歴史とファンタジーが融合した新しいシミュレーションRPG:「ジャンヌ・ダルク」レビュー(2/2 ページ)
「ジャンヌ・ダルク」はレベルファイブが手がけた初シミュレーションRPG作品。歴史とファンタジーが見事に融合した世界観と抜群のゲームバランスで、すべてのシミュレーションRPGファンにオススメしたい良作だ。
分かりやすいのに奥が深い、最高のバランス
シナリオに負けず、初シミュレーションRPG作品と思えないほどゲームシステムもできがいい。ルール自体はオーソドックスなターン制のシミュレーションRPGで、行動順やAP(行動力)といった難しい概念はなく、シンプルに仕上がっている。攻撃時にはダメージの予測値と命中率が表示される。移動して敵ユニットに攻撃する態勢になっても、数字を見て戻れるため、初心者にも分かりやすい。予測値に多少の違いはあるが、計算ができて緻密な戦略が立てられるのだ。
これだけだったら単なるシンプルなシミュレーションRPGで終わってしまう。それを熱中度が高いシステムに変えているのが、これから紹介する要素だ。
ターン数制限
本作にはマップごとにターン数制限が設定され、これがとにかくうまい! 普通のシミュレーションRPGだと、無理して敵に突っ込まず、待機して回復させながら戦うのが常套手段だが、ターン制限があるため、多少無理は承知でも攻めていかなくてはいかない。どのステージもターン数制限はギリギリのラインに設定されている。間に合うか間に合わないか? ラストはハラハラドキドキ、手に汗握る。緊張感はバツグンだ。
また、ターン数制限があることで、ルート取りも重要になった。勝利条件が「城門への到達」「マップ北端へ到達」といった移動ミッションだった場合、ルート選択のセンスも問われる。ターン数制限によって戦略性は大きく高まった。
「バーニングサイト」と「コネクションガード」
攻撃時は「バーニングサイト」、防御時は「コネクションガード」が戦闘のいいアクセントになっている。
バーニングサイトは、敵ユニットを弓以外の武器で攻撃したときに発動する。攻撃すると、敵の背後のマスが燃え上がり、同じターン内に仲間がこのマスに移動して攻撃すれば飛躍的にダメージ量が増えるのだ。さらにあらかじめこのマスに仲間がいた場合は、マスではなくユニット自体がバーニング状態になり、そのまま移動して攻撃もできる。このユニットが作ったバーニングサイトはさらに強力になる……といった具合に次々と連鎖も狙えてしまう。これを利用して有利に戦おう。
防御時はコネクションガードが役に立つ。敵から攻撃を受けたとき、周囲9マスに仲間がいるとコネクションガードが発生し、ダメージを減らせる。ただ、これは諸刃の剣でもあるので要注意。広範囲の魔法攻撃を持っている敵には当たり前だが逆効果になる。常に固まっていればいいってもんでもない。
これらの要素は覚えやすい割には戦闘でピリッと利いている。
スキルストーンの合成
レベルファイブのゲームで人気の合成は「ジャンヌ・ダルク」でも健在だ。装備することで必殺技や魔法、特殊能力を発揮できるスキルストーンを材料に、より上位のスキルストーンを作っていく。「貫通強化」(貫通先の敵へのダメージ低下を抑える槍スキル)+「アイスバレット」(氷のつぶてでダメージを与える攻撃魔法)=「つらぬけ!」(前方7マスを攻撃できる槍スキル)、「フォースアップ」(攻撃力を数ターンアップする補助魔法)+「おたけび」(前方3マスの敵をマヒ)=「我に続け!」(周囲4マスの仲間の攻撃力を数ターン高める)といった具合だ。
スキルは使えるものが多いので、攻略のためにも必須だろう。また、レシピを埋めたり、敵からレアなスキルを盗んだりと、コレクション好きにはたまらない要素もある。
変身システム
最後はこのゲームの華ともいえる変身システムを紹介しよう。ジャンヌは1ターンごとに1ポイントたまるSPを一定量消費することで、甲冑に覆われた強力な戦士に変身するのだ! 能力が大幅に上昇するうえ、特殊な固有スキルも発動する。中でも「神獣」は、変身中に敵にトドメを刺せば再度行動できるという掟破りのスーパースキル!
もうダメか? というターン制限ギリギリではこれほどありがたいものはない。神獣の能力で次々とザコの息の根を止めていく。競馬にたとえればディープインパクトのラストの追い込みのごとく、豪快&爽快! これはハマる!
派手さはないが、しっかりとした良作
プレイしての感想は、すべての部分においてバランスがいい。そんな印象が際立った。史実のアレンジのしかたもハチャメチャではないし、シミュレーションRPGのゲームシステムも複雑すぎず、簡単すぎず、ダレることもない。「シミュレーションRPGはとっつきにくい」と敬遠している初心者にこそ、オススメしたいと思った。また、ルールがしっかりしているため、上級者なら“フリーバトルでのレベル稼ぎ禁止”、“最短ターンでクリア”など、自分で縛りを作ってプレイしたいと思わせる、チャレンジ心をくすぐる作りにもなっている。ロードも比較的短く、戦闘にストレスがたまらないのもいい。
最近のシミュレーションRPGは萌えキャラがにぎやかに活躍する作品が多いため、そうした視点から見るとちょっと地味に映るかもしれない。だがそれはほかのシミュレーションRPGに任せるとして、味のあるきちんとした良作を堪能してほしい。
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