「ナゾ解明!」のカタルシスは、寝るのも忘れるほどの快感に:「レイトン教授と不思議な町」レビュー(1/5 ページ)
レベルファイブ初パブリッシングタイトル「レイトン教授と不思議な町」は、ナゾいっぱいの新感覚アドベンチャーゲーム。今回は、本作の雰囲気そのまま(?)に、推理小説風にレビューを進めてみる。
レベルファイブ初のニンテンドーDS作品は、ナゾに溢れた新感覚アドベンチャーゲーム。不思議な町で巻き起こるミステリーは、まさにナゾだらけ。遺産分配のカギとなる「黄金の果実」を探すため、レイトン教授とルーク少年が招待されるところからゲームは始まる。プレーヤーは2人とともに、この町で起こる怪事件を解いて行く。本作は単なるアドベンチャーではなく、とにかく練り込まれた「ナゾ」がカギとなる。プレーヤーは次々と降り掛かる一風変わった「ナゾ」を解き明かして行き、この怪事件を無事解決へと導けるのだろうか? 今回はゲームの雰囲気に基づき、推理小説風にレビューを進めていこう。
「依頼」――解明を望む者からの、新たなる挑戦状
2月某日――午後の柔らかな陽射しが差し込む中、わたしは自宅の書斎でアガサ・クリスティの傑作「そして誰もいなくなった」を読みふけっていた。10個あったインディアン人形が7個にまで減った所で、シオリを挟んだ本をサイドテーブルに置いて一息つく。
「ふぅ……。やはり何度読んでも、この作品の面白さは色あせないものだ……」
サイドテーブルに置かれたカップを手に取り、まだ温かさの残るコーヒーで喉を潤す。ノスタルジックな感傷に浸っている時ほど、渋めのコーヒーが体に染み渡る。この緩やかに流れる時間ほど、人生の中で贅沢なものはない。だが、得てしてこういう時こそ、無粋な邪魔者が横槍を入れてくるのが、大半のパターンだ。そう、この時も例外ではなかった……。
「先生。何を格好つけてるんですか? はい、お届け物ですよ」
そう言ってわたしに封筒を差し出すのは、助手であるミシカ君だ。助手と言うよりは、相棒とでも言った方がしっくり来るのかもしれないが。
「うん、ありがとう。誰からかね」
わたしは荷物を受け取り、端的に質問をぶつけてみた。
「え〜と、『あいてーめであ』の編集者さんからですね。また、例の件じゃないですか?」
「あぁ、また仕事の依頼か。彼とは旧知の仲だからな。頼まれたら断れないものさ」
肩をすくめ困ったふりをしながらも微笑みが出るあたり、わたしの心情も分かりやすいものだ。受け取った封筒をペーパーナイフで開き、早速中身を取り出してみる。
「先生。これって……」
封筒の中には一通の便箋と、ニンテンドーDS用のソフト「レイトン教授と不思議な町」が入っていた。早速便箋を開き、一気に目を通す。「ふっ」と息が漏れる。
「どうしたんですか? 鼻で笑ったりして」
そう聞いてきたミシカ君に、わたしは無言で便箋を差し出す。その便箋を受け取り、一気に読み終えたミシカ君はわたしとは別の感情を抱いたようだ。
「これって、なんですか! 先生のことバカにし過ぎじゃないですか? 『このソフトは今までレビューしてきたアクションやRPGとは違い、本格的なナゾトキだよ。いくらユウタン教授とは言え、今回のレビューは厳しいかもね。ま、無理なら早めにギブアップすることをオススメするよ』なんて!」
「彼らしいじゃないか。そうやって書けば、僕が絶対に断らないってわかっているからだよ。確かに今までのレビューよりは、手応えがありそうだけどね。だからこそ、楽しみという意味で、笑みがこぼれてしまったのさ」
「ユウタン先生……」
遅くなったが、ここでわたしの自己紹介をしておこう。わたしの名は「ユウタン」。シャーロック・ホームズ、エルキュール・ポアロ、明智小五郎などをこよなく愛する、生粋の推理小説好きだ。その推理好きが高じて、探偵のような何でも屋のような事を生業としている。最近は「あいてーめであ」の某編集者から依頼されるソフトを、解明(レビュー)するのが主な仕事と言えるだろうか。そして、わたしの助手をしているのがミシカ君だ。彼女、と言うよりはだいぶ男勝りな部分が強いが、頭の回転の良さはわたしにも引けを取らないだろう。
「さて、時間がもったいない。早速ナゾトキに向かうとするかな」
こうして、わたしの長く険しい"解明"(レビュー)への旅が始まった。
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