンが弱攻撃、△ボタンが強攻撃、○ボタンが回避防御、L1ボタンでガード防御、L2ボタンでターゲット(もっとも近い敵の方向に転換)、というのが基本操作(オプションモードで変更可能)。各チャプターごとに敵キャラが登場し、それを各ボタンをフルに活用して叩きのめす(相手の体力ゲージをゼロにする)のが目的だ。
実際にプレイしてみると、最初は慣れないというのもあるが、割と序盤で軽くつまずいてしまった。相手がけっこう強いのである。何度もリトライをしてどうにか倒せた……というチャプターがいくつも続いたりした。アクションゲームはそこそこやってきているという自負はある筆者だが、それでもかなり難しく感じた。
筆者の場合、L1とL2を基本的にずっと押しているスタイルがどうやら楽だというのを発見。とにかく殴りたい敵をL2でつけ狙いつつ、基本はガードをして、弱攻撃からコンボをつなげていく。ピンチになったらジョセフ・ジョースターのように「逃げるッ!」という地道なヒットアンドアウェイで、どうにか難局を乗り越えてきた。
ふるえるぞコントローラ、燃えつきるほどポージング!
油断していると痛い目を見るハードなアクションが続き、物語が大きな転機を迎える中盤に差し掛かると、プレイスタイルの方にも大きな変化が生まれる。本作の真骨頂である“波紋疾走アクション”が始まるのだ。物語の構成上いたしかたないかとは思うが、このメインである波紋疾走アクションにたどり着くまでに、かなりのチャプターをこなさなくてはならない。そこまでにくじける人がいないことを祈るばかりだ。
ツェペリ男爵が登場し、ジョナサンが波紋を修得するようになると、今までのシビアなアクションから大きくシフトして、かなり派手で爽快で、手数の選択肢が多いアクションゲームになる。基本操作は前述の通りだが、それにプラスして×ボタンによる波紋の呼吸(×を押し続けると波紋ゲージがたまり、△ボタンなどで波紋が出せるようになる)、R1ボタンによるチャージ攻撃(ジョナサンのズームパンチなど)、R2ボタンによる覚醒発動(“山吹き色の波紋疾走”などの特殊な状態に導く)が可能になるのだ。加えて本作プレイの目玉だと言ってもいいポージングもできるようになる。
元々、前述した擬音と同じくらいの熱さで、初期の「ジョジョの奇妙な冒険」の魅力はその奇妙なポーズにあった。荒木先生本人も「ありえないポーズを意図的に描いてみた」とコメントをしているくらいで、確かに「これって関節どうなってるの?」と思わせる構図が随所に見受けられた。思わず真似したくなる各キャラのポーズの数々も、ファンの間では語り草だ。
そんなポージングに焦点をあてたジョジョゲーは未だかつてなかったわけで、非常に画期的なアイデアだと言える。具体的にどうするのかと言うと戦闘中に□、×、↑(方向キー上)と素早く入力すれば回復力アップのポージングを、□、□、×、↑(方向キー上)と入力すれば防御力アップのポージングをとるといった、コマンド入力方式だ。
恐ろしいゾンビや強大な敵を目の前にしてポーズをとるジョナサンについては、プレイする前は「そりゃおかしいだろ」と思っていたのだが、プレイしてみると案外すんなりと戦闘の中に組み込んでいる自分がいることに気付いた。最初は×ボタンで波紋を練るために、敵からわざわざ離れなくてはならないプレイに違和感を感じていたが、これも途中でポージングで波紋を練るのと同様に波紋ゲージを回復できることに気がつき、波紋ゲージの貯蓄にストレスを感じなくなった。
ゲームをッ クリアするまでッ プレイするのをやめないッ!
ストーリーモードの他に収録されているのが、チャプターモードとミュージアムモードだ。
チャプターモードでは、今までにクリアしたどのチャプターでも自由に遊べるモードだ。そしてミュージアムモードは、プロフィールやシアターなど、貴重な映像をいつでも確認することができる。もちろんストーリーモードの進行度によって見られるコンテンツは増えていくので、すべてを見るためにクリアを目指そう。
本作の中盤で花開く“波紋疾走アクション”は、慣れれば慣れるほど“魅せる”戦い方ができるはずだ。それまでは単調になりがちだったアクションに、一気に選択肢が増えて楽しくなる。とはいえ、プレイしやすいスタイルが見つかると単調になってしまう可能性もあるのが残念。また、敵は敵で強力になってきているので、ちょっとやそっとでは勝たせてくれない。ゲームオーバーからリトライの繰り返しは中盤から後半でもけっこう体験した。その分、倒せたときの達成感もひとしおで、原作ファンとしては「このジョジョとディオの物語をゲームの中でも最後まで見届けたいッ!」という想いでひたすらにプレイを続けていた感はある。
おそらく本作を手にとりプレイをする人は、原作のファンが大多数であろう。特に第1部という20年も前の作品なので、古くからのファンにはたまらないものがあるはずだ。懐かしさとかファンとしての熱い想いがあれば、きっとエンディングを見ることができるだろうが、再三申しているように、けっこう歯応えのあるアクションなので、そこは心してかかっていただきたい。来年公開される映画の予習として、そしてリアルに荒木タッチなキャラを動かして自分がジョナサンやツェペリになれるというファンアイテムとして、手元に置いてみるのもいいのではないだろうか。
「ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド」 | |
対応機種 | プレイステーション 2 |
メーカー | バンダイナムコゲームス |
ジャンル | 波紋疾走アクション |
発売日 | 2006年10月26日 |
価格 | 7140円(税込) |
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