東京の山奥で「ホームスター ポータブル」を片手に愛をさけぶ(2/2 ページ)
500万個の恒星を映し出せるプラネタリウム「メガスターII コスモス」のデータがそのままPSPに。今回は普段のレビューと趣向を変えて、「ホームスター ポータブル」を持って実際に高尾山へ行ってきた様子をリポートする。
2人だけの高尾山中腹
笑っているうちに、2人を乗せたケーブルカーは終点へ着く。ホームを出ると、登山客とは2、3人すれ違う程度。立花たちはベンチがいくつも置いてある開けた場所へ向かった。暗闇の向こうに現れたのは……満天の星空、ではなく夜景だった。
彼女 きれい、見て! この夜景!
確かに息を呑むほど高尾山から見た夜景は美しかった。しばらくうっとり見つめる彼女。それを見つめる筆者。が、肝心の星は……。雲の合間からポツンポツンと見えるだけだった。
彼女 星はあんまり見えないね。
立花 とりあえずGPSを差して現在地の星空を出してみよう。
GPSでの測定には、天気が悪かったためか、正味5分くらいかかったろうか。コンパスを使って方角を調べ、画面を合わせる。
立花 こんな感じかなあ。
彼女 もしかして、あの一番明るい星ってベガ?
立花 うん、場所的にはそうかもね。
彼女 じゃあ、あっちはデネブかな?
立花 うーん、そうかも(自信がない)。
彼女 残念だなあ。雲がなければこんなに見えたのに。
立花 本当はもっと奥の陣馬山まで行けばよかったんだけどね。遠いから。
彼女 そっか。でも、今度星のよく見えるところに行きたいね。南の島とか。
立花 南の島か、いいねえ。
彼女 流れ星も見れそうじゃない? 行けたら行こうよ。
話の流れで、なんとなく旅行の約束をした、のか!? 社交辞令でもちょっとうれしい。これはもしや愛を語っている?
立花 あ、そうだ。観測場所の設定を海外にも移せるよ。ロンドンとかウランバートルとか。あと、エアーズロックにすれば、南半球だから変わった星座も。ほら……かじき座でしょ、ちょうこくしつ座でしょ」
彼女 彫刻室だなんてヘンだね。
立花 世界の中心で彫刻を削る!!
彼女 アハハ、何それ。エアーズロックだから?
筆者がPSPの左端を、彼女が右端を持って、寄り添うように画面を見つめる。周りには誰もいない。不思議な時間が流れた。
立花 こっちがプラネタリウム風の解説モード。どれか聞きたいのある?
彼女 「春の星座」、「秋の星座」、「夏の大三角」、「流星」、「石垣島の贅沢な空」……。どれがいいかなあ。
20個の番組のうちから「秋の星座」を選んだ。
ナレーション 「秋の夜空では、ペガススの四辺形という四角形を目印に、星座を見つけていきます。2等星を3つと、3等星を1つ結んでできる四角形は意外にはっきりと分かります……」
ピアノの静かなBGMと落ち着いた女性のナレーションが流れ、ゆるゆると心が解放されていく気がした。10月の終わりにしては寒くもなく、気持ちがいい。
立花 こうしてぼーっと眺めてるのもありだよね。
彼女 なんか2人でぜいたくな時間を過ごしてるって感じ。
テーマ音楽であるホルストの「木星」にしばし聞き入る。
2時間くらいダラダラしただろうか。相変わらず夜空には雲がかかり、星の出番はチラホラだった。お酒がなくなったのをきっかけに、その場をお開きにする。ケーブルカーの終電は17時45分。とっくの昔になくなっている。
立花 ここから歩いて戻るよ。はい、これ。懐中電灯。今日100円ショップで買ってきた。
彼女 探検みたいだね。
立花 遭難しないように。
帰り道は目の前のカーブが分からないほどの真っ暗だった。つま先が痛いのをガマンして坂をひたすら下りる。闇に吸い込まれて、どこか異世界へ行ってしまいそうだ。彼女のドキドキが伝わってくる。“吊り橋効果”、そんな単語が頭に浮かんだ(説明しよう。吊り橋効果とは揺れる吊り橋にいる男女が、恐怖のドキドキを恋愛のドキドキと勘違いし、恋に落ちてしまう心理学の理論なのだ)。
彼女 星、見られなかったね。仕事大丈夫?
立花 ……あ、うん、まあなんとかなるでしょう(そもそも愛を語るのがテーマだったし)。また今度、星の見えるところに行こうよ。
彼女 いいね、誘ってよ。夏休みに南の島にでも。
川のせせらぎが聞こえ、民家が見えたところでゴール。余韻を残しつつ、京王線の駅へと着いた。
彼女 今日は楽しかった。なんか子供のころに戻ったみたい。
……当たり前だが、何も起こらなかった。結局、愛を語れるかどうかはその人次第だが、「ホームスター ポータブル」は星へのピュアなあこがれを思い出させてくれる貴重な存在だ。そんなロマンに満ちたひとときを大事な人とも共有できる。「ホームスター ポータブル」は大人の癒し系ツールであると同時に優れたコミュニケーションツールにもなる、のではないか。本物の星がもっと見えればよかったのだが……。
「ホームスター」(TM)は、株式会社セガトイズの商標です
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